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お酒・たばこと骨粗鬆症 — 晩酌の「ほどほど」と、何歳からでも意味がある禁煙

お酒は1日に純アルコール20gまでなら、骨⁠折がはっきり増えるという結果は出ていません。日⁠本のお酒での数え方、年齢を重ねてからの飲み方、禁煙後の骨の時間、禁煙外来の使い方を解説します。

骨粗鬆症と言われて晩酌とたばこをどうしたらいいか迷っている方⁠へ。先に答えを書きます。お酒は1日に純アルコール20gまでなら、骨⁠折がはっきり増えるという結果は出ていません。ビールなら中瓶1本、日⁠本酒なら1合に少⁠し⁠足りない量です。それを超えると骨⁠折、とくに太ももの付け根の骨⁠折が増えていきます。たばこは吸っているあいだ骨⁠折を増やし、その分は骨密度の数字には表れきりません。やめた効果が骨に出るまでには年単位の時間がかかりますが、やめた人は吸い続けた人より骨⁠折が少なくなります。

お酒は量を知って付き合い、たばこは今⁠日から相談を始める。このページでは、その「量」を日⁠本のお酒で数える方⁠法、年齢を重ねてからの飲み方、やめたあとの骨の時間、そして禁煙外来の使い方までをまとめました。

この動画はAI音声・映像技術を使用して制作しています。内容は整形外科専門医が監修しています。

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骨密度とは別に効いてくる2つのリスク

医師が骨⁠折の起こりやすさを計算するときに使う道具、FRAX®(フラックス)には、「いま、たばこを吸っていますか」「お酒を1日3単位以上飲みますか」という質問があります。骨密度の値を入れられる道具なのにわざわざ別に聞くのは、どちらも骨密度の数字だけでは説明しきれない分まで骨⁠折を増やすからです(FRAX®の質問の答え方は「FRAX」の記事で説明しています)。

ですから「骨密度はまずまずでした」と言われた方にも関係があります。骨粗鬆症と言われた方にとっては、お酒とたばこは数少ない「自分で変えられる」リスクです。年齢や家族歴は変えられませんが、今夜の一杯は変えられます。

お酒が骨⁠折を増やす道すじ

お酒が多いと骨をつくる細胞の働きが弱まり、カルシウムの吸収にも影響すると考えられています。そこに酔って転ぶことが加わります。太ももの付け根や手首の骨⁠折の多くは転倒から起きますから、こちらの影響も小さくありません。

たばこが骨⁠折を増やす道すじ

たばこは骨そのものに加えて、体重が減りやすいことや、女性では閉経が早まる可能性があることなど、いくつもの経路で骨に影響すると考えられています。大きな研究のまとめでは、たばこによる骨⁠折の増え方のうち骨密度の低さで説明できるのは一部だけでした。骨密度検査で「大丈夫」と言われても、たばこの分のリスクは残ります。

リスク要因全体の中での重さは、「骨粗鬆症になりやすい人」の記事の表をご覧ください。お酒とたばこは「1つだけで治療の判断が変わることは多くないが、重なると差が出る」項目です。

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お酒の「ほどほど」は、どのくらい?

1日2単位という境目

3つの国であわせて約1万7千人の男女を追いかけた研究をまとめると、お酒が1日2単位までの人では、骨⁠折のはっきりした増加は見られませんでした。2単位を超えると骨⁠折が増えはじめ、なかでも太ももの付け根の骨⁠折がはっきり増えていました。男女とも年齢や骨密度にかかわらず同じ傾向です。具体的な数字は最後のページの表にまとめています。

ここで気をつけたいのは、2単位は「骨⁠折がはっきり増える手前」であって、「毎日飲んだほうがよい量」ではないことです。もともと飲まない方が、骨のために飲み始める必要はありません。

純アルコールのグラムで数える

1単位は、純アルコールで8〜10gです(国によって少⁠し⁠違います)。2単位なら、およそ16〜20g。この記事では、わかりやすく 1日20gまで を目安にします。

純アルコールの量は、ラベルの度数から計算できます。

純アルコール(g)= 飲む量(mL)× 度数(%)÷ 100 × 0.8

例えば、ビール中瓶(500mL・5%)なら、500 × 5 ÷ 100 × 0.8 = 20g です。

お酒 量 純アルコール
ビール(5%) 350mL 缶 14g
ビール(5%) 中瓶・ロング缶 500mL 20g
日⁠本酒(15%) 1合(180mL) 約22g
ワイン(12%) グラス1杯(120mL) 約12g
焼酎(25度) 1合(180mL) 36g
焼酎(25度) 水割り・お湯割り1杯(焼酎60mL) 12g
ウイスキー(40%) シングル(30mL) 約10g
缶チューハイ(5%) 350mL 14g
缶チューハイ(9%) 350mL 約25g
缶チューハイ(9%) 500mL 36g

20gまでを言いかえると、ビール中瓶1本、日⁠本酒なら1合に少⁠し⁠足りない量、ワインならグラス2杯弱、25度の焼酎ならお湯割りで1杯半ほどです。

表のなかでいちばん見落としやすいのが度数の高い缶チューハイです。本人の感覚では「今⁠日は缶1本だけ」。その1本が9%のロング缶なら、純アルコールは36gで、1日の目安を軽く超えています。缶を開ける前に、度数をちらりと見る習慣をおすすめします。

FRAX®の「1日3単位以上」はどのくらい?

FRAX®の質問の「3単位」は、純アルコールで24〜30gです。上の表で計算すると日⁠本酒なら1合と少し、ビールなら中瓶1本と少しにあたります。「2単位」と「3単位」の間は思っているより狭いと覚えておいてください。

年齢とお酒の効き方

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年)は、高齢になると体の水分が減るため同じ量のお酒でも酔いやすくなり、転倒や骨⁠折、筋肉が減る危険も高まるとしています。若いころと同じ一杯でも、体への効き方は違います。

同じガイドラインには、飲み方の工夫も挙げられています。骨のためにも、そのまま使えます。

  • 飲む前に、今⁠日の量を決めておく
  • 食事と一緒に、ゆっくり飲む
  • 合間に水(または炭酸水)を飲む
  • 一週間のうちに、飲まない日をつくる
  • 眠るためのお酒(寝酒)はやめる。かえって眠りが浅くなります
  • お酒のあとの入浴は控える。冬の入浴の注意は「冬の転倒と骨⁠折」の記事にもまとめています

参考:生活習慣病の目安との関係

同じガイドラインでは、健康日⁠本21(第三次)の目標として「生活習慣病のリスクを高める量」を1⁠日⁠あたり純アルコールで男性40g以上、女性20g以上としています。これは骨⁠折の線とは別の目安で、「ここまでなら飲んでよい量」という意味でもありません。骨のことを考えるなら男女とも20gまでを目安にしてください。

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たばこと骨、やめたあとの時間

吸っているあいだの骨⁠折

日⁠本の広島を含む10の追跡研究、約6万人の記録をまとめた研究では、いまたばこを吸っている人は吸わない人に比べて骨⁠折が多く、とくに太ももの付け根の骨⁠折が多くなっていました。過去に吸っていた人も吸ったことのない人よりは多いものの、いま吸っている人よりは少なくなっていました。

やめると、骨はいつから変わるのか

たばこをやめても、骨への効果はすぐには出ません。

  • アメリカの約11万人の女性を追った研究では、太ももの付け根の骨⁠折が減りはじめたのは、やめてから10年ほどたってからでした
  • カナダの研究では、やめて間もない人の骨⁠折のしやすさは、まだ吸っている人とあまり変わりませんでした

それでも、やめた人は吸い続けた人より骨⁠折が少なくなります。

  • スウェーデンで75歳の女性1,033人を10年間追った研究では、たばこをやめていた人は、吸い続けていた人より背骨の骨⁠折が少なくなっていました
  • 韓国の約400万人の健診記録でも、やめた人は吸い続けた人より骨⁠折が少なくなっていました

骨の変わり方は年単位です。ですから始めるのは早いほど効いてきます。70代でやめても、その先に10年、20年の暮らしがあります。

骨以外への影響

厚生労働省の禁煙支援マニュアルは、喫煙をがん、脳卒中、心筋梗塞、慢⁠性⁠閉⁠塞⁠性⁠肺⁠疾⁠患(COPD)、糖尿病、歯周病などの危険因子として挙げています。禁煙は骨のためだけの話ではありません。

禁煙外来で相談する

長年のたばこを気合いだけでやめるのは大変です。禁煙外来では、医師と相談しながらやめる日を決め、計画的に進めます。同じマニュアルでは、自力でやめるより禁煙外来などを使うほうが「比較的楽に」「より確実に」やめられると案内しています。条件を満たせば健康保険で受けられます。

私は、たばこを吸っている骨粗鬆症の方には、まずかかりつけの先生に「たばこをやめたい」とひとこと伝えることをおすすめしています。どの方⁠法が合うかは、そこから一緒に決めれば十分です。

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今⁠日からできることと、よくある質問

今⁠日からできること

  • いつものお酒の純アルコールを、一度計算してみる(量 × 度数 ÷ 100 × 0.8)
  • 1日20g(2単位)までを目安にして、一週間のうちに飲まない日もつくる
  • 缶を開ける前に、度数を見る
  • たばこを吸う方は、かかりつけの先生に禁煙外来のことを聞いてみる
  • 骨密度の検査や診察のときに、お酒とたばこのことも正直に伝える

主治医に伝えるとよいこと

  • 1日に飲むお酒の種類と量(「缶チューハイ9%を2本」のように、度数ごと)
  • 週に何日飲むか
  • たばこを吸っているか。やめた方は、何年前にやめたか
  • 飲んだあとに転んだこと、ふらついたことがあるか

FRAX®の計算でも、たばこは「いま吸っているか」で答えます。何年前にやめたかは計算には入りませんが、主治医にとっては大事な情報です。

よくある質問

Q. 骨粗鬆症と言われたら、お酒はやめないといけませんか?

やめる必要はありません。1日20g(ビール中瓶1本、日⁠本酒なら1合弱)までなら、骨⁠折がはっきり増えるという結果は出ていません。ただし飲んでいるお薬やほかの病気によっては主治医から別の指示が出ることがあります。そのときは主治医の指示を優先してください。

Q. 週末にまとめて飲むのは、平日に飲まない分で相殺できますか?

できるとは考えないでください。厚生労働省のガイドラインは、1回の飲酒で純アルコール60g以上の「一時多量飲酒」を避けるべきものとしています。転倒やけがの危険も高まります。1⁠日⁠あたりの量を守るほうが、骨にも安全です。

Q. 何十年も吸ってきました。いまさらやめても意味がありますか?

あります。骨への効果が出るまでには年単位の時間がかかりますが、やめた人は吸い続けた人より骨⁠折が少ないことがわかっています。75歳の女性を追った研究でも、やめていた人は背骨の骨⁠折が少なくなっていました。そして禁煙の効果は骨だけではありません。

Q. 本数を減らすだけでも、骨のためになりますか?

骨⁠折の研究でリスクの低下が確かめられているのは「やめた人」です。減らすのは、やめるまでの一歩と考えて、禁煙外来で相談してみてください。

Q. 加熱式たばこなら、骨への影響は少ないですか?

加熱式たばこと骨⁠折の関係を長い期間追った研究は、まだ十分ではありません。「影響が少ない」とは言えないのが現時点での答えです。やめることを考えているなら、紙巻きでも加熱式でも、禁煙外来で相談できます。

Q. 家族がたばこをやめてくれません。どう声をかければよいですか?

「やめなさい」より、「骨のことで先生に一度相談してみない?」のほうが受け取ってもらいやすいかもしれません。次の診察に一緒に行く、禁煙外来のある医療機関を一緒に探す、といった手伝い方もあります。

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データと参考文献

研究のデータ

本文で「増えていた」「少なかった」と書いた結果の、具体的な数字です。どれも観察研究で、「お酒やたばこをやめれば、必ずこれだけ減る」という意味ではありません。

項目 調べた人たち 結果
お酒 1日2単位まで 3つの国の追跡研究、男女 約1万7千人 骨⁠折のはっきりした増加なし
お酒 1日2単位を超える 同上 骨⁠折全体 約1.2倍/骨粗鬆症による骨⁠折 約1.4倍/太ももの付け根の骨⁠折 約1.7倍(2単位以下の人と比べて)
いまたばこを吸っている 日⁠本の広島を含む10の追跡研究、約6万人 骨⁠折全体 約1.25倍/太ももの付け根の骨⁠折 約1.8倍(吸わない人と比べて)。太ももの付け根の骨⁠折の増え方のうち、骨密度の低さで説明できるのは約2割
過去に吸っていた 同上 吸ったことのない人より多いが、いま吸っている人より少ない
やめてからの年数 米国の女性 約11万6千人(34〜59歳から最長12年) やめて10年までは減少がみられず、10年を過ぎると、吸い続けている人の約0.7倍
やめて間もない人 カナダ 約1万8千人(2回の検査の間、平均4.4年のあいだにやめた人) 短期の骨⁠折のしやすさは、吸っている人と同程度
75歳でやめていた人 スウェーデンの75歳女性 1,033人、10年 吸い続けていた人より背骨の骨⁠折が少ない(上腕の付け根の骨⁠折は、吸ったことのない人より多かった)
やめた人(大規模) 韓国の健診受診者 約400万人 吸い続けている人より骨⁠折が少ない

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参考文献

  • Kanis JA, et al. Alcohol intake as a risk factor for fracture. Osteoporos Int. 2005;16(7):737-742. PMID 15455194
  • Kanis JA, et al. Smoking and fracture risk: a meta-analysis. Osteoporos Int. 2005;16(2):155-162. PMID 15175845
  • Cornuz J, et al. Smoking, smoking cessation, and risk of hip fracture in women. Am J Med. 1999;106(3):311-314. PMID 10190380
  • Thorin MH, et al. Smoking, smoking cessation, and fracture risk in elderly women followed for 10 years. Osteoporos Int. 2016;27(1):249-255. PMID 26302684
  • Park JS, et al. The positive impact of smoking cessation on fracture risk in a nationwide cohort study. Sci Rep. 2024;14:9892. PMID 38688971
  • Zarzour F, Leslie WD. The effect of smoking cessation versus current smoking on fracture risk: the Manitoba BMD Registry. J Clin Densitom. 2024;27(4):101523. PMID 39181063
  • 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」2024年2月
  • 厚生労働省「禁煙支援マニュアル(第二版)」2013年4月
  • WHO Fracture Risk Assessment Tool (FRAX®) https://frax.shef.ac.uk/

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。お酒やたばこ、骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。

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