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背骨の圧迫骨⁠折 — つぶれが姿勢を変え、次の骨⁠折を呼ぶ

転ばなくても折れ、痛みがないこともある背骨の圧迫骨⁠折。つぶれた骨がくさびになって姿勢を変え、痛みを長引かせ、次の骨⁠折を呼ぶまでの流れと、痛くないうちにできることを解説します。

骨密度が低いと言われたけれど、どこも痛くないので様子を見ている。そういう方に読んでいただきたい記事です。

いま何も起きていないのは本当です。ただ、背骨の骨⁠折は痛みから始まるとはかぎりません。 そして、折れた瞬間よりも、そのあとのほうが長く続きます。

つぶれた背骨は姿勢を変えます。変わった姿勢は痛みを長引かせ、呼吸や食事にまで影響し、次の骨⁠折を呼びます。その「あと」に何が起こるのかを、順に書いていきます。

この動画はAI音声・映像技術を使用して制作しています。内容は整形外科専門医が監修しています。

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このページでわかること

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背骨の骨⁠折は、転ばなくても起こる

背骨の骨⁠折というと、転んで折れるものだと思われがちです。でも、骨粗鬆症〈こつそしょうしょう〉の背骨の骨⁠折(圧迫骨⁠折)は、はっきりした転倒がなくても起こります。

  • くしゃみをした
  • 重いものを持ち上げた
  • 前かがみで、靴下をはこうとした

そのくらいの動作で、骨がつぶれることがあります。しかも、多くは気づかれないまま過ぎていきます。 「いつの間にか骨⁠折」と呼ばれるのはそのためで、気づけなかったのはあなたの落ち度ではありません。

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痛むときは、こんな痛み方をします

もし痛みが出た場合には、特徴があります。

寝ているときは比較的楽なのに、起⁠き⁠上がろうとした瞬間に強く痛みます。 寝返り、立⁠ち⁠上がり、動きはじめに痛みが集中します。

これは、骨が体重を受け止めきれなくなっているサインです。「腰痛だろう」と様子を見ているうちに、骨⁠折だと分からないまま日が過ぎることも少なくありません。思い当たる痛み方をされている方は、整形外科の受診をご検討ください。

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つぶれは、その場で止まるとは限らない

「折れた」と聞くと、折れた形のまま固まると思われる方が多いのですが、そうとはかぎりません。

つぶれた背骨は、そのあと数週間から数か月かけて、さらにつぶれていくことがあります。 体重は毎日かかり続け、弱った骨はその重みを受け止めきれないので、少しずつ形が変わっていきます。

また、うまく固まらず、骨のなかに隙間が残ったままになることもあります。そうなると動くたびにその部分がわずかに動いて、痛みが長く続きます。「1か月で治ると言われたのに、まだ痛い」という方では、これが背景にあることがあります。

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1つのつぶれが、背骨ぜんたいの形を変える

背骨のつぶれ方には、かたよりがあります。多くは前側が低くつぶれ、うしろ側は高さが残るので、その骨はくさびの形になります。

くさびが1つ入ると、背骨はそのぶん前に傾きます。2つ、3つと増えれば傾きは積み重なり、背中が丸くなって身長が縮みます。

「歳をとったから背が縮んだ」と言われるものの中には、背骨のつぶれが積み重なった結果が含まれています。これは老化ではなく、骨⁠折の跡です。

ご自身の背骨の変化が気になる方は、壁を使って自宅でできる簡単なチェック方⁠法があります。壁立ちテストの記事をご覧ください。

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なぜ姿勢が変わると痛みが続くのか(「低い台」の話)

少し低い台で、長く作業をした日のことを思い出してみてください。

台所の流し台が少し低かった、こたつで書きものをした、畑で草取りをした。最初はなんともないのに、三十分、一時間と経つうちにだんだん腰が重くなり、やがて思わず腰に手を当てて伸びをしたはずです。

あのとき、腰を痛めたわけではありません。少し前かがみの姿勢を、ずっと保っていただけです。体が前に傾くと、倒れないように背中の筋肉が引っぱり続けます。筋肉は動くのは得意ですが、同じ姿勢のまま力を出し続けるのはとても苦手です。あの腰の重さは、筋肉が音を上げていた状態です。

そしてあのときは、伸びをすれば元に戻れました。台から離れれば終わる痛みでした。

背骨がくさびの形につぶれると、あの「低い台」が自分の体のなかにできてしまいます。上半身が前に傾いたまま固定され、背中の筋肉はあの日と同じように引っぱり続けます。ただし今度は、伸びをしても元に戻りません。

骨⁠折そのものが治ったあとも痛みが続く方がいるのは、これが理由のひとつです。痛みの出どころが、折れた骨から、支え続ける筋肉へ移っています。傾いた形そのものが痛みを作り続けているので、湿布を貼ってもなかなか届きません。

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影響は、背中だけにとどまりません

上半身が前に傾いたままだと、ほかにも起こることがあります。

  • 息がしにくくなる。胸が前に閉じるので、肺のふくらむ余地が狭くなります。
  • 食事が進まなくなる。お腹が押され、胃のものがのどへ戻りやすくなり、食欲も落ちてきます。食べられなければ、骨と筋肉の材料も入ってきません。
  • 出かけるのがおっくうになる。姿勢の変化は見た目の変化でもあり、人に会うのが億劫〈おっくう〉になって外出が減り、活動量が落ちます。

背骨のつぶれは、呼吸、食事、歩くこと、人と会うことにまで影響します。

申し上げにくいことがもうひとつあります。背骨の骨⁠折を起こした方では、その後の寿命が短くなる傾向があることが、複数の研究で報告されています。骨が折れたこと自体が命を縮めるのではなく、動けない、食べられない、また転ぶ、といった変化が積み重なった結果だと考えられています(出典は参考文献の節にまとめています)。

最初の1本を止めることに意味があるのは、そのためです。

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そして、傾きそのものが、次の1本を呼ぶ

背骨が前に傾くと、上半身の重みのかかり方が変わります。まっすぐ立っているとき、重みは背骨の真上からまっすぐ下へ伝わりますが、前に傾くと前寄りに、斜めにかかるようになります。増えた負担を受けるのは、すぐ上とすぐ下の背骨です。

もともと弱っている骨に、いままでより強い力が繰り返しかかるので、次の1本が折れやすくなります。

1本目のつぶれが傾きを作り、傾きが2本目を呼ぶ。2本目がさらに傾きを強くして、3本目を呼ぶ。この連鎖を「ドミノ骨⁠折」と呼びます。ゆっくり進むとはかぎらず、何も手を打たないままだと、比較的短い期間のうちに続けて折れていくことも報告されています。

姿勢の崩れは、骨⁠折の結果であると同時に、次の骨⁠折の原因にもなります。この連鎖の止め方は、「骨⁠折の連鎖」を止めるの記事でくわしくお話ししています。

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形は戻りにくい。だから、骨を守る

いちどつぶれて固まった背骨の形が、自然に元どおりへ戻ることはありません。 体のなかにできた「低い台」は、姿勢を意識しても、体操をしても消えません。

手術で、ある程度まで整えられることはあります。つぶれてまもない時期であれば、経皮的椎体形成術〈けいひてきついたいけいせいじゅつ〉という、つぶれた背骨の中を補強して高さを支える方⁠法が選べることがあります。固まって大きく傾いてしまったあとは、背骨を組み直す、体への負担の大きい手術になります。どちらも時期や骨の状態によって受けられるかどうかが変わりますので、気になる方は主治医にたずねてみてください。

それでも、そうなる前に防ぐのがいちばんです。連鎖を止めるためにできるのは、骨そのものを強く保っておくことです。傾きが強くなるほどかかる力も増えるので、その力に耐えられる骨にしておく。まず手をつけられるのはそこです。

背骨の骨粗鬆症の治療は、いま痛いところを治すためというより、次の1本を止めるための中心となる手立てです。そして、1本目が折れる前から始められます。

腰が曲がって元に戻らなくなると、立っているだけで背中の筋肉が引っぱり続けることになり、長く立っていられなくなります。そういうときは、シルバーカーのように体を支えられるものがあると、立つとき、歩くときの負担を減らせます。ただ、まず目指したいのは、こうなる前に骨粗鬆症を防いでおくことです。もし骨⁠折してしまったら、骨粗鬆症の治療も含めて、しっかり治療を受けてください。

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では、今⁠日、何をするか

やることは、多くありません。

  1. まだ骨密度を測っていない方は、測ってください。検査の受け方は骨密度検査(DEXA)の記事にまとめています。
  2. 低いと言われた方は、痛くなくても、主治医に相談してください。
  3. すでに1本折れている方は、骨粗鬆症の治療も含めて、次を止める段階です。「骨⁠折の連鎖」を止めるをご覧ください。

痛みが出るのを待ってから始める必要はありません。背骨の骨⁠折は老化ではなく、防ぐ手立てのある病気です。痛くないうちに手を打てます。

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よくある質問

Q. 痛みがまったくないのに、骨⁠折していることがあるのですか?

あります。骨粗鬆症による背骨の骨⁠折は、痛みを伴わないまま起こることが少なくなく、「いつの間にか骨⁠折」と呼ばれています。レントゲン検査で初めて見つかることもよくあります。気づけないのは珍しいことではありません。

Q. 背が縮んできました。圧迫骨⁠折のサインでしょうか?

身長の低下や背中の丸まりは、背骨のつぶれが背景にあることがあります。ただし、それだけで骨⁠折と判断はできません。自宅でできる目安として壁立ちテストがありますので、気になる結果が出た場合は整形外科でご相談ください。

Q. つぶれた背骨は、手術で元に戻せますか?

自然に元の形へ戻ることはありませんが、つぶれてまもない時期であれば、経皮的椎体形成術という背骨の中を補強する方⁠法が選べることがあります。受けられるかどうかは時期や骨の状態によって変わります。くわしくは圧迫骨⁠折の「セメント手術」をご覧のうえ、主治医にご相談ください。

Q. コルセットや体操で、形は戻りますか?

いちど固まった形そのものは戻りませんが、コルセットには骨⁠折直後の骨を守る役割が、運動には筋力を保ち転倒を防ぐ役割があり、どちらも大切です。くわしくはコルセットとの付き合い方と骨の体操をご覧ください。

Q. すでに1本折れていると言われました。もう手遅れですか?

手遅れではありません。1本目の骨⁠折は、次を止める治療を始めるサインです。骨粗鬆症の治療も含めて、次の骨⁠折を防ぐ段階に進んでください。「骨⁠折の連鎖」を止めるが参考になります。

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参考文献

本文で「背骨の骨⁠折を起こした方では、その後の寿命が短くなる傾向がある」とお伝えした部分の根拠です。骨⁠折そのものが直接の原因というより、動けない・食べられない・また転ぶといった変化の積み重ねによると考えられています。

  • Kado DM, et al. Vertebral fractures and mortality in older women: a prospective study (Study of Osteoporotic Fractures). Arch Intern Med. 1999. PMID: 10371229
  • Center JR, et al. Mortality after all major types of osteoporotic fracture in men and women: an observational study. Lancet. 1999. PMID: 10093980
  • Bliuc D, et al. Mortality risk associated with low-trauma osteoporotic fracture and subsequent fracture in men and women. JAMA. 2009. PMID: 19190316

「ドミノ骨⁠折」(1本の骨⁠折が次の骨⁠折を呼び、短い期間に続きうること)の根拠です。

  • Lindsay R, et al. Risk of new vertebral fracture in the year following a fracture. JAMA. 2001. PMID: 11176842

背中が丸くなった状態(円背〈えんぱい〉)が体に及ぼす影響について。

  • Kado DM, et al. Narrative review: hyperkyphosis in older persons. Ann Intern Med. 2007. PMID: 17785488

その他の参考資料:

  • 日⁠本骨粗鬆症学会・日⁠本骨代謝学会・骨粗鬆症財団 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。背骨の骨⁠折や姿勢の変化について気になることがあれば、主治医にご相談ください。

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