「私はどのくらい骨折しやすいの?」という問いには、骨密度検査の結果だけでは十分に答えられないことがあります。骨折のしやすさは、骨の強さだけでなく、年齢や生活習慣、ご家族の病歴など、いくつもの要因が重なって決まるからです。そこで作られたのがFRAX(フラックス)という評価ツールです。いくつかの質問に答えると、今後10年間の骨折リスクが数値で出ます。
骨折の確率を数字で見るのは、少し怖いかもしれません。それでも、何もわからないまま不安でいるより、数字を知っているほうがずっと前向きです。
WHOが開発した骨折リスク計算ツール「FRAX」の使い方と結果の見方を、入力項目ひとつひとつ丁寧にご案内します。
「私はどのくらい骨折しやすいの?」という問いには、骨密度検査の結果だけでは十分に答えられないことがあります。骨折のしやすさは、骨の強さだけでなく、年齢や生活習慣、ご家族の病歴など、いくつもの要因が重なって決まるからです。そこで作られたのがFRAX(フラックス)という評価ツールです。いくつかの質問に答えると、今後10年間の骨折リスクが数値で出ます。
骨折の確率を数字で見るのは、少し怖いかもしれません。それでも、何もわからないまま不安でいるより、数字を知っているほうがずっと前向きです。
FRAX(Fracture Risk Assessment Tool)は、WHO(世界保健機関)の協力のもと、英国シェフィールド大学が開発した骨折リスクの計算ツールです。2008年の公開以来、世界中の医療現場で使われています。
今後10年間に骨折が起きる確率(%)を、おひとりおひとりの情報から計算してくれます。
具体的には、次の2つの確率がわかります。
FRAXは「あなたは骨折します」と断言するものではありません。「このくらいの可能性がありますよ」という目安を教えてくれるツールです。
骨密度検査(DEXA検査)は、骨の「今の状態」を知るうえでとても大切な検査です。ただ、骨密度が正常範囲でも骨折する方はいらっしゃいます。
それは、骨折のリスクが骨密度だけで決まるわけではないからです。
FRAXは、こうした骨密度以外の要因もまとめて計算に入れ、リスクを評価します。
たとえるなら、骨密度検査が建物の「壁の厚さ」の検査だとすると、FRAXは「壁の厚さ」に加えて「築年数」「地盤」「周辺環境」もあわせて、建物の安全性を総合的に判断するようなものです。
FRAXには10以上の入力項目がありますが、すべてを埋めなくても計算できます。まずは以下の3つだけで試してみましょう。
| 必須の入力 | 入力の目安 |
|---|---|
| 年齢 | そのまま入力します(40〜90歳が対象です) |
| 性別 | 「女性」または「男性」を選びます |
| BMI | わからなければ下の計算方法をご覧ください |
残りの7つの質問は、わからなければ「いいえ」のままでも計算できます。ただし、「はい」にあてはまる項目があるのに「いいえ」のままだと、リスクが実際より低く出ることがあります。わかる項目だけでも、正直に入力してください。
まずは3項目だけで試してみて、結果の画面を見てみましょう。「こういうものなんだ」とわかったら、次は7つの質問にも答えてみる。そんな進め方でもかまいません。
そのままの年齢を入力します。FRAXは40歳〜90歳の方が対象です。
「女性」か「男性」を選びます。
BMIは「体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)」で求められます。
かんたんな計算例:
身長と体重は、健康診断の結果用紙に載っていることが多いです。最近の健康診断の結果が手元にあれば、BMIが記載されていることもあります。
下の計算ツールで、身長と体重からBMIを計算できます。計算した数値をそのままFRAXに入力してください。
身長と体重を入力すると、BMIが計算されます。FRAXの入力にお使いください。
聞かれていること: 大人になってから、軽い衝撃で骨折したことがあるかどうか。
「はい」にあてはまる例:
「いいえ」でよい例:
「圧迫骨折」はレントゲンで偶然見つかることもあります。主治医から「背骨がつぶれている」と言われたことがあれば、「はい」にあてはまります。
聞かれていること: お父さまかお母さまが、太ももの付け根(股関節)を骨折したことがあるかどうか。
「はい」にあてはまる例:
「いいえ」でよい例:
はっきり覚えていなくても大丈夫です。「母が足の付け根の手術をしたかもしれない」という程度なら、次の診察で主治医に相談してみてください。
聞かれていること: 今現在、喫煙しているかどうか。
聞かれていること: 飲み薬のステロイドを、現在使っている、または過去に3か月以上使ったことがあるかどうか。
「はい」にあてはまる例:
「いいえ」でよい例:
「ステロイド」にもいろいろな形があります。ここで聞かれているのは飲み薬(または注射)のステロイドを3か月以上使った場合です。吸入薬や塗り薬は含みません。お薬手帳を見ながら確認するか、主治医に聞いてみてください。
聞かれていること: 医師から「関節リウマチ」と診断されたことがあるかどうか。
「関節リウマチ」と「変形性関節症」は名前が似ていますが、別の病気です。迷ったら、お薬手帳やかかりつけ医の診療記録で確認してみてください。
聞かれていること: 骨粗鬆症の原因となりうる他の病気があるかどうか。
この項目がいちばんわかりにくいかもしれません。具体的には、以下のような病気が該当します。
| 該当する病気の例 | かんたんな説明 |
|---|---|
| 1型糖尿病 | 若いころから発症するタイプの糖尿病(インスリン注射が必要) |
| 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺ホルモンが出すぎる病気(バセドウ病など) |
| 早期閉経(45歳未満) | 45歳になる前に月経がなくなった |
| 慢性肝疾患 | 肝硬変など、肝臓の慢性的な病気 |
| 炎症性腸疾患 | クローン病、潰瘍性大腸炎 |
迷ったら「いいえ」で大丈夫です。 この項目は、上に挙げた病気をお持ちの方以外は「いいえ」になることがほとんどです。
2型糖尿病(生活習慣に関連するタイプの糖尿病)は、ここでは「いいえ」になります。1型と2型の違いがわからなければ、主治医に確認してみてください。
聞かれていること: 毎日の飲酒量が多めかどうか。
「3単位」とは、純アルコールで約24〜30gです(1単位=8〜10g)。お酒に直すと、おおよそ以下の量です。
| お酒の種類 | 「3単位」にあたる量 |
|---|---|
| ビール(5%) | 中瓶(500ml)1本と少し(約1.2〜1.5本) |
| 日本酒(15%) | 1合と少し(約1.1〜1.4合) |
| ワイン(12%) | グラス2杯と少し(約250〜310ml) |
| 焼酎(25度) | 1合弱(約120〜150ml) |
「毎日ビール1本くらい」という方は「いいえ」で大丈夫です。「3単位以上」はかなり多い量です。
FRAXでは、大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)の骨密度を入力することもできます。
⚠️ 骨密度を入力するときの大切な注意点:
FRAXで使う骨密度は、国際基準(NHANES III)のTスコアです。日本の病院でよく使われる「YAM値」や「YAMベースのTスコア」とは数値の基準が異なります。そのまま入力すると、リスクが実際より高く計算されてしまうことがあります。
おすすめの対応:
骨密度を入力しなくても、FRAXは十分に参考になる結果を出してくれます。無理に入力する必要はありません。
FRAXは、インターネット上で無料で使うことができます。日本語版も用意されています。
FRAX日本語版はこちらから: https://www.fraxplus.org/ja/calculation-tool
「全部正確に入力しなきゃ」と思わなくて大丈夫です。わかるところだけ入力して、まずは一度試してみましょう。気になる結果が出たら、次の診察で主治医と一緒に正確な値を確認すれば十分です。
FRAXの結果は、「10年間の骨折確率(%)」で表示されます。
たとえば、「主要骨粗鬆症骨折の10年確率:15%」と出た場合、「今後10年間に、脊椎・股関節・前腕・肩のいずれかの骨折が起きる確率がおよそ15%」という意味です。
| 主要骨粗鬆症骨折の確率 | 一般的な対応の目安 |
|---|---|
| 15%未満 | 生活習慣の見直しと経過観察が中心 |
| 15%以上 | 薬物治療を含めた対策を主治医と相談 |
15%という目安は、骨密度が「骨量減少」(若い人の平均の70〜80%)の段階にある75歳未満の方に使うものとして、日本のガイドラインで定められてきました(2015年版)。背骨や脚の付け根を骨折したことがある方や、骨密度がもっと低い方は、FRAXの数値に関係なく薬物治療の対象になります。ただし、治療を始めるかどうかは、FRAXの数値だけで決まるものではありません。骨密度、骨折の既往、ほかの病気の状況など、さまざまな要素を総合して主治医が判断します。
FRAXの結果は、「怖い数字」ではありません。
どちらの結果でも、次に何をするかを主治医と決める材料になります。
FRAXの結果を主治医と共有すると、今後の治療方針を一緒に考えるための良い材料になります。
FRAXはとても便利なツールですが、すべてを教えてくれるわけではありません。
FRAXは万能ではありませんが、骨折リスクを数字で示すツールとしては最も広く使われています。主治医はFRAXの結果に加えて、診察や他の検査結果も含めて総合的に判断してくれます。
次の診察で、こんな質問をしてみてはいかがでしょうか。
「数字の意味がわからなくて不安」と思われたら、遠慮なく主治医にお伝えください。先生はその数字の意味を、あなたの状況に合わせて説明してくれます。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| FRAXとは | WHOが支援する骨折リスク計算ツール。今後10年間の骨折確率(%)がわかります |
| なぜ必要か | 骨密度だけでは骨折リスクは判断できません。年齢・家族歴・生活習慣など複数の要因を総合的に評価します |
| 使い方 | まずは年齢・性別・BMIの3項目だけで試せます。骨密度がわからなくても計算できます |
| 結果の目安 | 主要骨粗鬆症骨折の確率15%以上で、薬物治療を含めた対策を主治医と相談 |
| 大切なこと | FRAXの結果は「確率」であり「診断」ではありません。結果を主治医と共有して、今後の方針を一緒に考えましょう |
Q. FRAXは自分で使ってもよいのですか?
はい、FRAXはどなたでも無料で使えるオンラインツールです。ご自身でお試しいただくのは問題ありません。ただし、結果の解釈や治療の判断は、必ず主治医にご相談ください。
Q. 年齢が40歳未満(または90歳以上)でも使えますか?
FRAXの対象年齢は40〜90歳です。この範囲外の方は計算できません。40歳未満の方で骨の健康が心配な場合は、主治医にご相談ください。
Q. 骨密度の値がわからないのですが、使えますか?
はい、骨密度の値がなくても計算できます。骨密度を入力したほうがより正確な結果になりますが、入力しなくても臨床リスク因子だけで計算可能です。
Q. 計算結果が高かった場合、すぐに治療が必要ですか?
FRAXの結果はあくまで「確率」であり、「治療の指示」ではありません。結果が高めであっても、すぐに心配しすぎる必要はありません。主治医に結果をお伝えいただき、今後の方針を一緒に考えていきましょう。
Q. 定期的にFRAXを計算し直したほうがよいですか?
年齢や健康状態が変わると、FRAXの結果も変わります。骨密度検査を受けたタイミングや、生活状況が大きく変わったタイミングで再計算してみると、変化がわかります。
Q. リスクチェック(セルフチェック)とFRAXは何が違いますか?
当サイトのリスクチェックは、「骨粗鬆症になりやすいかどうか」を考えるためのセルフチェックです。FRAXは、それをさらに進めて、骨折が起きる確率を数値(%)で出す医学的なツールです。リスクチェックで気になる項目があった方は、FRAXも試してみると、より具体的な目安が得られます。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。FRAXの結果は骨折リスクの目安であり、診断や治療方針は主治医が総合的に判断します。気になることがあれば、主治医にご相談ください。
医療監修
加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)
最終更新:2026年3月18日