「また骨折したらどうしよう」「前のように動けなくなるんじゃないか」「家族に迷惑をかけている」。圧迫骨折のあと、こうした気持ちを口にされる方はたくさんいます。
骨折は心にも影響し、心のつらさは体の回復にも影響します。不安や怖さを感じるのは弱さではありません。骨折を経験した多くの方が、同じ気持ちを抱えています。
圧迫骨折のあとの不安、動く怖さ、落ち込みは自然な反応です。怖さが強まる循環と和らぐ循環、小さな一歩の例、家族への頼み方、2週間続いたら相談する目安をまとめました。
「また骨折したらどうしよう」「前のように動けなくなるんじゃないか」「家族に迷惑をかけている」。圧迫骨折のあと、こうした気持ちを口にされる方はたくさんいます。
骨折は心にも影響し、心のつらさは体の回復にも影響します。不安や怖さを感じるのは弱さではありません。骨折を経験した多くの方が、同じ気持ちを抱えています。
圧迫骨折を経験した方の多くが、次のような気持ちを感じています。どれも、骨折に対する自然な反応です。
背骨の骨折では、痛みや動きにくさが数か月から年単位で続くことがあります。脚の付け根(大腿骨)の骨折と比べた研究では、背骨を折った方のほうが、痛みや活力、気持ちの面の暮らしにくさが大きく残っていました。圧迫骨折を経験した方への聞き取り調査でも、目立ったのは「動くのが怖い」と「自分のことを自分でできなくなった」という気持ちでした。
つらさを感じること自体は問題ではありません。問題になるのは、そのつらさを一人で抱えて、動けなくなってしまうことです。
骨折のあとに「動くのが怖い」と感じることを、医学ではキネシオフォビア(運動恐怖症)と呼びます。骨折を経験した方にとても多い反応です。
怖いと感じるのは自然なことです。ただ、怖さから動かなくなると、筋力とバランスが落ちて転びやすくなり、骨もさらに弱くなります(負のスパイラル)。小さく動いて「できた」を重ねると、循環は逆向きに回り始めます。
| 怖さが強まる循環 | 怖さが和らぐ循環 | |
|---|---|---|
| 1 | 怖いので動かない | 怖いけれど、小さく動いてみる |
| 2 | 筋力とバランスが落ちる | 「できた」という手応えが残る |
| 3 | ふらつきやすく、疲れやすくなる | 次の一歩が少し楽になる |
| 4 | 「やっぱり動くと危ない」と感じる | 怖さが少しずつ小さくなる |
| 5 | ますます動かなくなる | 動ける範囲が広がる |
ひとつ上の段が「怖いけれど、できそう」と思えたら進みます。進めない日があっても、前の段に戻れば大丈夫です。
| 段 | 例 | 一緒にいると心強い人 |
|---|---|---|
| 1 | 家の中で、トイレと食卓のあいだを歩く | 家族 |
| 2 | 玄関で靴を履いて、ドアの外に出る | 家族 |
| 3 | ポストやごみ置き場まで歩く | 家族・一人で |
| 4 | 近所のベンチまで歩いて、座って休む | 一人で |
| 5 | 近くの店で軽い買い物をする | 一人で・カートを使って |
「怖いけど、やってみよう」と思えたら、それで十分です。完璧を目指す必要はありません。
圧迫骨折は、体の見た目にも変化をもたらすことがあります。これは心理的にとてもつらいことです。
背骨がつぶれると身長が低くなります。骨折が重なると、背中が丸くなることもあります(円背)。
体の変化は現実として受け止めつつ、工夫できることがあります。リハビリで背中の筋肉を鍛えると、円背の進行を遅らせることが期待できます。服は、Aラインのトップスや前開きのシャツ、ウエストがゴムのパンツが体型の変化に合わせやすく、着替えも楽です。
体の形が変わっても、あなたの価値は変わりません。言葉では簡単でも、そう思えるまでには時間がかかります。焦らなくてかまいません。
「お腹が出てきた」と感じたら、太ったのではなく、背骨の変化による体型の変化かもしれません。主治医に背骨の状態を確認してもらいましょう。
「迷惑をかけたくない」という気持ちが強い方は少なくありません。トイレや入浴、着替えに助けが要ると、「申し訳ない」「情けない」と感じるのは自然なことです。
| 「何でもいいから手伝って」の代わりに | 理由 |
|---|---|
| 「靴下を履くのを手伝ってもらえますか」 | 前かがみは、骨折した背骨に負担がかかる動きです |
| 「上の棚のお皿を、下の段に移してもらえますか」 | 一度動かしてもらえば、その後は毎日自分で取れます |
| 「買い物の重い物だけ、持ってもらえますか」 | 重い物を持つのも、避けたい動きのひとつです |
| 「散歩に、一回だけ一緒に来てもらえますか」 | 最初の一回に人がいると、次は一人で歩きやすくなります |
この記事をご家族が読んでくださっている場合は、ご家族にできることもぜひご覧ください。
「ありがとう」と「ごめんね」。どちらも大切な言葉ですが、骨折後は「ありがとう」を多めに使ってみてください。言われた側も、手伝ったことを喜んでもらえたと感じられます。
散歩、軽いストレッチ、深呼吸など、痛みの範囲でできることから始めましょう。「できた」という手応えが、次の日も動く気持ちにつながります。
友人や家族との会話を大切にしてください。電話やビデオ通話でも十分です。同じ経験をした方の話を聞くことも力になります。地域の介護予防教室やシニアサークルも、外に出るきっかけになります。
好きなテレビ番組を見る、音楽を聴く、本を読む。できなくなったことを数えるより、今できることをひとつ見つけてください。
痛みの程度、できたこと、気持ちの変化を手帳に一行ずつ書きます。あとで読み返すと「あの頃より良くなっている」とわかり、診察のときにも役立ちます。
寝る前にひと息つく時間を作り、日中はできるだけ明るい場所で過ごしましょう。痛みで眠れない日が続くときは、我慢せずに主治医に相談してください。寝る姿勢と寝具の工夫は背中が痛くて眠れないにまとめています。
次のような状態が2週間以上続く場合は、主治医かかかりつけ医に相談してください。 助けを求めるのは弱さではありません。
骨折後の落ち込みは、適切な対応で良くなることが多いです。痛みが和らぐと、気持ちも楽になることがあります。
「こんなことを整形外科で聞いていいのかな」と思わなくて大丈夫です。心の状態は体の回復に影響するため、主治医にとっても大切な情報です。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 心の変化は自然な反応 | 不安、怖さ、落ち込みは、骨折のあとに多くの方が経験します |
| 動く怖さには小さな一歩 | 安全な動き方を知り、できることを一段ずつ増やすと、怖さは和らいでいきます |
| 体の変化には工夫を | 身長低下や円背があっても、リハビリと服の工夫で暮らしやすくなります |
| 迷惑ではなく、具体的なお願い | 「何を」頼むかがはっきりすると、ご家族も動きやすくなります |
| 2週間続いたら相談 | 落ち込みや不眠が続くときは、主治医かかかりつけ医へ |
回復の途中では、次のような気持ちの変化が起きることがあります。
回復の早さや程度には、個人差があります。
[!warning] お願い 現在処方されているお薬を、自己判断で変えたりやめたりしないでください。気になることがあれば、必ず主治医にご相談ください。
Q. 骨折後に気持ちが落ち込むのは珍しいことですか?
いいえ、珍しいことではありません。背骨を折った方では、気持ちの面にも影響が長く残ることがあると報告されています。痛みが長引くこと、動ける範囲が狭まること、人に頼る場面が増えることが重なるためです。つらい気持ちが続く場合は、主治医に相談してください。
Q. 家族に「気をつけて」と言われるたびに、怖くなってしまいます。
ご家族は心配してそう言っています。ただ、「気をつけて」だけでは何に気をつければいいかがわからず、怖さだけが残ります。避けたい動き(前かがみ、ひねる動き、重い物を持つこと)を主治医に確かめて、ご家族にも伝えてください。避ける動きがはっきりすると、それ以外は安心して動けます。
Q. 怖くて外に出なくなりました。このままでもいいでしょうか?
痛みが強い時期は、無理に外に出なくてかまいません。ただ、家にこもる期間が長くなると、筋力とバランスが落ちて、外に出ることがますます怖くなります。家の中を歩くことから始めて、「小さな一歩の例」の段を一つずつ上がってみてください。一人で難しいときは、リハビリを受けられないか主治医に相談しましょう。
Q. 家族にどう伝えればいいかわかりません。
「痛い」「つらい」と言葉にするのが難しければ、この記事を見せるのもひとつの方法です。「頼み方の例」の表のように、してほしいことを一つに絞ってお願いすると、ご家族も動きやすくなります。
Q. 骨折前の趣味(ゴルフ、旅行など)は、もうできませんか?
骨折の程度と回復の具合によりますが、多くの趣味は時間をかけて段階的に再開できます。「回復したら○○をやりたい」という目標があると、気持ちの支えになります。主治医に「将来○○をしたいのですが」と相談してみてください。
Q. 年をとったから落ち込むのは仕方がない?
そんなことはありません。年齢に関係なく、つらい気持ちは適切な対応で良くなります。「年だから」と諦める必要はありません。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。心の状態が気になる方は、主治医やかかりつけ医にご相談ください。
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医療監修
加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)
最終更新:2026年10月27日