「骨粗鬆症と言われた。ゴルフは、ヨガは、プールは、もうやめたほうがいいのだろうか」。長く続けてきた運動や趣味ほど、迷います。
多くの運動は、やめる必要がありません。 変えるのは「やめるかどうか」ではなく「動き方」です。動画で触れた種目に加えて、ダンス・自転車・ボウリング・ハイキング・テニスまで、種目ごとの続け方の工夫を1枚の表にしました。主治医への聞き方と、骨折のあとに戻るときの順番も載せています。
骨粗鬆症でも、多くの運動や趣味は続けられます。ゴルフ・ヨガ・水泳・ガーデニングなど種目ごとの続け方の工夫と、主治医への聞き方を解説します。
「骨粗鬆症と言われた。ゴルフは、ヨガは、プールは、もうやめたほうがいいのだろうか」。長く続けてきた運動や趣味ほど、迷います。
多くの運動は、やめる必要がありません。 変えるのは「やめるかどうか」ではなく「動き方」です。動画で触れた種目に加えて、ダンス・自転車・ボウリング・ハイキング・テニスまで、種目ごとの続け方の工夫を1枚の表にしました。主治医への聞き方と、骨折のあとに戻るときの順番も載せています。
目次: やめるほうがリスク | 気をつける3つの動き | 種目別の早見表 | 表の補足 | 主治医への聞き方 | 水と陸の組み合わせ | 骨折のあとに戻るとき | 受診の目安 | まとめ | よくある質問
骨は、負荷がかかると強くなろうと反応し、動かないでいると筋肉と一緒に弱くなります(くわしくは骨を強くする運動)。だから、やめるほうがリスクになります。
地域で暮らす高齢の方を対象にした100を超える比較試験をまとめた研究では、運動に取り組むと転ぶ回数がおよそ2割減りました。とくに確かなのは、片足立ちや歩き方の練習といったバランス運動を含む運動です。ウォーキングやダンスにも別の良さはありますが、転倒を減らしたいなら、バランス運動を足すというのが研究から言えることです。
骨粗鬆症の方の運動について国際的な専門家グループがまとめた合意も、同じ方向を向いています。筋力運動とバランス運動を組み合わせることを強くすすめ、「持久力の運動だけにしない」と明記しています。
このあとの表では、気をつける動きを①②③の番号で示しています。番号の意味はこれだけです。
| 番号 | 動き | 置き換え方 |
|---|---|---|
| ① | 背中を丸めて深く前に曲げる(長く前かがみを続ける、勢いをつけて起き上がる、も同じ仲間) | 膝を曲げて、背筋はまっすぐ |
| ② | 体を強く、速くひねる | 力を抜いて、ゆるやかに |
| ③ | 転びやすい場面と急な衝撃(段差・滑る床・人との接触・ジャンプ) | 足元と靴を整える。手を添える |
①が背骨の前側に大きな力をかけ、圧迫骨折につながることがあるのは、40年ほど前の研究で、前に曲げる体操を続けたグループに新しい圧迫骨折が多かったことから知られています。②③は、骨折リスクが高い方では避けたほうがよいとされている動きです。
国際的な合意では、「決まった重さ以上は持たない」「ひねらない」といった一律の禁止ではなく、その人の運動歴と好みを踏まえて動き方の工夫を伝えることがすすめられています。表の「続け方の工夫」は、その考え方に沿っています。
「骨への刺激」は、骨を強くする運動でご紹介した荷重運動(立って体重が骨にかかる運動)かどうかの目安です。○の種目は骨への刺激があり、×の種目は続けながら陸の運動を足します。
| 種目 | 骨への刺激 | 気をつける動き | 続け方の工夫 |
|---|---|---|---|
| ウォーキング | ○ 体重がかかる | ③ 段差・暗い道 | かかとが低く、底が滑りにくい靴。1日6,000〜8,000歩が目安ですが、届かなくてかまいません。片足立ちなどのバランス運動を別に足す |
| 太極拳 | ○ 立って行う | 特になし | そのまま続けてください。転倒を減らす運動として骨粗鬆症の方にもすすめられています |
| ラジオ体操 | ○ 立って行う | ① 深く前に曲げる番 | その番だけ、膝を軽く曲げて浅めに。反らす動きは無理のない範囲で(腰部脊柱管狭窄症の方は控えめに) |
| グラウンドゴルフ | ○ 歩く・立つ・軽く振る | ① ボールを拾う ③ 芝の段差 | 拾うときは膝を曲げて、背筋はまっすぐ |
| ゴルフ | ○ ラウンドを歩く | ② フルスイング ① ボール・ティーを拾う | 力を抜いて、ゆるやかに振る。飛距離より続けること。拾うときは膝を曲げる。骨折のあとは6か月以降、主治医の許可を得てから |
| ガーデニング | △ 前かがみが長い | ① 少し前かがみを長く続ける | 低い作業は膝をついて(膝当てを使う)。プランターや作業台を腰の高さに。骨折のあとは4〜6か月ごろから、高い位置の作業から |
| ヨガ・ピラティス | △ バランスと柔軟性に | ① 深く前に折るポーズ・勢いをつけて起き上がる動き | ポーズを置き換える(背筋を伸ばして立つ/壁や椅子に手を添えて行うバランスのポーズ/椅子に座った体操)。教室では最初に「骨粗鬆症があります」と伝える |
| 水泳・水中ウォーキング(水中歩行) | × 水の中では体重がかかりにくい | ③ プールサイドの濡れた床 | 続けながら、陸の運動を少し足す(行き帰りを歩く、帰ってからかかと上げ10回)。膝や腰が痛くて陸の運動が難しい方には、よい選択肢 |
| ダンス | ○ 立って行う | ② 速い回転 ③ 急な方向転換・人との接触 | ゆっくりの演目から。回転は小さく。転倒を減らす効果ははっきりしていないので、バランス運動は別に |
| 自転車・エアロバイク | × 体重がサドルに乗る | ③ 屋外で転んだときの衝撃 | 歩く日を別に作る。室内のエアロバイクなら転倒の心配がなく、腰部脊柱管狭窄症の方にも向く |
| ボウリング | ○ 立って行う | ① 投げるときの前かがみ+片手に重い球 | 軽い球を選ぶ。投げるときは膝を曲げて、背筋を保つ |
| ハイキング・山歩き | ○ 体重がかかる | ③ 下り坂・段差・足元の悪い道 | 平らな道から。滑りにくい靴と杖(ポール)。荷物は軽く |
| テニス・卓球 | ○ 立って動く | ② 強いひねり ③ 急な方向転換・滑りやすい床 | ゆるやかなラリー中心に。勝ち負けより続けること。骨折のあとは6か月以降、主治医の許可を得てから |
表にない種目でも、考え方は同じです。その運動の中に①②③の動きがあるかを探し、あれば置き換える。なければ、そのまま続けてかまいません。
表に収まらない「なぜ」だけを、種目ごとに短く添えます。
ウォーキングとダンス。 上の研究で「転倒を減らす効果がはっきりしない」とされた2つです。どちらも立って体重をかける運動なので骨には良いのですが、転倒を防ぐ力まで期待するなら、バランス運動と組み合わせる必要があります。やり方は転倒予防にあります。
ゴルフ。 ゴルフと健康に関する研究を集めた報告では、ゴルフは中くらいの強さの身体活動になりうる一方、ゴルフのけがで最も多いのは腰・背中でした。工夫がスイングと拾う動作に集中しているのは、このためです。
ガーデニング。 「少し前かがみ」を長く保つと、体が前に倒れないように背中の筋肉が引っぱり続けます。筋肉は動くのは得意ですが、同じ姿勢で力を出し続けるのが苦手です(背骨の圧迫骨折 — つぶれが姿勢を変える)。膝をつく・作業台を高くするのは、この「長く続ける」を断つ工夫です。
ヨガ・ピラティス。 骨量が減っている方が、前に深く折り曲げるヨガのポーズのあとに圧迫骨折を起こしたという症例の報告があります。ヨガそのものが悪いのではなく、ポーズの選び方の問題です。背筋を伸ばすポーズや椅子に座った体操は、むしろおすすめです。
水泳。 水泳選手の骨密度を調べた研究をまとめると、運動をしない人と同じくらいでした。水泳が骨を弱くするわけではありませんが、骨を強くする目的には向かない、ということです。
自転車。 ロードバイクを続けている成人は、腰の骨などの骨密度が低い傾向があると報告されています。体重がサドルに支えられる姿勢で長い時間を過ごすことが関係すると考えられています。心臓や肺、膝にはやさしい運動なので、やめる必要はありません。歩く日を別に作ってください。
「運動していいですか」と漠然と聞くと、「無理のない範囲で」という漠然とした答えになりがちです。運動の名前を挙げると、あなたの骨の状態に合わせた答えが返ってきます。
診察の前に、この4つをメモに書いておきましょう。
| メモに書くこと | 例 |
|---|---|
| 種目の名前 | 「ゴルフ」「ヨガ教室」「プールの水中ウォーキング」 |
| 頻度と時間 | 「月に2回、半日」「週1回、1時間」 |
| その運動の中にある①②③の動き | 「ボールを拾う前かがみ」「フルスイング」「前屈のポーズ」 |
| 骨折歴・痛み・持病 | 「背中の痛みはない」「心臓の持病で通院中」 |
言い方は、これで十分です。
「月に2回、ゴルフをしています。続けていいですか。気をつける動きがあれば教えてください。」
国際的な合意では、医師側は骨折リスク・これまでの運動歴・本人の好みを踏まえて運動を考えることがすすめられています。「20年続けている」「これが生きがい」といったことも、遠慮せず伝えてください。答えがあなたに合ったものになります。
返ってくる答えは、おおむね3通りです。
「リハビリの専門家(理学療法士)に相談できますか」と聞くのも、よい方法です。動き方の工夫は、その場で体を動かしながら教わるのがいちばん身につきます。
プールや自転車が中心の方は、「×」の種目はやめずに、陸の運動を足せば組み合わせが完成します。国際的な合意では、バランス練習は毎日、筋力運動は週2回程度がすすめられています。骨を強くする運動の目安(週2〜3回でも続ければ効果が期待できる)と合わせると、たとえばこうなります。
| 曜日 | 内容 |
|---|---|
| 月 | プールで水中ウォーキング。行き帰りは歩く |
| 水 | 近所を30分ウォーキング |
| 土 | ゴルフ、グラウンドゴルフ、ハイキングなど、好きな種目 |
| 毎日 | 片足立ち(テーブルに手を添えて)と、かかと上げ10回 |
これは一例です。「毎日」の2つは歯磨きや台所仕事の「ながら」で済みます。表のどこかに、ご自身の好きな種目を入れてください。好きな種目が入っているほうが長続きします。
すでに背骨の圧迫骨折がある方、骨折の治療中の方、骨密度がかなり低いと言われている方は、運動を再開する前に主治医にご相談ください。そのうえで、戻るときの考え方をお伝えします。
国際的な合意では、骨折のない骨粗鬆症の方には一般の身体活動の目安がそのまま当てはまる一方、背骨の骨折のあとは、激しい運動より中くらいの強さの運動が好ましいとされています。痛みが残っている方、骨折が複数ある方、背中の丸まりが強い方は、種目によっては不利益が利益を上回ることがあるため、リハビリの専門家に相談してから決めることがすすめられています。
主治医と相談しながら、段階を踏みます。目安の時期は圧迫骨折の回復の見通しの早見表に沿っています。
| 段階 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 散歩を5分→10分→15分と延ばす | 痛みが許す範囲で早期から |
| 2 | その種目の「動きだけ」を短時間、①②③を置き換えた形で試す(ゴルフなら練習場でゆるやかに振る、ガーデニングなら作業台の上の鉢だけ) | 種目による |
| 3 | 通常の形に戻す | ガーデニングは4〜6か月ごろ、ゴルフ・テニスは6か月以降、いずれも主治医の許可を得てから |
「今はできないけれど、回復したらまたゴルフをしたい」。その目標を主治医に伝えることは、心の回復にも大切です(骨折後の心のケア)。
運動を続けるなかで、次のようなことがあれば、運動を中止して主治医にご相談ください。
痛みのことは、我慢せず主治医と相談してください。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| やめるほうがリスク | 運動に取り組むと転ぶ回数が約2割減る。転倒予防にはバランス運動を足す |
| 気をつける動きは3つ | ①深く前に曲げる ②強く速くひねる ③転びやすい場面と急な衝撃。禁止ではなく置き換える |
| 骨への刺激 | 水泳・自転車は続けながら陸の運動を足す |
| 主治医への聞き方 | 種目の名前・頻度・含まれる動き・骨折歴をメモに。答えは「そのまま/工夫して/今は待つ」の3通り |
| 骨折のあと | 中くらいの強さまで。散歩→動きだけ→通常の形、と段階を踏み、主治医の許可を得てから |
Q. 骨が弱いのに運動したら、折れてしまいませんか?
適切な運動はむしろ骨を強くします。「動かない」ことのほうが骨を弱くします。転倒につながる激しい運動(ジャンプ、人とぶつかる運動)は避けたほうがよいですが、このページの表にある種目の多くは工夫すれば続けられます。くわしくは骨粗鬆症のよくある誤解の誤解9をご覧ください。
Q. 骨密度が低めと言われただけで、骨折はしたことがありません。それでも制限は必要ですか?
国際的な合意では、骨折のない骨粗鬆症の方には一般の方と同じ身体活動の目安が当てはまるとされています。気をつけるのは①②③の動きの置き換えだけで、種目そのものを変える必要は多くの場合ありません。ただし骨密度がかなり低いと言われた方は、主治医にご確認ください。
Q. 教室やジムの先生には、何を伝えればいいですか?
「骨粗鬆症があります」と最初に伝え、「前に深く曲げる」「勢いをつけて起き上がる」「強くひねる」動きを置き換えたいと話してください。多くの指導者は代わりの動きを知っています。わからないと言われたら、主治医やリハビリの専門家に聞いた内容を持っていくとスムーズです。
Q. 運動のあとの食事で、気をつけることはありますか?
筋肉と骨は一緒に弱くなり、一緒に強くなります。運動とタンパク質を組み合わせることで、筋肉と骨の両方を守ることが期待できます。くわしくはタンパク質と骨をご覧ください。
Q. 前かがみの「正しい動き方」そのものを知りたいのですが。
洗濯物・草むしり・孫の抱っこ・くしゃみなど、日常の場面ごとの前かがみの作法は、背骨を折らない「前かがみ」の作法にまとめています。骨折のあとの方は、まず圧迫骨折の日常生活ガイドをご覧ください。
Q. 杖やポールを使うのは、運動として「負け」ではありませんか?
杖は転倒予防の有効な手段で、あることで行動範囲が広がり、活動量を保てます。ハイキングのポールも同じ考え方です。「使わないで歩けること」より「転ばずに続けられること」のほうが、骨にとっては大切です。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。表の「続け方の工夫」は一般的な考え方であり、ご自身の骨の状態に合った運動は主治医が判断します。すでに骨折がある方、骨折の治療中の方、骨密度がかなり低い方は、運動を再開する前に主治医にご相談ください。
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医療監修
加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)
最終更新:2026年10月6日