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冬の転倒と骨⁠折 — 外で転ばない靴と歩き方

冬は高齢の方の骨⁠折がいちばん多い季節です。出かける前のチェックリスト、滑りにくい靴の選び方、雪や氷の上の歩き方、冬の入浴、転んだ直後にすることを解説します。

冬は、骨⁠折がいちばん多い季節です。日⁠本の医療保険のデータでは、65歳以上の方の骨⁠折は冬にもっとも多く、手をついて起きる手首の骨⁠折は「家の外で、冬に」多いことがわかっています。

でも、「冬の間は出歩かない」が答えではありません。動かない時間が長くなること自体が、次の転倒の準備になってしまうからです。動画でお話しした靴と歩き方に加えて、出かける前のチェックリスト、靴を選ぶときの表、滑⁠り⁠止めの使い方、駅の階段や夕方の歩き方、冬の浴室、転んだ直後にすることを載せています。ご家族が読んでも役に立つように書きました。

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このページでわかること

  • 日⁠本のデータで、冬にどんな骨⁠折が、誰に多いのかがわかります
  • 出かける前に確かめる項目が、表で見られます
  • 冬の靴を「底・かかと・大きさ」で選ぶ基準と、靴につける滑⁠り⁠止めの使い方がわかります
  • 雪や氷の上、駅の階段、夕方の歩き方のコツがわかります
  • 冬の浴室と脱衣所で気をつけることがわかります
  • 転んだ直後に何をすればよいか、どんなときに受診するかがわかります
  • ご家族にできることがわかります

目次: 冬に多い骨⁠折 | 出かける前のチェックリスト | 靴の選び方 | 歩き方 | 駅の階段と夕方 | 冬の浴室 | 転んだ直後に | ご家族にできること | まとめ | よくある質問

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冬に多い骨⁠折 — 日⁠本のデータから

動画では「冬にいちばん多い」「手首の骨⁠折は外で、冬に」とだけお伝えしました。ここでは、その根拠になった日⁠本の調査を少しくわしく見てみます。

調査 わかったこと
首都圏の医療保険データ(人口4,200万人・3年間・約51万件の骨⁠折) 65歳以上では、骨⁠折は冬にもっとも多い。手首と足の付け根の骨⁠折は、その日の気温や雨と関係していた
全国の入院データ(手術をした手首の骨⁠折・約10万5千例) 手首の骨⁠折は冬に多く、とくに東日⁠本の女性、50歳以上の女性で冬の増え方が目立った
北海道の地域調査(手首の骨⁠折258例) 手首の骨⁠折は屋外で、冬に多い。大人では「ただ転んだ」がいちばん多い原因。女性は75〜79歳で最多
地域にお住まいの高齢者の転倒調査(1,074人・1,695件の転倒) 転倒は12〜2月に多い。65〜74歳では屋外でつまずき・滑って転ぶことが多く、年齢が上がるほど家の中でバランスを崩す転倒が増える。転倒の約6割で何らかのけが、約1割で骨⁠折

表の数字から、2つのことが読み取れます。

1つめ。冬の外の転倒は、比較的お元気な方に多い。 65〜74歳では屋外の転倒が多く、原因はつまずきと滑りです。「まだ若いから」「毎⁠日⁠歩いているから」という方こそ、このページの対象です。年齢が上がって家の中の転倒が増えてきた方は、家の中の転倒予防のページをあわせてご覧ください。

2つめ。暖かくなった日も油断できない。 首都圏の調査では、手首と足の付け根の骨⁠折が、前の日より気温が上がった日に増えていました。理由は研究では断定されていませんが、「今⁠日は暖かいから大丈夫」と思った日ほど、足元を見る習慣が役に立ちます。

転倒の約1割が骨⁠折につながる、という数字は、裏を返せば「転んでも10回のうち9回は折れない」ということでもあります。怖がりすぎる必要はありません。ただ、骨粗鬆症のある方は、少ない衝撃でも折れやすいので、その1回を減らす工夫が、ほかの方より少⁠し⁠大⁠切になります。

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出かける前のチェックリスト

玄関で1分あれば確かめられる項目です。印刷して玄関に貼っていただいてもかまいません。

確かめること 目安
□ 路面 夜に雨や雪が降った翌朝、冷え込んだ朝、前の日より暖かい日は「凍っているかも」と考える
□ 靴 底の溝がすり減っていない冬用の靴(下の表)。革底・サンダル・かかとを踏んだ靴は履かない
□ 手袋 ポケットに手を入れずに済むよう、厚手の手袋を。濡れてもしみこみにくい素材が暖かい
□ 荷物 手提げではなくリュック。両⁠手が空いているか
□ 杖 先のゴムがすり減っていないか。すり減った先ゴムは濡れた路面で滑る
□ 滑⁠り⁠止め 雪や氷の上を歩く日は靴に装着。建物に入ったら外す(理由はこちら)
□ 時間 冬は移動に時間がかかるものと決めて、余裕をもって出る。急ぐ日ほど転びやすい
□ 明るさ 暗くなる前に帰れる予定か。帰りが遅くなりそうな日は小さなライトを持つ
□ 体 玄関で、壁に手を添えて、その場で足踏みを少し。体を温めてから歩き出す
□ 連絡手段 携帯電話を持ったか。ただし歩きながら見ない(足元への注意がそれる)

リュックは、転んだときに手が出せるというだけでなく、後ろに倒れたときのクッションにもなります。帽子も同じ理由で、厚めの毛糸のものがすすめられています。骨⁠折とは別の話ですが、冬の外では頭を守ることも忘れないでください。

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冬の靴の選び方

動画では「底・かかと・大きさ」の3つを挙げました。お店で靴を手に取ったとき、何を見ればよいかを表にしました。

見るところ 選ぶ 避ける
底の溝 深いギザギザの溝がある。溝の中に雪が詰まったら、ときどき落とす 溝がすり減って平らになっている。革底
底の素材 柔らかいゴム(指で押すとへこむ)。路面に吸いつくように接する 硬くてつるつるした素材
かかと 低くて、幅が広い 高い、細い、かかとを踏んで履く
固定 ひもかマジックテープで、足の甲がしっかり留まる 脱げやすいサンダル・スリッポン・大きすぎる靴
大きさ 厚手の靴下をはいた状態で試す。つま先に少⁠し⁠余⁠裕があり、かかとが浮かない 「冬だから大きめ」で買う

靴底は、溝の深さに加えて柔らかさも見てください。深い溝があっても、硬いゴムだと氷の上ではよく滑ります。迷ったら、お店の方に「どんな路面を、どのくらい歩くか」を伝えて選んでもらうのがいちばん確実です。

靴につける滑⁠り⁠止め

雪や氷の多い地域では、ふだんの靴にゴムバンドやマジックテープで装着する滑⁠り⁠止めが選択肢になります。つま先だけを覆うタイプと、足の裏全体を覆うタイプがあり、底には金属のピンやコイル、滑りにくいゴムなどが付いています。

効果は、研究で確かめられています。米国で、転びやすい65歳以上の方109名に、ひと冬の間、滑⁠り⁠止めを靴につけてもらった無作為化試験では、雪や氷の上を歩いた日の屋外の転倒が半分以下になり、けがをした転倒はさらに大きく減りました。小さな研究で、骨⁠折はどちらの組にも起きていませんので、「骨⁠折が減る」とまでは言えません。それでも、転倒そのものが減ることは、骨粗鬆症のある方にとって意味があります。

同じ研究で、滑⁠り⁠止めを渡された組で起きた屋外の転倒19件のうち、12件は滑⁠り⁠止めをつけていないときに起きていました。買うより、つける習慣のほうが難しいようです。

使うときの約束は2つです。

  • 建物に入る前に外す。 金属のピンが付いたものは、タイルの床や地下街では逆に滑り、じゅうたんでは引っかかってつまずきます。駅の構内やお店の入口で、外す場所を決めておきましょう
  • 着脱は座ってする。 玄関の上がり框(かまち)や駅のベンチなど、腰かけられる場所で。片足立ちで付け外しをすると、そこで転びます

滑⁠り⁠止めは「雪や氷の上では強く、建物の中では弱い」道具です。つけたまま店に入らない。それだけ覚えておいてください。

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雪や氷の上の歩き方

歩き方の基本は、動画でお話ししたとおりです(歩幅を小さく、足の裏全体を路面に置く、重心は少し前、急がない、歩き始めと速さを変えるときに注意)。ここでは、どこで、なぜ滑るのかと、その場所での対処を表にします。

場所 なぜ滑るか どうするか
横断歩道 人と車に踏み固められ、車の熱で表面が融けて凍り直す。白い線は塗装で、濡れるだけで滑る 白い線を避けて踏む。信号が変わっても走らない
バス停・タクシー乗り場 人と車に踏み固められる 列に並ぶ場所から足元を見ておく。乗⁠り⁠降りは手すりを持って
駅や地下街の出入口 人通りが多く、靴裏の雪と水が持ち込まれる 出入口の手前で歩幅をさらに小さく。中に入ったら滑⁠り⁠止めを外す
お店や建物の入口のタイル 靴の裏の雪と水で、タイルが濡れている 入口のマットで靴裏の雪を落とす
駐車場やガソリンスタンドの出入口がある歩道 車のタイヤに踏まれて固くなり、磨かれる 車の出入りを見てから、ゆっくり渡る
朝の日陰 夜のうちに凍り、昼まで融けない。見た目は濡れているだけに見える 日の当たる側の歩道を選ぶ。日陰は「濡れている=凍っている」と考える
マンホールのふた 金属で、霜や雨で濡れるだけで滑る またがず、避けて歩く
融雪装置(ロードヒーティング)の切れ目 融けた部分と凍った部分の境目に段差と氷ができる 境目で一⁠度⁠止まり、小さく踏み出す

動画に入れなかったことがもうひとつあります。何かに気を取られながら歩くことです。携帯電話で話したり画面を見たりしながら歩くと、路面への注意がそれて転びやすくなります。急いでいるとき、両⁠手がふさがっているときも同じです。冬の外では、歩くことだけをしてください。

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駅の階段と夕方

駅の階段

駅の階段は、靴裏の雪と水が持ち込まれ、人が多く、急いでいる人に押される場所です。家の中の階段と同じく、降りるときの転落がいちばん危険です。

  • 手すりを持つ。両⁠手を空けておく理由のひとつは、このためです
  • 降りるときは、段の縁ではなく段の奥に足の裏全体を置く
  • 急ぐ人は先に行ってもらう。壁側や手すり側に寄って、自分のペースで
  • エレベーターがある駅では、冬の間だけでも使う。「元気だから階段」は、路面が乾いている季節にとっておきましょう
  • 金属のピンが付いた滑⁠り⁠止めは、階段では必ず外す

夕方

冬は暗くなるのが早く、夕方の段差は影に溶けて見えにくくなります。年齢とともに視力や見え方が変わる方⁠ほ⁠ど、暗さの影響を受けます。

  • 用事は、できるだけ明るいうちに済ませる。帰り道が暗くなりそうな日は、出る時間を早める
  • 帰りが遅くなる日は、小さな懐中電灯か、携帯電話のライトで足元を照らす
  • 夕方に冷え込むと、昼に融けた水がもう一度凍ります。朝と同じ道でも、帰りは別の路面だと考える
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冬の浴室と脱衣所

動画では「寒い脱衣所から急いで湯船へ向かうとき、濡れた床で足が滑る」と、ひとつだけお話ししました。家の中の部⁠屋ごとの点検は転倒予防のページにお任せして、ここでは冬の入浴に関わることだけを足します。

消費者庁は、冬に増える高齢の方の入浴中の事故について、次のような注意を呼びかけています。転倒だけでなく、入浴中の事故全般への注意ですが、どれも「急がない・急に動かない」という点で、転倒予防と重なります。

  • 入浴前に、脱衣所と浴室を暖めておく
  • お湯の温度は41度以下、湯につかるのは10分までを目安に
  • 浴槽から急に立⁠ち⁠上がらない。 立⁠ち⁠上がるところに手すりがあると、ゆっくり立てます
  • 食事の直後や、お酒が抜けていないときの入浴は控える
  • 入浴の前に、同居のご家族に一声かける。長いときは見に来てもらえるように

床の滑⁠り⁠止めマットと手すりについては、転倒予防のページに書いたとおりです。冬に足すなら、脱衣所に椅子を置いてください。靴下や厚手の下着を脱ぎ着するのは、片足立ちの動作です。座ってすれば、そこで転ぶことはありません。

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転んだ直後にすること

転んでしまったときに、何をするか。動画の「転び方で折れる場所が変わる」を、実際の場面に当てはめます。

まず、その場で

  1. すぐに立⁠ち⁠上がらない。 痛いところがないか、手足が動くかを、座ったまま確かめます
  2. 周りの人に声をかける。 手を貸してもらうのは恥ずかしいことではありません。氷の上で一人で立とうとすると、もう一度転びます
  3. 立てそうなら、四つんばい → 片膝 → 何かにつかまって、の順にゆっくり

転び方別に、見るところ

どう転んだか 折れやすい場所 こんなときは受診を
前や横に倒れて、手をついた 手首 手首が腫れてきた、動かすと痛い、手の形がいつもと違って見える
横向きに倒れて、腰を打った 足の付け根 立てない、脚に体重をかけられない、足の付け根や太ももが痛い。足の付け根の骨⁠折は、立てなくなることがほとんどです
しりもちをついた 背骨 背中や腰の痛みが数日たっても引かない、寝返りや起⁠き⁠上がりで痛む。圧迫骨⁠折は「腰痛だろう」と様子を見ているうちに日が過ぎることがあります

どれも「〜の可能性がある」であって、転んだ場所だけで骨⁠折かどうかはわかりません。レントゲンで確かめるのが受診の目的です。

[!warning] すぐに医療機関へ(迷ったら119番も)

  • 転んだあと、立てない・歩けない
  • 足のしびれや、力が入りにくい
  • 排尿や排便がうまくできない
  • 頭を打った(骨の話とは別に、痛みがなくてもその日のうちに受診を)

これらは緊急性が高いことがあります。ご家族向けのページにも同じ目安を載せています。

「転んだだけで折れた」は、検査の合図です

痛みが引いて、骨⁠折もなかった。それで終わりにしてよいでしょうか。動画でお伝えしたとおり、立った高さから転んだだけで骨が折れたなら、それは骨がもろくなっているサインかもしれません。「軽い転倒で折れた」がいちばん重い理由は、骨密度の値にかかわらず骨粗鬆症と診断されることがあり、次の骨⁠折につながりやすいからです。

骨⁠折の治療を受けた病院で骨密度検査の話が出なかったときは、ご自身から「骨の検査は受けたほうがよいでしょうか」と聞いてみてください。痛みのことは、主治医とご相談ください。

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ご家族にできること

冬の転倒は、家の外で起きます。ご家族が一緒にいない場面のほうが多いからこそ、出かける前と帰ったあとにできることがあります。

  • 靴を一緒にひっくり返す。底の溝のすり減りは、ご本人より周りの方が気づきやすいものです。冬用の靴を贈るなら、上の表を見ながら、一緒にお店で試してください
  • 杖の先ゴムを見る。すり減った先ゴムは、ご本人が気づかないまま何年も使われていることがあります
  • 滑⁠り⁠止めを買うなら、「外す場所」まで一緒に決める。つける習慣のほうが難しい道具です
  • 「転ばなかった?」より「今⁠日の道、どうだった?」と聞く。転んだことは、言いにくいものです。「なんでまた転んだの」と聞かれると、次から黙ってしまいます。路面の話として聞くと、転びかけた話も出てきます
  • 帰りが暗くなる日は、迎えに行くか、明るいうちに用事を済ませる相談を
  • 一緒に歩く。冬に家にこもると、歩く量が減り、筋力とバランスが落ち、次の転倒の準備になります。晴れた日の、日の高い時間の短い散歩は、転倒を減らすことと、冬に日光で作られにくいビタミンDを体で作ることの両方につながります

ご家族が転んで手首を折ったとき、「転んだだけだから」で終わらせないでください。骨の検査は受けた?と、一言かけてください。

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まとめ

ポイント 内容
冬に多いのは誰か 65歳以上の骨⁠折は冬に最多。手首の骨⁠折は屋外で、とくに東日⁠本の女性・50歳以上の女性に。65〜74歳は屋外でつまずき・滑って転ぶことが多い
暖かい日も 手首と足の付け根の骨⁠折は、前の日より気温が上がった日に増えていた
靴 深い溝+柔らかいゴムの底、低いかかと、甲がしっかり留まる、足に合う大きさ。革底・すり減った底・サンダルは冬の外に履かない
滑⁠り⁠止め 雪や氷の上では転倒を減らす。建物に入る前に外す。つける習慣が肝心
歩き方 歩幅を小さく、足の裏全体で、重心は少し前。歩き始め・速さを変えるときに注意。両⁠手は空け、携帯電話を見ながら歩かない
転んだら すぐ立たない。手をついた→手首、横向き→足の付け根、しりもち→背骨。立てない・しびれ・排尿排便の異常はすぐ受診
いちばん大切なこと 「転んだだけで折れた」は、骨密度検査を考える合図
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よくある質問

Q. 雪がほとんど降らない地域に住んでいます。このページは関係ありますか?

関係があります。首都圏のデータでも、65歳以上の骨⁠折は冬に最多でした。雪がなくても、朝の日陰の凍った歩道、濡れたマンホールのふた、横断歩道の白い線、建物の入口のタイルは、雨や霜で濡れるだけで滑ります。靴の底と歩き方は、雪国でなくても同じです。

Q. 靴につける滑⁠り⁠止めは、買ったほうがよいですか?

雪や氷の上を歩く機会がある方には、選択肢のひとつです。研究では、雪や氷の上を歩いた日の屋外の転倒が減っています。ただし、建物の中では逆に滑るものがあること、つけ忘れた日に転倒が起きやすいことを知ったうえで使ってください。雪がめったに降らない地域なら、底の溝と柔らかさのよい靴のほうが、毎⁠日⁠使える分だけ役に立ちます。

Q. 転びましたが、痛みはありません。受診は必要ですか?

その場で立てて、歩けて、痛みがなければ、すぐの受診は必要ないことが多いです。ただ、しりもちのあとに背中や腰の痛みが続くときは、背骨の骨⁠折の可能性もあります。数日たっても痛みが引かないとき、寝返りや起⁠き⁠上がりで痛むときは、受診してください。また、転んだことは、次の診察で主治医にお伝えください。「転びやすくなっていないか」を一緒に確かめる材料になります。

Q. 杖を使うと、かえって滑りませんか?

先のゴムがすり減っていなければ、杖は支えになります。冬の前に先ゴムを確かめ、すり減っていれば交換してください。杖は出かけられる範囲を広げる道具です。必要かどうかは、主治医やリハビリの専門家にご相談ください。

Q. 冬の間は出歩かないほうが安全ではないですか?

転倒そのものは減るかもしれませんが、歩く量が減ると筋力とバランスが落ち、春に外に出たときに転びやすくなっています。動かない時間が長くなること自体が、次の転倒の準備になります。「出歩かない」ではなく「晴れた日の、日の高い時間に、よい靴で短く歩く」が、骨にとっても転倒にとっても、よい答えです。

Q. 骨粗鬆症の治療を受けているのに、転んで折れてしまいました。治療は効いていないのでしょうか?

治療は骨⁠折の起こりやすさを下げますが、ゼロにはしません。転んで折れたからといって、治療が無駄だったということにはなりません。その骨⁠折を主治医に伝えて、これからの方針を一緒に考えましょう。痛みのことも、主治医とご相談ください。

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次に読む

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参考文献

  • Hayashi S, Noda T, Kubo S, et al. Variation in fracture risk by season and weather: a comprehensive analysis across age and fracture site using a National Database of Health Insurance Claims in Japan. Bone. 2019;120:512-518. PMID 30576867(首都圏・人口4,200万人・3年間・508,051件の骨⁠折。65〜79歳と80歳以上では骨⁠折は冬に最多。手首〈橈骨遠位端〉と足の付け根〈大腿骨近位部〉の骨⁠折は気温・降雨と関連し、前日より平均気温が高い日に増加)
  • Akahane M, Tada K, Matsuta M, et al. Seasonal variation of surgically treated distal radius fracture in Japan using inpatient database: cross-sectional study. J Bone Miner Metab. 2024;42(2):207-213. PMID 38418699(DPCデータ・手術をした手首の骨⁠折105,025例。冬に多く、とくに東日⁠本の女性・50歳以上の女性)
  • Ando J, Takahashi T, Ae R, et al. Epidemiology of distal radius fracture: a regional population-based study in Japan. BMC Musculoskelet Disord. 2023;24:478. PMID 37312071(北海道の地域調査・258例。屋外で・冬に多い。15歳超では単純な転倒が最多の原因。女性は75〜79歳がピーク)
  • Yamada M, Terao Y, Kojima I, et al. Characteristics of falls in Japanese community-dwelling older adults. Geriatr Gerontol Int. 2024;24(11):1181-1188. PMID 39376074(郵送調査・1,074人・1,695件の転倒。12〜2月に多い。65〜74歳は屋外でつまずき・滑りによる転倒が多く、高齢になるほど屋内でのバランス喪失が増える。転倒の約60%に何らかのけが、骨⁠折は約10%)
  • McKiernan FE. A simple gait-stabilizing device reduces outdoor falls and nonserious injurious falls in fall-prone older people during the winter. J Am Geriatr Soc. 2005;53(6):943-947. PMID 15935015(米国・無作為化試験・転倒歴のある65歳以上109名・ひと冬。雪氷の上を歩いた日の屋外転倒の相対リスク0.42、けがをした転倒0.13。骨⁠折は両群ともなし。滑⁠り⁠止め群の屋外転倒19件中12件は非装着時)
  • 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください」(入浴前に脱衣所・浴室を暖める/浴槽から急に立⁠ち⁠上がらない/食後すぐ・飲酒後の入浴を控える/入浴前に同居者へ一声)
  • 札幌市ウインターライフ推進協議会「転ばないコツおしえます。」https://tsurutsuru.jp/ (滑りやすい場所・歩き方・靴選び・滑⁠り⁠止め用品・服装。生活上の安全情報として参照)
  • 日⁠本骨粗鬆症学会・日⁠本骨代謝学会・骨粗鬆症財団 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。転んだあとに痛みが続くとき、立てないときは、我慢せずに医療機関を受診してください。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。

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