骨粗鬆症と言われたら、次の診察で聞きたい5つの質問と、持っていく1枚のメモ(印刷用PDFつき)。先生の答えの意味と、診察のあとにすることも解説します。
診察室で思い出そうとすると、出てこないものです。そして、たいてい会計の列に並んだころに思い出します。書いておけば、それで済みます。下の表を印刷するか、手書きで写して、空欄を埋めてみてください。全部埋まらなくても構いません。わからない欄は「わからない」と書いておけば、それも先生への情報になります。
| 書くこと | ヒント | 記入欄 |
|---|---|---|
| 1. 今までの検査結果 | 検診の用紙や以前の結果はそのまま持参。測った年・場所・方法(手/かかと/腰と太ももの付け根)を書いておくと話が早い | |
| 2. 自分の骨折歴 | 大人になってから、転んで・しりもちをついて折れたことは? どの骨を・何歳のとき | |
| 3. 家族の骨折歴 | 親・きょうだい:どの骨を・何歳のとき・どのくらいの力で(聞き方はこちら) | |
| 4. ほかの科の治療や病気 | かかっている科と病名。ステロイドの治療を受けている(いた)か。女性は閉経の年齢、卵巣の手術の有無 | |
| 5. 若いころの身長と今の身長 | 20〜25歳ごろのいちばん高かった身長と、最近の健康診断の身長 | cm → cm |
| 聞きたいこと | 下の5つの質問のうち、自分に当てはまるもの。ほかに気になること |
1〜5は、どれも検査の数値には写らないものです。骨密度検査が「今の骨の写真」だとすると、このメモは「写真の外側」を先生に見せるものです。
検診の用紙にある数字と、医療機関で受ける骨密度検査(DEXA検査)の数字は、同じ「骨密度」でも測り方が違います。自治体や職場の検診では、手やかかとで測る簡易的な方法(MD法・QUS法)が使われることがあり、これは「ふるい分け」のための検査です。正確な診断には、医療機関で腰の骨(腰椎)と太ももの付け根の骨(大腿骨近位部)を測るDEXA検査が推奨されています。
だから、最初に「どこで、どうやって測ったか」を確かめておくと、そのあとの説明がすべて聞き取りやすくなります。
| 先生の答え(例) | 意味 | そのあとに |
|---|---|---|
| 「検診は手(かかと)の簡易な方法です。今日は腰と太ももの付け根で測り直しましょう」 | 測り方が違うので、検診の数字と今日の数字は直接は比べない | 今日の結果用紙が、これから「比べる基準」になります |
| 「腰は正常ですが、太ももの付け根は低めです」 | 部位で数値が違うのはめずらしくない。主治医は低いほうの値をもとに判断する | 「どちらの値を見ればよいですか」と聞いてみる |
| 「腰の数値は、年齢による骨の変形で高めに出ているかもしれません」 | ご高齢の方では、腰椎の値だけが実際より高く見えることがある | 太ももの付け根の値を一緒に見る |
| 「YAM値は○%です」「Tスコアは○です」 | どちらも「若い人の平均と比べた値」で、意味は同じ | 数値の読み方は骨密度検査(DEXA)のすべてで |
検診の用紙と、医療機関の結果用紙は、両方とも残しておいてください。 測り方が違うので数字そのものは比べられませんが、「いつ・どこで・何で測ったか」の記録として役に立ちます。
骨粗鬆症は痛みのない病気です。背骨の圧迫骨折も、はっきりした痛みがないまま起きていることが多く、「折れたことはありません」とおっしゃる方のレントゲンに古い骨折が見つかることは、めずらしくありません。
この質問が大切な理由は2つあります。背骨や太ももの付け根に軽い力で起きた骨折があれば、骨密度の数値によらず骨粗鬆症と診断されること。そして、背骨の骨折が1つあると、次の背骨の骨折はおよそ5倍起きやすくなることです。この質問の答えしだいで、診断とこれからの方針が変わることがあります。
手がかりは身長です。若いころのいちばん高かった身長から2cm以上縮んでいたら、背骨の骨折が隠れている可能性があります。メモの5番目の欄が、ここで役に立ちます。背中の丸みが気になる方は、家でできる壁立ちテストも試してみてください。
| 先生の答え(例) | 意味 | そのあとに |
|---|---|---|
| 「背骨のレントゲンを撮って確かめましょう」 | 痛みのない圧迫骨折は、写真でしか確かめられない | 結果を待つ。骨折が見つかっても、それは「今のうちに対策を始める合図」です |
| 「古い骨折が1つあります」 | ここからの目標は「次の背骨の骨折を防ぐこと」に変わる | 治療と生活の相談が始まります。「骨折の連鎖」を止めるも参考に |
| 「骨折はありません。身長の記録を続けましょう」 | 今は隠れた骨折がない。身長が、外から見える数少ない手がかり | 年に1回、同じ時期に身長を測って日付と一緒に残す |
伝え方は簡単です。「若いころは○cm、今は○cmです。背骨の骨折の可能性はありますか」。これだけで、背骨を確かめるきっかけになります。
骨粗鬆症の多くは、閉経と年齢によるものです。でも、ほかの病気や治療が骨を弱くしていることがあり、これを続発性(ぞくはつせい)骨粗鬆症(二次性骨粗鬆症とも呼ばれます)といいます。代表的なものは、関節リウマチ、糖尿病、甲状腺の病気、胃や腸の病気、閉経が早かった方や卵巣の手術、そしてステロイドの治療を長く受けている方です。
むずかしいのは、もとの病気を診ている科と、骨を診る科が別々になりやすいことです。骨の診察では、先生はあなたの「ほかの科」のことを知りません。メモの4番目の欄は、そのためにあります。
| 先生の答え(例) | 意味 | そのあとに |
|---|---|---|
| 「閉経と年齢によるものと考えてよさそうです」 | いちばん多い形。ほかの原因は見当たらない | 治療と生活の相談へ進みます |
| 「ほかの原因がないか、血液検査をしましょう」 | 骨密度の数字だけでは原因はわからない。結果用紙の「Zスコア(同年代と比べた値)」が低いとき、主治医はほかの原因を確かめることがある | 結果が出るまで待つ。原因が見つかれば、その治療で骨が改善することもあります |
| 「○○の治療をしている科にも、骨のことを伝えてください」 | 今日の結果を、もとの病気の科はまだ知らない | 相手の科でも結果用紙を見せる |
| 「骨密度は正常の範囲ですが、糖尿病(ステロイドの治療)があるので注意が必要です」 | 骨密度が正常でも骨折しやすい場合がある。糖尿病では骨の「量」でなく「質」が下がり、数字に表れない | 骨粗鬆症と糖尿病・ステロイドと骨で、ご自身の場合を確かめる |
原因がわかると、骨の守り方も変わります。「ほかの科にかかっている」ことを伝えるのは、先生の見落としを指摘することではなく、先生の手元にない情報を届けることです。
骨密度検査でいちばん大切なのは、前回の自分との比較です。同じ装置で測った数値を並べて、横ばいか、改善か、低下か、その流れを見ていきます。1回の数字だけより、流れを見るほうが確かです。
保険で受ける骨密度検査は、2026年6月から原則として1年に1回になりました。回数が減ったぶん、1回1回の結果がこれまで以上に大切です。
| 先生の答え(例) | 意味 | そのあとに |
|---|---|---|
| 「1年後に、同じ装置で測りましょう」 | 原則の間隔。装置が違うと数値を比べにくいので、同じ所で測る | 日付をカレンダーに書く。結果用紙は必ず残す |
| 「4か月後に測ります」 | 骨粗鬆症の治療を始めてから1年以内、新しく骨折したとき、骨折の危険因子が新しく増えたとき、ステロイドの治療など骨に影響する治療や病気があるときは、4か月に1回まで受けられる | どれに当てはまるかは主治医の判断。聞いてよいことです |
| 「比べるのはBMD値(実測値)です」 | YAM値やTスコアより、骨密度そのものの数字の変化を見る | 用紙のBMDの欄に目を通しておく |
| 「血液検査も一緒にしましょう」 | 骨密度が「今の骨の写真」なら、血液検査(骨代謝マーカー)は「骨の中の今の動きを記した日記」 | くわしくは骨代謝マーカーとは |
「何と比べますか」と聞いておくと、次の検査の日に今日の用紙を持っていく理由が、自分の中にできます。用紙が手元にあれば、先生も比べやすくなります。
食事、運動、転倒の予防といった一般的な話は、記事や動画で学べます。でも「私の場合は」という答えは、主治医にしか出せません。何を避け、何を続けてよいかは、骨の状態と、ほかの病気によって変わるからです。
聞き方のコツは、今していることを具体的に言うことです。「運動はしてよいですか」より、「週に2回、○○をしています。続けてよいですか」のほうが、あなたに合った答えが返ってきます。
| 先生の答え(例) | 意味 | そのあとに |
|---|---|---|
| 「今の運動は、そのまま続けて大丈夫です」 | 適切な運動は骨を強くする。「骨が弱いから動かない」は逆効果になりやすい | 続ける。転倒予防もあわせて |
| 「深い前かがみは避けてください」 | 背骨に圧迫骨折がある方や骨密度がかなり低い方は、背中を丸めて前にかがむ動作で背骨に負担がかかる | 代わりの動き方は骨を強くする運動で |
| 「ジャンプや体をひねる動きは控えましょう」 | 骨折しやすい方は、転倒や骨折につながりやすい動きを避ける | 続けたい運動があれば、種目ごとに聞く |
| 「低血糖のふらつきに気をつけて」 | 糖尿病のある方は、低血糖によるふらつきが転倒につながることがある | 骨粗鬆症と糖尿病の転倒予防の項を |
「気をつけること」だけでなく、「やってよいこと」も聞いてください。できることがはっきりすると、生活が狭くなりません。
「母が骨折したことがあります」。この一言だけでは、あまり情報になりません。親御さんの太ももの付け根の骨折は、骨密度の値とは別に、骨折の起こりやすさに関わることが国際的な研究で示されています。だから、あなたの骨密度の結果がよかったとしても、この情報は消えません。聞いておく価値があります。
改まって聞くのは気が引けるものです。「骨の検査を受けることになって、先生に家族のことを聞かれるの」と前置きすると、自然に話せます。お盆やお正月など、家族が集まる機会でなくても、電話で十分です。
はっきりわからなくても構いません。 「たぶん足の付け根だったと思う」「70代だったはず」という程度でも、メモに書いて先生に伝えてください。わからないことは「わからない」と伝えるのも、立派な情報です。
高齢の方の受診にご家族が付き添うと、先生の説明を一緒に聞ける、聞き逃したことを補える、ご本人が遠慮して聞けないことを代わりに聞ける、といった利点があります。この記事の5つの質問も、ご本人が聞き、ご家族がメモを取ると、診察のあとに「先生は何て言ってた?」とならずに済みます。
| ご本人 | ご家族 | |
|---|---|---|
| 診察の前 | メモの1〜5を埋める | 家族の骨折歴の聞き取りを手伝う |
| 診察中 | 質問を口に出す | 答えをメモに書く。本人が言い忘れたこと(最近つまずきやすい、など)を補う |
| 診察のあと | 用紙とメモを1か所にまとめる | 次の検査の日付を一緒に把握する |
付き添いは「監視」ではありません。ご本人の意思を尊重して、「一緒に聞きに行こうか」という形で。くわしくはご家族にできることの「受診に付き添う」の項をご覧ください。
診察が終わったら、家でしておきたいことが5つあります。
治療を始めることになった方へ。ここからの目標は、骨粗鬆症の治療を続けることです。中身は人によって違いますので、わからないこと、気になることは、そのつど主治医にご相談ください。骨折をきっかけに骨粗鬆症と言われた方は、病院に骨折リエゾンサービスの仕組みがあるかもたずねてみてください。診察で聞きそびれたことを、看護師などのスタッフに相談できることがあります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 持っていくもの | 1枚のメモ。今までの検査結果・自分の骨折歴・家族の骨折歴・ほかの科の治療や病気・若いころと今の身長 |
| 質問1 | 検診はふるい分け、診断は医療機関のDEXA検査。腰と太ももの付け根で違えば、低いほうで判断 |
| 質問2 | 痛みのない背骨の骨折は、診断と方針を変える。身長が手がかり |
| 質問3 | ほかの病気や治療が原因のこともある。科が別々でも、あなたの用紙がつなぐ |
| 質問4 | 比べるのは前回の自分。保険の検査は原則1年に1回(2026年6月〜)。用紙は残す |
| 質問5 | 「私の場合は」は主治医にしか出せない。今していることを具体的に聞く |
| 家族の骨折歴 | どの骨を・何歳のとき・どのくらいの力で。はっきりしなくてよい |
| 診察のあと | 用紙を1か所に、答えをメモに、次の日付をカレンダーに |
Q. 5つ全部を聞く時間がなさそうです。どれを優先すればよいですか?
メモを先生に渡すだけでも、多くは伝わります。そのうえで1つ選ぶなら、あなたの側の情報がないと先生が考えられない質問(身長と骨折歴にかかわる質問2と、ほかの科の病気にかかわる質問3)を先に。質問4と5は、次の診察でも聞けます。
Q. 「骨密度が低め」と言われただけで、「骨粗鬆症」とは言われていません。この質問は使えますか?
使えます。「骨密度が低い」ことと「骨粗鬆症」は、厳密には同じではなく、骨密度と骨折歴の両方から判断されます。だからこそ、質問1(どう測ったか)と質問2(隠れた骨折)が、「低め」の段階でいちばん役に立ちます。
Q. 先生に質問するのは、失礼ではありませんか?
失礼ではありません。質問を準備しておくと、短い診察時間でも大切なことを聞き逃しにくくなります。「こんなこと聞いていいのかな」と思う質問こそ、大切な質問です。先生の側も、あなたの情報があるほうが判断しやすくなります。
Q. 閉経が早かったのですが、関係がありますか?
閉経が早かった方や、手術で卵巣を摘出された方は、骨量の減少が早く始まる可能性があるとされています。年齢の目安よりも、閉経した年齢そのものをメモに書いて、先生に伝えてください。関係があるかどうかは、主治医が判断します。
Q. 検査の費用はどのくらいかかりますか?
保険が使える条件や自己負担の目安は、治療費と保険にまとめています。診察のときに「保険は使えますか」と聞いていただいても構いません。
Q. 男性です。同じ質問でよいですか?
はい。男性の骨粗鬆症は、約半数にほかの病気などの明らかな原因があるとされていますので、とくに質問3が大切です。くわしくは男性の骨粗鬆症をご覧ください。
Q. 家族の骨折歴が、どうしてもわかりません。
それで構いません。「わからない」と伝えれば、先生はほかの情報で判断します。年齢・骨密度・ご自身の骨折歴・ほかの病気など、家族歴がなくても使える情報はたくさんあります。リスクチェックで、ご自身の側の項目を整理しておくと安心です。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。ここに挙げた「先生の答え」は一例であり、実際の説明はお一人おひとりの状態によって異なります。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。
医療監修
加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)
最終更新:2026年10月6日