圧迫骨折後の日常生活で避けるべき3つの動作と、起き上がり・トイレ・入浴・着替えの安全な方法をわかりやすく解説します。
目次: 避けるべき動き | 起き上がり方 | 座り方と立ち上がり方 | 日常動作の工夫 | 寝る姿勢 | 外出と家事 | 便利な道具 | まとめ | よくある質問
圧迫骨折のあと、とくに注意していただきたい動きが3つあります。
背骨の前側に強い力がかかり、骨折した部分がさらにつぶれる原因になります。
こんな動作が危険です。
代わりにこうします。
背骨をねじる力が加わると、骨折部に負担がかかります。
こんな動作が危険です。
代わりにこうします。
背骨に強い荷重がかかり、骨折部がさらにつぶれるおそれがあります。
こんな動作が危険です。
代わりにこうします。
「気をつけなければ」と思うあまり、まったく動かなくなる方がいらっしゃいます。でも、動かないでいると筋力が落ち、骨はさらに弱くなります。 避ける動きだけを避けて、ほかは安全な範囲で体を動かしてください。
外来でいちばん多くいただく質問のひとつです。骨がつぶれた形のまま固まるまでには時間がかかり、そのあいだは3つの動きを避けていただきます。時期ごとの目安は次のとおりです。
| 時期 | 痛みの様子 | 動き方の目安 |
|---|---|---|
| 骨折から2週間ごろまで | 痛みが強い | 3つの動きは避ける。起き上がりはログロール。トイレや食事など、身の回りのことは続ける |
| 2週間〜3か月ごろ | 少しずつ和らぐ | 散歩を短い距離から少しずつ伸ばす。3つの動きは引き続き避ける |
| 3か月ごろから | 落ち着いてくる | 主治医と相談しながら、家事や少し重い物を持つ動作を少しずつ戻す |
時期はあくまで目安で、骨の固まり方には個人差があります。「もう普段どおりで大丈夫」を決めるのは主治医です。回復の時期ごとの過ごし方は圧迫骨折の回復の見通しにまとめています。
[!warning] こんなときは、すぐに連絡してください
- 足に力が入らなくなった、歩けなくなった
- 足のしびれが急に強くなった
- 尿が出にくい、または漏れてしまう
- 痛みが急に強くなった
動き方の工夫で様子をみる症状ではありません。主治医または救急外来に連絡してください。
朝起きるとき、腹筋を使って「よいしょ」と起き上がると、背骨に大きな負担がかかります。代わりに、丸太のように転がる「ログロール法」を使います。
腹筋では起き上がらず、横向きになってから腕の力で体を起こします。寝るときはこの逆の手順です。
ご家族が手を貸すとき、つい両腕や首の後ろを持って引っぱり起こしたくなります。これは背骨を一気に曲げる動きになるので避けていただきます。
ログロールは、痛みがある朝にいきなり試すとうまくいかないことがあります。入院中であれば看護師やリハビリのスタッフに一度見てもらい、自宅では痛みの少ない時間帯に何度か練習しておくと、朝の起き上がりがずっと楽になります。退院前に、自宅のベッドの高さと、起き上がる側に手をつける場所があるかを確かめておくと安心です。
「ドスン」と座らないでください。 勢いよく座ると背骨に衝撃が加わり、骨折が悪化するおそれがあります。
畳の生活が中心の方は、床からの立ち上がりが課題になります。
浴室は滑りやすく、圧迫骨折後にもっとも注意が必要な場所のひとつです。
退院の前後に、ご家族と一緒に家の中を一回りしてみてください。全部そろえる必要はありません。当てはまらない所から一つずつ直していきます。
| 場所 | 確かめること |
|---|---|
| 寝室 | ベッドは膝くらいの高さか。起き上がる側に手をつける物があるか |
| トイレ | 便座は低すぎないか。立ち上がるときにつかまる所があるか |
| 浴室・脱衣所 | シャワーチェアと滑り止めマットがあるか。座って着替えられる椅子があるか |
| 台所 | よく使う鍋や食器が腰の高さにあるか。下の棚にしまい込んでいないか |
| 玄関 | 座って靴を履ける台があるか。長い柄の靴べらがあるか |
| 通り道 | 床にコードや物が置かれていないか。夜のトイレまでの足元が明るいか |
寝ている時間は長いので、寝る姿勢で背骨への負担がかなり変わります。夜になると背中が痛んで眠れない方は、こちらの動画もご覧ください。
痛みで寝つけない場合は、無理に横にならず、リクライニングチェアなどで楽な姿勢を見つけることもひとつの方法です。痛みが続くようなら、我慢せずに主治医に相談してください。寝る前の支度・寝具の選び方・夜中のトイレまでの道づくりは背中が痛くて眠れないにまとめています。
圧迫骨折後の生活を楽にしてくれる道具があります。多くは介護用品店やネットで購入できます。
| 道具 | 用途 | 目安の価格 |
|---|---|---|
| リーチャー(マジックハンド) | 床のものを拾う、高い場所のものを取る | 1,000〜2,000円 |
| ソックスエイド | 前かがみにならずに靴下を履く | 1,000〜1,500円 |
| 長い柄の靴べら | 立ったまま靴を履く | 500〜1,500円 |
| 補高便座 | トイレの座面を高くする | 3,000〜8,000円 |
| シャワーチェア | 座って体を洗う | 3,000〜15,000円 |
| 浴槽用手すり | 浴槽の出入りを安全にする | 5,000〜15,000円 |
| 滑り止めマット | 浴室の転倒予防 | 1,000〜3,000円 |
| ベッド用サイドレール | ベッドからの転落防止・起き上がりの補助 | 3,000〜10,000円 |
マジックハンドとソックスエイドは、使い始めると「もっと早く買えばよかった」とおっしゃる方が多い道具です。
要支援1・2または要介護1〜5の認定を受けている方は、介護保険の補助を使って家を整えることができます。費用の7〜9割が支給され、ご本人の負担は所得に応じて1〜3割です。
| 補助 | 主な対象 | 支給の上限 |
|---|---|---|
| 住宅改修 | 手すりの取り付け、段差の解消、和式から洋式への便器の取り替えなど | 20万円(原則として一人1回まで) |
| 特定福祉用具の購入 | 補高便座などの腰掛便座、シャワーチェア・浴槽用手すり・浴槽台などの入浴補助用具 | 1年度(4月〜翌年3月)で10万円 |
工事や購入の前に、ケアマネジャーか市区町村の介護保険の窓口に相談してください。事前の申請が必要なものがあり、先に買ってしまうと対象にならないことがあります。認定をまだ受けていない方は、地域包括支援センターが相談先です。
次の診察で、日常生活について聞いてみてはいかがでしょうか。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 3つのNG動作 | 前かがみ、ひねり、重いものを持つ。この3つを避けると、骨折が悪化するおそれが大きく下がります |
| 起き上がりはログロール | 腹筋で起き上がらず、横向きに転がってから腕で起きる |
| 座るときはゆっくり | ドスンと座らない。ひじ掛けや手すりを使って静かに腰を下ろす |
| 道具を使う | リーチャー、ソックスエイド、シャワーチェアなどで前かがみを減らす |
| 動かないのもリスク | 安全な範囲で体を動かすと、回復と次の骨折の予防に役立ちます |
[!warning] お願い 現在処方されているお薬を、自己判断で変えたりやめたりしないでください。気になることがあれば、必ず主治医にご相談ください。
Q. 散歩はしてもいいですか?
はい、痛みが許す範囲での散歩はおすすめです。歩くと骨に適度な負荷がかかり、筋力も保てます。ただし、痛みが強い急性期は無理をせず、主治医に相談しながら少しずつ距離を伸ばしていきましょう。
Q. 孫を抱っこしたいのですが…
立った状態でお孫さんを持ち上げる動作は背骨に大きな負担がかかるため、骨が十分に回復するまでは避けてください。座った状態で膝の上に乗せてもらう形なら、背骨への負担は少なくて済みます。
Q. 布団からベッドに変えたほうがいいですか?
可能であれば、ベッドへの変更をお勧めします。床から立ち上がる動作は背骨にも脚にも大きな負担がかかります。介護保険の認定を受けている方は、電動ベッドのレンタルが可能な場合もあります。
Q. 温泉や銭湯には行けますか?
骨折の急性期(痛みが強い時期)は避けてください。痛みが落ち着いてきたら、主治医に確認のうえ入浴は可能ですが、滑りやすい床、段差の多い浴場、長湯による立ちくらみにはとくに注意してください。手すりのある施設を選び、できれば付き添いの方と一緒に行きましょう。
Q. 旅行はいつから行けますか?
骨折の状態や回復の程度によりますが、一般的にはコルセットが外れ、日常生活に支障がなくなってからが目安です。長時間の移動は腰に負担がかかるので、休憩をこまめに入れた計画にしてください。飛行機の利用については主治医にご確認ください。
Q. コルセットを着けていれば、前かがみをしても大丈夫ですか?
コルセットは背骨の動きを小さくする助けになりますが、前かがみの負担をなくすものではありません。コルセットを着けている間も、3つの動きは避けてください。着け方と外す時期はコルセットとの付き合い方にまとめています。
Q. 寝返りはしてもいいですか?
はい。寝返りを我慢して同じ姿勢で固まっているほうが、体はつらくなります。膝を立て、肩と腰を一緒に動かして、丸太のように転がるのがコツです。起き上がるときのログロールと同じ動き方です。
Q. 階段はどうすればいいですか?
手すりを持って、一段ずつ足をそろえながら上り下りします。痛みが強い時期は、寝室やトイレを1階にまとめて、階段を使う回数そのものを減らすのもひとつの方法です。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。日常生活の工夫について気になることがあれば、主治医やリハビリスタッフにご相談ください。
医療監修
加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)
最終更新:2026年10月27日