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要介護になる原因、第2位は骨⁠折・転倒 — 数字の裏にある、防げるかもしれない道すじ

2025年の国の調査で、介護が必要になった原因の第2位が骨⁠折・転倒になりました。数字の正しい読み方と、認知症や脳卒中と違って骨⁠折には打つ手がはっきりしている理由を解説します。

骨粗鬆症の外来でいちばんよくうかがうのは、「骨密度がいくつだと困るのか」ではありません。「人の世話にならずに、最後まで自分の足で歩けるだろうか」。言葉にするかどうかは別として、ほとんどの方がそこを気にしていらっしゃいます。

2026年7月に公表された国の最新の調査で、この不安に関わる数字が動きました。介護が必要になった原因の第2位が、骨⁠折・転倒になりました。 これまで長く2位だった脳卒中を上回っています。

怖がっていただくための話ではありません。数字を最後まで読むと、むしろ逆のことが見えてきます。この一覧の原因の中で、打つ手がいちばんはっきりしているのが骨⁠折です。

この動画はAI音声・映像技術を使用して制作しています。内容は整形外科専門医が監修しています。

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最新の順位:骨⁠折・転倒が2位に

厚生労働省が3年ごとに行っている大きな調査(国民生活基礎調査)の、2025年の結果が2026年7月に公表されました。

介護が必要になった主な原因(要介護1〜5の方)

順位 原因 2025年 (2022年)
1 認知症 23.6% 23.6%
2 骨⁠折・転倒 14.8% (13.0%・3位)
3 高齢による衰弱 14.5% (10.9%・4位)
4 脳血管疾患(脳卒中) 14.4% (19.0%・2位)
5 関節疾患 5.8% (5.4%・5位)

3年前と比べると、脳卒中は19.0%から14.4%へと大きく下がりました。脳卒中の予防や治療が進んできた表れと考えられます。

一方で、骨⁠折・転倒は13.0%から14.8%へ上がり、順位が3位から2位になりました。

介護が必要になった主な原因 2022年と2025年の比較。脳卒中が19.0%から14.4%へ下がり、骨折・転倒は13.0%から14.8%へ上がった(要介護1〜5・在宅)

もっとも、2位の骨⁠折・転倒(14.8%)、3位の高齢による衰弱(14.5%)、4位の脳卒中(14.4%)は、0.4ポイントの中に並んでいます。ほとんど同じです。「2位」という順位そのものより、3年のあいだに脳卒中が下がり、骨⁠折・転倒が下がらなかったという向きのほうを見ていただきたいと思います。

骨⁠折が増えたというより、ほかの原因が減っていくなかで骨⁠折だけが減っていない、と読むほうが実情に近いかもしれません。血圧やコレステロールと同じように骨を扱う習慣が、まだ社会に根づいていないということでもあります。

なお、この表は要介護(要介護1〜5)と認定された方についての数字です。もう少し軽い「要支援」の方まで含めた全体で見ると、順位や割合は変わります(全体では 認知症16.7%、高齢による衰弱15.6%、骨⁠折・転倒14.6%、脳血管疾患12.5%、関節疾患9.1%)。同じ調査でもどの範囲を見るかで数字が変わるので、ほかで見かけた数字と違っていても、どちらかが間違いというわけではありません。

[!note] ご自宅で介護を受けている方の数字です 国民生活基礎調査は世帯を訪ねて調べる調査なので、対象はご自宅で暮らしている方です。施設に入所している方は含まれていません。

段階ごとに見ると

介護の必要度は「要支援1・2」から「要介護1〜5」まで7段階に分かれています。原因別の割合を段階ごとに並べると、多くの原因は段階によって大きく変わります。

たとえば認知症は、要支援の方では5.7%ですが、要介護の方では23.6%です。脳卒中も、要支援9.4%に対して要介護14.4%と差があります。

ところが骨⁠折・転倒だけは、要支援で14.7%、要介護で14.8%と、ほとんど変わりません。骨⁠折・転倒は、介護がぐっと必要になった方に特有の原因ではなく、要支援1から要介護4まで、13.8〜16.1%と同じくらいの割合でいるということです。いちばん重い要介護5では10.1%と少し下がり、この段階では脳卒中(27.6%)が最も多くなります。

要介護度別に見た骨折・転倒の割合(2025年)。要支援1から要介護4まで13.8〜16.1%でほぼ一定、要介護5で10.1%。認知症は要支援で低く要介護で高い

裏を返せば、骨⁠折をきっかけに支援が必要になった方が、必ずしも重い段階に進むわけではないということです。軽い段階でとどまっている方が、それだけたくさんいらっしゃいます。

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なぜ骨⁠折が介護につながるのか

骨を折っただけで、どうして介護が必要になるのか。いちばん問題になるのは、足の付け根の骨⁠折(大⁠腿⁠骨⁠近⁠位⁠部⁠骨⁠折〈だいたいこつきんいぶこっせつ〉)です。国内では年間およそ19万人に起きていると推計されています(2017年)。

この骨⁠折が起きると、多くの場合こういう経過をたどります。

転ぶ
  ↓
足の付け根を骨⁠折する(立てなくなることがほとんど)
  ↓
入院・手術
  ↓
数週間、思うように動けない期間ができる
  ↓
筋力が落ちる/歩く自信が落ちる
  ↓
退院後、骨⁠折の前と同じようには歩けないことがある

骨がくっつくかどうかは、あまり問題になりません。手術の技術は進んでいて、骨そのものは治ります。難しいのは、動けなかった期間に落ちた筋力と自信を、どこまで取り戻せるかです。

背骨の骨⁠折(椎体骨⁠折〈ついたいこっせつ〉)も、繰り返すと影響が出てきます。背中が丸くなると重心が前に移り、かえって転びやすくなります。息が浅くなったり、食欲が落ちたりすることもあります。

転ぶことそのものもこわい

転倒がこわいのは、骨⁠折するからだけではありません。一度転ぶと、転ぶことがこわくなります。

外に出るのをためらう、歩く量が減る、筋力とバランスが落ちる、さらに転びやすくなる。この輪に入ると、骨⁠折していなくても少しずつ生活が縮んでいきます。

「転んでからは、なんとなく外に出るのが億劫で」。外来でとてもよくうかがう言葉です。気の持ちようの問題ではなく、誰にでも起こる自然な反応なので、対策も気合いではなく具体的な工夫で立てていきます。

「骨⁠折イコール寝たきり」ではありません

上の順位表を見て「骨を折ったら介護生活になるのか」と受け取られたとしたら、それは正確ではありません。

14.8%という数字は、「介護が必要になった方を100人集めると、そのうち約15人は骨⁠折・転倒がきっかけだった」という意味です。 「骨⁠折した人の14.8%が要介護になる」ではありません。よく取⁠り⁠違えられるところです。

実際には、足の付け根を骨⁠折されても、手術とリハビリを経て歩いて帰られる方はたくさんいらっしゃいます。骨⁠折を経験した多くの方が、その後も自分の生活を続けています。

足の付け根を骨⁠折した国内の方々を10年間追いかけた研究があります。

骨⁠折の前 1年後 その後10年
自宅で暮らしている方 84% 81% 約86%で推移
一人で外を歩ける方(杖などを含む) 68% 56% 約63%で推移

1年後も8割の方がご自宅で暮らしていました。一方で、一人で外を歩ける方は1割ほど減っています。足の付け根の骨⁠折で多く失われるのは、住まいより歩く力のほうです。だからこそ、骨⁠折のあとのリハビリと、次の骨⁠折を防ぐことが大切になります。

では何が分かれ目になるのか。研究や日々の診療から見えているのは、おおよそ次の3つです。

  • 骨⁠折のあとに、骨粗鬆症そのものの治療が始まったかどうか
  • リハビリを、退院後も続けられたかどうか
  • 次の骨⁠折を防げたかどうか

分かれ目は骨⁠折した瞬間ではなく、そのあとに何が起きたかにあります。骨⁠折したあとにも、やれることはまだ残っています。ここから先は、その話です。

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認知症や脳卒中と違って、骨⁠折には「前の日」があります

順位表をもう一⁠度⁠見てください。1位の認知症、3位の高齢による衰弱、4位の脳卒中に共通しているのは、いつ始まったのかがはっきりしないか、ある日突⁠然⁠起きるか、のどちらかだということです。

骨⁠折はそのどちらとも違い、はっきりした「その日」があり、「その前の日」があります。前の日にできることが具体的にあるので、対策を立てるうえでこの違いは大きいです。

いつ起きるか 前もって打てる手
認知症 ゆっくり、気づきにくい 限られている
脳卒中 突然 血圧・不整脈などの管理
骨⁠折 はっきりした日がある 骨を強くする・転ばない工夫をする

骨⁠折にはもう一つ手がかりがあります。最初の骨⁠折が、次の骨⁠折の予告になります。

新潟県佐渡市の調査では、背骨の骨⁠折は平均78歳ごろ(77.7歳)、足の付け根の骨⁠折は平均81歳ごろ(81.4歳)に起きていました。そして足の付け根を骨⁠折された方の約8割に、背骨の骨⁠折もありました。

この数年の間が、いちばん手を打てる時期です。 背骨の骨⁠折が見つかった時点で骨粗鬆症の治療を始めていれば、その先は変わっていたかもしれません。

📖 詳しくは 「骨⁠折の連鎖」を止める をご覧ください。

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今⁠日から打てる手

1. 骨の状態を、数字で知る

まだ骨密度を測ったことがなければ、まずそこからです。血圧と同じで、測らないと始まりません。

2. 骨⁠折を「たまたま」で終わらせない

骨⁠折の経験がある方、ご家族が骨⁠折された方は、骨粗鬆症の検査を受けたかどうかを確認してみてください。骨⁠折の治療は受けたけれど骨粗鬆症の治療は始まっていない、という方がとても多くいらっしゃいます。

骨⁠折の治療は、壊れた壁を直すこと。骨粗鬆症の治療は、家全体の耐震性を上げること。壁だけ直しても、次の揺れでまた壊れてしまいます。

3. 転ばない工夫は、いちばん慣れた場所から

転倒の多くは、外ではなく家の中で起きています。それも階段や浴室より、ふだんいちばん長く過ごしている部⁠屋で多いという報告があります。危ない場所だけでなく、慣れた場所にも目を向けてみてください。

📖 転倒予防 — バランスと筋力トレーニング

4. 動くことをやめない

痛みや不安があるときに無理をする必要はまったくありません。ただ、動かない時間が長くなると、それ自体が次の転倒の下地になります。

主治医やリハビリのスタッフと相談しながら、できる範囲で構いませんので、体を動かす習慣を続けていただければと思います。

📖 骨を守る運動

今⁠日からできること

[!warning] お願い 現在処方されているお薬を、自己判断で変えたりやめたりしないでください。気になることがあれば、必ず主治医にご相談ください。

  • 骨密度を測ったことがなければ、次の受診で相談してみましょう。「骨密度の検査を受けたいのですが」の一言で始められます。
  • 骨⁠折の経験がある方は、骨粗鬆症の治療が始まっているか確認してください。お薬手帳を見ると、骨のお薬が入っているかどうかがわかります。
  • ふだん過ごしている部⁠屋を、一度だけ見回してみてください。床のコード、めくれたマット、通り道の物。今⁠日できるのは一つで十分です。
  • ご家族が骨⁠折されたときは、「骨の検査は受けた?」と声をかけてみてください。 ご本人は骨⁠折の治療で精一杯で、そこまで気が回らないことがよくあります。
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まとめとよくある質問

ポイント 内容
順位が変わりました 2025年の調査で、介護が必要になった原因の第2位が骨⁠折・転倒(14.8%)になりました。脳卒中を上回っています
数字の読み方 「介護が必要になった方のうち約15%が骨⁠折・転倒きっかけ」であって、「骨⁠折した人の15%が要介護になる」ではありません
分かれ目はあとにあります 骨⁠折した瞬間ではなく、そのあとに骨粗鬆症の治療が始まったかどうかで、その先が変わってきます
骨⁠折には「前の日」があります 認知症や脳卒中と違い、前もって打てる手がはっきりしているのが骨⁠折です
順位より向き 2位〜4位は0.4ポイントの中。脳卒中が下がるなかで、骨⁠折・転倒は下がっていません

よくある質問

Q. 骨⁠折したら、介護が必要になるということですか?

いいえ、そうではありません。この記事の数字は「介護が必要になった方の中で、きっかけが骨⁠折・転倒だった方の割合」です。骨⁠折された方の多くは、治療とリハビリを経てご自身の生活を続けていらっしゃいます。

Q. 認知症が1位なら、そちらのほうが心配すべきでは?

どちらが大事ということではありません。ただ、骨⁠折には前もって具体的に打てる手がはっきりあります。検査で状態がわかり、お薬があり、転倒を減らす工夫があります。手立てのあるところから始めるのは、理にかなった順序だと思います。

Q. もう80歳を過ぎています。今から治療を始めても間に合いますか?

年齢を理由に治療をあきらめる必要はありません。骨粗鬆症の治療は、高齢の方でも骨⁠折を減らす効果が確認されています。何歳から始めても、始めた時点から先の骨⁠折を減らすことが目的になります。ご自身の状態に合う方⁠法を、主治医とご相談ください。

Q. 家族が足の付け根を骨⁠折して入院しました。今、何をすればよいですか?

骨⁠折そのものの治療は病院にお任せして大丈夫です。ご家族にお願いしたいのは、「骨粗鬆症の治療は始まりますか」と一度たずねていただくことです。骨⁠折の治療と骨粗鬆症の治療は別のもので、後者が抜けたまま退院してしまうことが少なくありません。退院後にどこで骨の治療を続けるかも、入院中に確認しておかれるとよいと思います。

Q. この調査には、施設に入っている人も含まれていますか?

含まれていません。国民生活基礎調査は世帯を訪ねて調べる調査なので、数字はご自宅で介護を受けている方についてのものです。施設に入所している方まで含めると、割合は変わる可能性があります。

Q. 男性でも同じですか?

はい。骨粗鬆症は女性に多い病気ですが、男性にも起こります。男性のほうがむしろ見落とされやすく、足の付け根を骨⁠折したあとの経過も女性より厳しいことが報告されています。

次に読む

参考文献

  • 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」2026年7月15日公表(Ⅳ 介護の状況・統計表 第12表 現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/index.html
  • 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」(統計表 第13表)
  • 日⁠本骨粗鬆症学会・日⁠本骨代謝学会・骨粗鬆症財団 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版
  • Tsuboi M, et al. Mortality and mobility after hip fracture in Japan: a ten-year follow-up. J Bone Joint Surg Br. 2007;89(4):461-466.(PMID 17463112)
  • Sakuma M, et al. Incidence and outcome of osteoporotic fractures in 2004 in Sado City, Niigata Prefecture, Japan. J Bone Miner Metab. 2008;26(4):373-378.(PMID 18600404)
  • Takusari E, et al. Trends in hip fracture incidence in Japan: estimates based on nationwide hip fracture surveys from 1992 to 2017. JBMR Plus. 2021;5(2):e10428.(PMID 33615101)
  • 内閣府『平成2⁠9⁠年⁠版⁠ ⁠高⁠齢⁠社⁠会⁠白⁠書』(家庭内事故の発生場所/原典:国民生活センター「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故—高齢者編—」平成25年3月)

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。介護や骨⁠折の予防について気になることがあれば、主治医にご相談ください。

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医療監修

加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)

最終更新:2026年8月4日