「ビタミンDは足りていますか?」と聞かれたら、多くの方は「たぶん大丈夫」と思われるのではないでしょうか。ところが、2023年に行われた大規模調査では、日本人の約98%がビタミンDの充足レベルに達していないという結果が報告されています。ビタミンDは、カルシウムを腸から吸収するために欠かせない栄養素です。いくらカルシウムを摂っても、ビタミンDが足りなければ骨には届きにくいのです。この記事では、なぜ日本人にビタミンD不足が多いのか、どうすれば補えるのかをわかりやすくお伝えします。
日本人の多くがビタミンD不足。なぜ不足しやすいのか、日光浴と食事で補う方法、処方薬との違いを解説します。
「ビタミンDは足りていますか?」と聞かれたら、多くの方は「たぶん大丈夫」と思われるのではないでしょうか。ところが、2023年に行われた大規模調査では、日本人の約98%がビタミンDの充足レベルに達していないという結果が報告されています。ビタミンDは、カルシウムを腸から吸収するために欠かせない栄養素です。いくらカルシウムを摂っても、ビタミンDが足りなければ骨には届きにくいのです。この記事では、なぜ日本人にビタミンD不足が多いのか、どうすれば補えるのかをわかりやすくお伝えします。
日本は世界的に見ても、ビタミンD不足になりやすい条件がそろっている国です。その理由をひとつずつ見てみましょう。

日本では、日焼け止め・日傘・長袖など、紫外線を避ける習慣が広く根づいています。美白への意識は素晴らしいことですが、ビタミンDは皮膚に紫外線B(UVB)が当たることで体内で作られるため、完全に紫外線を遮ると合成が難しくなります。SPF30以上の日焼け止めは、UVBの95%以上をカットするとされています。
日本は北緯26度(沖縄)から北緯45度(北海道)にまたがっています。東京以北では、冬場のUVBがとても弱く、日光浴だけでは十分なビタミンDを作ることが難しくなります。血液中のビタミンD濃度は、夏に最も高く、2〜3月に最も低くなる傾向があり、冬と夏で平均10 ng/mL程度の差が出ることもあります。
高齢になると外出の機会が減りがちです。特に冬場は寒さもあり、屋内で過ごす時間が長くなります。窓ガラスはUVBを通さないため、室内で日が当たっていても、ビタミンDは作られません。車の窓越しの日光も同様です。
皮膚でビタミンDを作る力は、年齢とともに低下します。70歳の方では、20歳のときの約4分の1程度にまで低下するとされています。つまり、同じだけ日に当たっても、若い方と同じ量は作れないのです。
日本人のビタミンD不足は、紫外線を避ける文化・北に位置する緯度・室内中心の生活・加齢の4つが重なった結果と考えられています。
ビタミンDを体内で作るために必要な日光浴の時間は、季節や地域によって大きく異なります。以下はおおよその目安です。

| 季節 | 東京(北緯35度) | 大阪(北緯34度) | 札幌(北緯43度) |
|---|---|---|---|
| 夏(6〜8月) | 5〜15分 | 5〜15分 | 10〜20分 |
| 春・秋(3〜5月、9〜11月) | 15〜30分 | 15〜30分 | 20〜40分 |
| 冬(12〜2月) | 20〜40分 | 20〜40分 | 合成が非常に困難 |
※顔と手(または両腕)を露出した場合の目安です。曇りの日は1.5〜2倍の時間が必要になります。
ビタミンD合成に最も効果的なのは、午前10時〜午後2時ごろです。朝夕はUVBが弱く、効率が下がります。
日光浴は「焼く」ためではなく、「浴びる」ためです。15分程度のお散歩でも、ビタミンD合成の助けになります。
ビタミンDは、魚ときのこに多く含まれています。日本の食卓になじみやすい食品ばかりですので、意識して取り入れてみましょう。

| 食品 | 1食あたりの目安量 | ビタミンD量(おおよそ) |
|---|---|---|
| 鮭(焼き) | 1切れ(80〜85g) | 約23μg(約920 IU) |
| さんま(焼き) | 1尾(100g) | 約10μg(約400 IU) |
| いわし(焼き) | 1尾(100g) | 約7.5μg(約300 IU) |
| しらす干し | 大さじ2杯(10g) | 約6μg(約240 IU) |
| マグロ缶詰(水煮) | 小1缶(85g) | 約4μg(約154 IU) |
| 卵 | 1個(卵黄) | 約1μg(約44 IU) |
きのこ類の中でも、乾燥きくらげは100gあたり約110μg(約4,400 IU)と、ビタミンD含有量がずば抜けて高い食品です。少量でも十分な量が摂れます。
| きのこ | 100gあたりのビタミンD量(おおよそ) | 日常の使い方 |
|---|---|---|
| きくらげ(乾燥) | 約110μg(約4,400 IU) | 中華炒め、スープ、酢の物 |
| 干ししいたけ(天日干し) | 約17μg(約700 IU) | 煮物、味噌汁のだし |
| まいたけ | 約7.5μg(約300 IU) | 天ぷら、炒め物、味噌汁 |
| しめじ | 約1.5μg(約60 IU) | 日常的な味噌汁の具 |
きのこの豆知識: 市販の干ししいたけは機械乾燥のものが多く、ビタミンDが少ないことがあります。調理の前に30分〜1時間ほど天日に干すだけで、ビタミンD量が大幅に増えるとされています。まいたけやしめじも同様です。
週に2〜3回は魚を食卓に。きのこ類も味噌汁や炒め物に加えると、自然にビタミンDが摂れます。カルシウムとの組み合わせも意識してみましょう。
| 基準 | 推奨量 | 目的 |
|---|---|---|
| 日本人の食事摂取基準(2025年版) | 9.0μg/日(360 IU) | 欠乏症の予防 |
| 日本骨粗鬆症学会 | 10〜20μg/日(400〜800 IU) | 骨折予防の栄養管理 |
| 国際骨粗鬆症財団(IOF) | 20〜25μg/日(800〜1,000 IU) | 骨折予防の最適化 |
日本の基準は国際基準よりも低めに設定されています。骨粗鬆症の予防という観点からは、日本骨粗鬆症学会が推奨する10〜20μg/日(400〜800 IU)を目安にするのがよいとされています。
ビタミンDの耐容上限量(これ以上は摂らないほうがよい量)は、成人で100μg/日(4,000 IU)です。通常の食事と適度な日光浴では、摂りすぎになることはまずありません。食事や日光によるビタミンD中毒は報告されていません。
ただし、サプリメントの過剰摂取には注意が必要です。用量を守って使用しましょう。
ここは特に大切なポイントです。骨粗鬆症の治療で処方される「活性型ビタミンD製剤」と、薬局やドラッグストアで買えるビタミンDサプリメントは、まったく異なるものです。

食事や日光から得たビタミンDは、そのままでは働くことができません。肝臓と腎臓で2段階の変換を受けて、はじめて「活性型」になり、カルシウムの吸収を助けるようになります。
| 段階 | 場所 | 形 |
|---|---|---|
| 食事・日光から | — | ビタミンD₃(非活性型) |
| 第1段階 | 肝臓 | 25(OH)D₃ ← 血液検査で測る値 |
| 第2段階 | 腎臓 | 1,25(OH)₂D₃ ← 活性型(実際に働く形) |
骨粗鬆症の治療では、すでに「活性化された」形のビタミンD製剤が使われます。
| 処方薬名 | 一般名 | 特徴 |
|---|---|---|
| エディロール® | エルデカルシトール | 活性型ビタミンDの改良版。骨折予防効果が高いとされる。日本で承認 |
| アルファロール®・ワンアルファ® | アルファカルシドール | 活性型ビタミンD。腎機能が低下した方にも使用可能 |
処方薬の活性型ビタミンDと、市販のビタミンDサプリメントはまったく別のものです。 処方薬を自己判断でサプリメントに置き換えたり、サプリメントを追加したりしないでください。必ず主治医にご相談ください。
ビタミンDが足りているかどうかは、血液検査で25(OH)D(にじゅうご・ヒドロキシ・ビタミンD)という値を調べることでわかります。
| 判定 | 25(OH)Dの値 |
|---|---|
| 充足 | 30 ng/mL 以上 |
| 不足 | 20〜30 ng/mL |
| 欠乏 | 20 ng/mL 未満 |
検査は一般的な血液検査で行うことができます。気になる方は、次の診察時に主治医に「ビタミンDの検査はできますか?」と聞いてみてください。
Q. ビタミンDのサプリメントは飲んだほうがよいですか?
まずは食事と適度な日光浴を基本にすることが大切です。それでも不足が気になる場合は、市販のビタミンD₃サプリメント(400〜800 IU/日程度)が選択肢になることがあります。ただし、骨粗鬆症の治療で活性型ビタミンD製剤を処方されている方は、市販サプリメントとの併用について必ず主治医にご確認ください。
Q. 日焼けが気になるのですが、日光浴は必要ですか?
「日焼け」になるほど長時間浴びる必要はありません。顔と手に5〜15分程度、日が当たるだけで十分です。紫外線が気になる方は、夏場は木陰で過ごすだけでもある程度のUVBは届きます。どうしても日光浴が難しい場合は、魚やきのこなど食品からの摂取を増やしましょう。
Q. 窓越しの日光でもビタミンDは作られますか?
残念ながら、窓ガラスはビタミンD合成に必要な紫外線B(UVB)を通しません。ビタミンDを作るためには、屋外に出る必要があります。ベランダや庭先での短い日光浴がおすすめです。
Q. 骨粗鬆症の薬(エディロールなど)を飲んでいますが、市販のビタミンDサプリメントも飲んでよいですか?
エディロール(エルデカルシトール)やアルファロール(アルファカルシドール)は「活性型ビタミンD」で、市販サプリメントとは別の成分です。これらを服用中に市販サプリメントを追加すると、カルシウムが上がりすぎるリスクがあります。必ず主治医にご相談ください。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。
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医療監修
加藤裕幸(整形外科医・医籍登録 409723号)
東海大学医学部付属病院/湘陽かしわ台病院
最終更新:2026年3月18日
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