「タンパク質を摂りすぎると、体が酸性になって骨が溶ける」という話を聞いたことはありませんか。これは科学的には否定されている古い考え方です。最近の研究では、タンパク質はむしろ骨を守る栄養素だとわかっています。タンパク質が不足すると筋肉も骨も同時に弱くなり、転んで骨折するリスクが高まります。
「タンパク質で骨が溶ける」は誤解。タンパク質は骨の材料そのもの。筋肉と骨を一緒に守る食事のコツを解説します。
「タンパク質を摂りすぎると、体が酸性になって骨が溶ける」という話を聞いたことはありませんか。これは科学的には否定されている古い考え方です。最近の研究では、タンパク質はむしろ骨を守る栄養素だとわかっています。タンパク質が不足すると筋肉も骨も同時に弱くなり、転んで骨折するリスクが高まります。
かつて、「タンパク質を多く食べると体が酸性に傾き、それを中和するために骨のカルシウムが溶け出す」という仮説(酸-灰仮説)がありました。この考え方は一部の健康メディアで今も紹介されることがあります。
しかし、複数の大規模な研究をまとめた分析(メタアナリシス)で、この仮説は否定されています。
「タンパク質が骨を溶かす」という説は否定されています。適切な量のタンパク質は、骨にとってプラスに働くと考えられています。

オステオサルコペニアは、骨が弱くなる「骨粗鬆症(オステオポローシス)」と、筋肉が衰える「サルコペニア」が同時に起こる状態です。近年注目されています。
筋肉と骨は、同じ原因で弱くなりやすいからです。
全国規模の調査では、サルコペニアやオステオサルコペニアのある方は、そうでない方に比べてタンパク質の摂取量が明らかに少ないと報告されています。
筋肉が弱いと転びやすくなり、骨が弱いと骨折しやすくなります。2つが重なると、転んで骨折するリスクは掛け算のように高まります。

タンパク質は、筋肉と骨の両方を守る栄養素です。
高齢者の骨と筋肉を守るために、国際骨粗鬆症財団(IOF)と欧州骨粗鬆症学会(ESCEO)は、体重1kgあたり1.0〜1.2gのタンパク質を毎日摂ることを推奨しています。体重50kgの方なら、1日50〜60gが目安です。
大規模な研究をまとめた分析では、タンパク質を多く摂っている高齢者は、そうでない方に比べて大腿骨(太ももの付け根)と腰椎(腰の骨)の骨密度が高い傾向がありました。
3食それぞれで20〜25gの良質なタンパク質を摂ることも推奨されています。
高齢になると食欲が落ち、食事の量が減って、タンパク質が足りなくなりがちです。この「加齢性食欲不振」は、栄養不足の大きな原因です。

日本の食卓には、魚や卵などの動物性と、豆腐や納豆などの植物性のタンパク質が、どちらもそろっています。
| 食品 | 1食あたりの目安量 | タンパク質量(おおよそ) | おすすめポイント |
|---|---|---|---|
| 鮭 | 1切れ(80g) | 約18g | ビタミンDも豊富 |
| 鶏むね肉 | 1/3枚(80g) | 約18g | 脂肪が少なくヘルシー |
| 卵 | 1個 | 約6g | 手軽で栄養バランスがよい |
| 木綿豆腐 | 半丁(150g) | 約10g | カルシウムも一緒に摂れる |
| 納豆 | 1パック(50g) | 約8g | ビタミンK2も豊富 |
| 牛乳 | コップ1杯(200ml) | 約7g | カルシウムの吸収率が高い |
| しらす干し | 大さじ2杯(10g) | 約4g | カルシウム・ビタミンDも |
納豆なら、タンパク質に加えてビタミンK2、マグネシウム、葉酸もまとめて摂れます。
朝食: ごはん、味噌汁(豆腐+わかめ)、納豆、卵焼き → タンパク質 約24g(納豆8g+卵6g+豆腐3g+ごはん4g+味噌3g)
昼食: 鮭の塩焼き、小松菜のおひたし、ひじきの煮物、ごはん → タンパク質 約22g(鮭18g+ごはん4g)
おやつ: ヨーグルト(100g)+きなこ少々 → タンパク質 約5g
夕食: 鶏肉と野菜の煮物、冷ややっこ(しらす干しのせ)、ごはん → タンパク質 約25g
1日合計は約76gで、体重50kgの方の目安量を十分に満たせます。

タンパク質を十分に摂り、適度な運動を組み合わせると、筋肉と骨の両方を守る効果が期待できます。
筋肉を動かすと、骨にも刺激が伝わります。
Q. タンパク質のサプリメント(プロテイン)は飲んだほうがよいですか?
まずは食事から摂るのが基本です。毎日の食事で十分なタンパク質が摂れない場合には、プロテインパウダーや栄養補助食品も選択肢のひとつです。ただし、腎臓の機能が低下している方は、タンパク質の摂取量について主治医にご相談ください。
Q. 動物性と植物性、どちらのタンパク質がよいですか?
どちらにも良さがあります。動物性タンパク質(魚・肉・卵)は必須アミノ酸が豊富で、筋肉の材料として優れています。植物性タンパク質(大豆製品)には、イソフラボンやマグネシウムなど骨によい成分も含まれています。両方をバランスよく摂るのが理想とされています。
Q. 年をとると消化が悪くなりますが、タンパク質は大丈夫ですか?
加齢とともに消化吸収の力は落ちてきます。卵、豆腐、魚、ヨーグルトなど柔らかくて消化しやすい食品を選び、よく噛んでゆっくり食べると、体への負担を軽くできます。無理のない範囲で少しずつ増やしていきましょう。
Q. 腎臓が悪いと言われていますが、タンパク質を増やしても大丈夫ですか?
腎臓の機能が低下している方は、タンパク質の摂取量に注意が必要な場合があります。必ず主治医や管理栄養士にご相談のうえ、ご自身に合った量を確認してください。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。
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医療監修
加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)
最終更新:2026年3月18日