🫘prevention

納豆パワー — ビタミンKと骨の意外な関係

納豆をよく食べる地域は骨⁠折が少ない?ビタミンK2が骨を守る仕組みと、血液をサラサラにするお薬を飲んでいる方の注意点を解説します。

納豆をよく食べる地域は、骨⁠折が少ない。日⁠本各地の調査で、この傾向が繰り返⁠し⁠確かめられてきました。東日⁠本では昔から食卓に納豆がよく並びます。そして、納豆をたくさん食べる都道府県ほど、大腿骨(太ももの付け根)の骨⁠折が少ない傾向があることがわかっています。

納豆のビタミンK2が骨をどう助けているのか、1日どのくらい食べればよいのか、そして血液をサラサラにするお薬を飲んでいる方⁠への注意を順にお伝えします。

1

このページでわかること

  • 「納豆ベルト」と呼ばれる、納豆と骨⁠折の地域差の話がわかります
  • ビタミンKが骨の中でどんな役割を果たしているかがわかります
  • 納豆のビタミンK2(MK-7)が特別な理由がわかります
  • 1日にどのくらい食べればよいか目安がわかります
  • 血液をサラサラにするお薬を飲んでいる方の大切な注意事項がわかります
  • 納豆が苦手な方の代わりの食品がわかります
2

「納豆ベルト」の不思議 — 食べる地域ほど骨⁠折が少ない

日⁠本全国の大腿骨骨⁠折の発生率を都道府県別に調べた調査(1987年・1992年の全国調査)で、ある傾向が見つかりました。

納豆をよく食べる東日⁠本(関東・東北)では骨⁠折の発生率が低く、納豆をあまり食べない西日⁠本では骨⁠折が多い傾向がありました。いわゆる「納豆ベルト」と呼ばれる現象です。

実際に血液中のビタミンK2(MK-7)濃度を測定した研究では、東日⁠本(東京周辺)の女性は平均5.26ng/mLだったのに対し、西日⁠本(広島周辺)の女性は1.22ng/mLと、大きな差がありました。

骨⁠折にはいろいろな要因が関わっているので、納豆だけで骨⁠折が防げるとは言い切れません。ただ、複数の研究が同じ方⁠向を指しています。

日本地図:東日本の納豆消費と骨折率の関係

日⁠本各地の調査で、納豆をよく食べる地域ほど大腿骨骨⁠折が少ない傾向が繰り返⁠し⁠確認されています。

3

ビタミンKの役割 — カルシウムを骨に「定着させる」職人

骨の栄養の記事でも触れたとおり、骨を強くするにはカルシウムだけでは足りません。カルシウムが血液に乗って骨にたどり着いても、そこにしっかり定着しなければ骨になりません。ビタミンKは、この定着を助ける栄養素です。

骨の中にはオステオカルシンというタンパク質があります。オステオカルシンは、カルシウムをつかまえて骨の材料(ハイドロキシアパタイト)にくっつける「接着剤」のような働きをします。ところが、オステオカルシンが本来の力を発揮するには、ビタミンKの助けが必要です。

ビタミンKがオステオカルシンを活性化して、はじめてカルシウムが骨にしっかり定着します。

ビタミンKがカルシウムを骨に定着させる3ステップ

ビタミンKが足りないと、せっかく摂ったカルシウムが骨にうまく取り込まれません。

4

MK-7とMK-4 — 2種類のビタミンK2

ビタミンKには大きく分けて2つの種類があります。

  • ビタミンK1(フィロキノン):緑の葉野菜に多く含まれます
  • ビタミンK2(メナキノン):発酵食品や動物性食品に含まれます

ビタミンK2の中にもいくつかのタイプがあり、骨の健康で特に注目されているのがMK-4とMK-7の2つです。

MK-4(メナキノン-4) MK-7(メナキノン-7)
主な食品 肉、卵、乳製品 納豆(世界一の含有量)
体内での持続時間 約1時間(短い) 約72時間(長い)
特徴 体内で他のビタミンKから変換される 少量でも長く効果が持続

MK-7は体内にとどまる時間がとても長いのが特徴です。一方、MK-4は体内ですぐに使われてしまうため、持続時間が短いとされています。朝に納豆を1パック食べれば、MK-7は約3日間にわたって体内にとどまります。さすが納豆、体の中でも粘り強さを発揮します。

納豆1日1パックで、骨を支えるビタミンK2を効率よく摂ることができます。

5

納豆はどのくらい食べればよい?

1日1パック(約50g)が目安

納豆1パック(約50g)には、約500μg(マイクログラム)以上のビタミンK2(MK-7)が含まれています。骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインで推奨されているビタミンK摂取量(250〜300μg/日)を十分に上回る量で、朝ごはんの納豆1パックで1日に必要なビタミンKはまかなえます。

納豆1パックでビタミンK十分!

納豆の「骨活パワー」はビタミンKだけじゃない

納豆には、ビタミンK2のほかにも骨に必要な栄養素がまとめて含まれています。

  • タンパク質:1パックで約8g(骨の土台を作るコラーゲンの材料)
  • マグネシウム:骨の構造を支え、ビタミンDの活性化を助けます
  • 亜鉛・銅・マンガン:骨を作る細胞の働きに必要な微量栄養素
  • 葉酸:骨のコラーゲンの質を保つ栄養素
  • 大豆イソフラボン:女性ホルモンに似た働きで、骨の分解を穏やかにするとされています
6

⚠️ 血液をサラサラにするお薬を飲んでいる方⁠へ — 必ずお読みください

血液をサラサラにするお薬のうち、ビタミンKの影響を受けるタイプを飲んでいる方は、納豆を食べてはいけません。

血液をサラサラにするお薬は、心房細動(不整脈の一種)や深⁠部⁠静⁠脈⁠血⁠栓⁠症などの治療で処方されます。そのうち一部のお薬は、ビタミンKの働きを抑えることで効果を発揮しています(以下「ビタミンKの影響を受けるお薬」)。

そのため、納豆のようにビタミンKが非常に多い食品を食べると、お薬の効果が弱まり、血栓ができるリスクが高まる可能性があります。

納豆のMK-7は体内に約72時間とどまるため、1回食べただけでも数日間にわたってお薬の効き目に影響するおそれがあります。

ビタミンKの影響を受けるお薬を服用中の方は、納豆やビタミンK2サプリメントのいずれも避けてください。 判断に迷うときは、必ず主治医にご相談ください。

血液をサラサラにするお薬を飲んでいても骨を守る方⁠法はあります

ビタミンKが摂れなくても、骨を守る方⁠法はたくさんあります。

  • カルシウムとビタミンDをしっかり摂る(骨の栄養の記事をご参照ください)
  • タンパク質を十分に摂り、筋力を保つ
  • 適度な運動で骨に刺激を与える
  • 主治医と相談のうえ、ビタミンKの制限がないタイプのお薬への切⁠り⁠替えを検討する場合もあります

なお、最近の研究では、ビタミンKの影響を受けないタイプのお薬のほうが骨粗鬆症のリスクが低いとする報告もあります。ただし、お薬の変更は必ず主治医と相談してください。

診察室のテーブルで、高齢の女性が医師と笑顔で話している。テーブルには牛乳、焼き鮭、豆腐、ゆで卵、ヨーグルトが並び、椅子の横には歩きやすい靴が置かれている

7

納豆が苦手な方のビタミンK食品

納豆は、においも粘りも好みがはっきり分かれる食べ物です。納豆の味や香りが苦手な方や、食べる習慣がない地域の方は、ビタミンK1が豊富な緑黄色野菜で補えます。

食品 1食あたりの目安量 ビタミンK量(おおよそ)
小松菜 おひたし1皿(80g) 約170μg
ほうれん草 おひたし1皿(80g) 約220μg
ブロッコリー 付け合わせ1皿(60g) 約95μg
春菊 1/3束(60g) 約150μg
ニラ 1/4束(25g) 約45μg

ただし、緑黄色野菜に含まれるのはビタミンK1(フィロキノン)であり、納豆のMK-7に比べると骨への効率は異なるとされています。野菜から摂る場合は、毎日こまめにいろいろな種類を食べてください。

8

研究が示す「納豆と骨」の関係

日⁠本では、納豆と骨の健康に関する研究がいくつも行われています。主なものは次のとおりです。

  • 全国都道府県調査(Kaneki ら):都道府県別の納豆消費量と大腿骨骨⁠折発生率に、統計的に有意な逆相関が確認されました
  • JPOS研究(Journal of Nutrition, 2006年):日⁠本⁠人⁠閉⁠経⁠後⁠女⁠性を対象とした調査で、納豆の摂取量と大腿骨頸部の骨密度変化率に有意な正の関連が認められました
  • 前向きコホート研究(Journal of Nutrition, 2020年):閉⁠経⁠後⁠女⁠性1,417人を中央値15.2年追跡した結果、習慣的な納豆摂取が骨⁠粗⁠鬆⁠症⁠性⁠骨⁠折リスクの低下と関連していました(骨密度を含む交絡因子を調整後)
  • 横越コホート研究(2021年):発酵大豆(納豆)の摂取が、骨密度を介して閉⁠経⁠後⁠女⁠性の歯の喪失を減らす関連が認められました
  • FORMEN研究:高齢男性でも、納豆由来のビタミンK摂取と骨密度の間に正の関連が報告されています

どれも観察研究(食習慣と健康の関連を調べたもの)で、納豆が骨⁠折を防ぐと断定するものではありません。ただ、複数の研究が一貫して同じ方⁠向の結果を示しています。

9

今⁠日からできること

  • 朝ごはんに納豆1パックを加えてみましょう。ごはんと納豆で、ビタミンK2、タンパク質、マグネシウムが一度に摂れます。
  • 納豆が苦手な方は、毎日の食事に緑黄色野菜を1皿足してください。小松菜のおひたし、ほうれん草の味噌汁、ブロッコリーのサラダなど、食べやすい方⁠法でかまいません。
  • ビタミンKの影響を受けるお薬を服用中の方は、まず主治医に骨の健康のためにできることを相談してください。ビタミンK以外にも、骨を守る方⁠法はたくさんあります。
  • カルシウムとビタミンDも忘れずに。ビタミンKはカルシウムを骨に定着させますが、カルシウム自体が足りなければ効果は出にくくなります。骨の栄養の記事も合わせてお読みください。
10

よくある質問

Q. 納豆は朝食べるのと夜⁠食べるのとでは、違いがありますか?

特にどちらがよいという科学的な根拠はありません。MK-7は体内に長くとどまるため、いつ食べても効果は変わらないと考えられています。毎⁠日⁠続けることのほうが大事なので、ご自身の生活リズムに合わせて、食べやすいタイミングでお召し上がりください。

Q. ひきわり納豆と粒納豆では、栄養に差がありますか?

ひきわり納豆は大豆の表面積が大きくなるため、発酵がより進みやすく、ビタミンK2がやや多い傾向があるとされています。ただし、粒納豆でも十分な量のビタミンK2が含まれていますので、お好みで選んでいただいて問題ありません。

Q. 納豆のサプリメント(MK-7サプリ)でも同じ効果がありますか?

MK-7を含むサプリメントも市販されています。ただし、納豆にはビタミンK2以外にもタンパク質、マグネシウム、イソフラボンなど複数の骨によい栄養素が含まれています。まずは食品から摂ることを基本とし、サプリメントの使用については主治医や薬剤師にご相談ください。

Q. ビタミンKの影響を受けるお薬を飲んでいますが、少量の納豆なら大丈夫ですか?

いいえ、少量でもお控えください。納豆に含まれるMK-7は体内に約72時間とどまるため、少量でもお薬の効果に影響する可能性があります。納豆以外のビタミンK食品(緑黄色野菜など)についても、急に食べる量を増やしたり減らしたりせず、毎日ほぼ一定量にするよう主治医から指導されていることが多いです。不安な点は必ず主治医にご確認ください。

11

参考文献

  • 日⁠本骨粗鬆症学会 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版
  • 厚生労働省「日⁠本人の食事摂取基準(2020年版・2025年版)」
  • Kaneki M, et al. Japanese fermented soybean food as the major determinant of the large geographic difference in circulating levels of vitamin K2. Nutrition. 2001;17(4):315-21.
  • Ikeda Y, et al. Intake of fermented soybeans, natto, is associated with reduced bone loss in postmenopausal women: Japanese Population-Based Osteoporosis (JPOS) Study. J Nutr. 2006;136(5):1323-8.
  • Kojima A, et al. Natto intake is inversely associated with osteoporotic fracture risk in postmenopausal Japanese women. J Nutr. 2020;150(3):599-605.
  • 文部科学省「日⁠本食品標準成分表2020年版(八訂)」

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。

)}