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圧迫骨⁠折の「セメント手術」— BKP・VBSと、「骨が固まる前まで」というタイミング

つぶれた背骨を内側から支え直すBKP・VBS。形を立て直せるのは骨が固まる前まで — 決め手は日数でなく骨の状態です。手術の流れ・リスク・費用・受診の目安まで解説します。

圧迫骨⁠折と言われて、もう何週間もたってしまった。いまさら病院に行っても手遅れではないか、と心配している方⁠へ。

手遅れかどうかは、日数では決まりません。 決めるのは骨がまだ固まっていないかどうかで、それはレントゲンやMRIの画像でしかわかりません。

つぶれた背骨を、体への負担が少ない方⁠法で内側から支え直す手術があります。骨セメントを使うBKP(バルーン椎体形成術)とVBS(椎体ステント留置術)です。ここでは動画の内容に加えて、手術のしくみ、対象になる骨⁠折とならない骨⁠折、入院から退院までの流れ、リスク、費用までをまとめます。

この動画はAI音声・映像技術を使用して制作しています。内容は整形外科専門医が監修しています。

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このページでわかること

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「セメント手術」とは:背骨を内側から支え直す

背骨は、椎体〈ついたい〉という骨のブロックが積み重なってできています。骨粗鬆症〈こつそしょうしょう〉でもろくなった椎体は、ポキッと折れるのではなく、上下からの力でつぶれるように壊れます。これが圧迫骨⁠折です。

つぶれた椎体を、背中から通した細い管を使って内側から補強するのが、経皮的椎体形成術〈けいひてきついたいけいせいじゅつ〉と呼ばれる一群の手術です。傷は針あとほどの大きさで、大きく切ることはありません。代表的な方⁠法が3つあります。

  • PVP(経皮的椎体形成術):つぶれた椎体に医療用の骨セメントを直接注入して固める、いちばんシンプルな方⁠法です。痛みを抑える効果が中心で、つぶれた形を戻す力は限られます。
  • BKP(バルーン椎体形成術):椎体の中で小さな風船をふくらませ、つぶれた骨を内側から持ち上げてから、できた空洞に骨セメントを充填します。痛みだけでなく、形を立て直すことをねらった方⁠法です。
  • VBS(椎体ステント留置術):バルーンで持ち上げたあと、ステントと呼ばれる金属の筒を椎体の中に残して支えにする、より新しい方⁠法です。風船を抜くときに高さが少し戻ってしまうというBKPの弱点を、ステントが内側から支えることで補います。

どれも体への負担が少ない手術で、多くの方が手術の翌日には起⁠き⁠上がって歩く練習を始められます。「高齢だから受けられない」と決まっているものではなく、心臓や肺など全身の状態を診たうえで、麻酔の方⁠法も含めて検討されます。

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なぜ「骨が固まる前まで」なのか

骨⁠折した骨は、時間がたつと癒合〈ゆごう〉、つまり固まります。それ自体は治るということなのですが、圧迫骨⁠折ではつぶれた形のまま固まってしまうことがあります。そして、いちど固まった骨を、あとから風船やステントで持ち上げることはできません。粘土が、やわらかいうちは形を直せるのに、固まってしまうと戻らないのと同じです。

そのため、バルーンやステントで形を立て直せるのは、骨がまだ固まっていないあいだだけです。

ただし、誤解してほしくないことが2つあります。

1つ目に、「何週間まで」というカレンダーの線引きはありません。 骨が固まる速さには個人差があり、決め手は経過した日数ではなく、いまの骨の状態です。それはレントゲンやMRIといった画像でしか判断できません。

2つ目に、数ヶ月たっていても、あきらめる必要はありません。 骨がうまく固まらないまま痛みが続いている状態(偽関節〈ぎかんせつ〉と呼ばれます)では、時間がたっていても手術で助けられることがあります。実際、以前は「急性期の骨⁠折」に限られていたVBSの適応は、2025年の改訂で慢性期の痛みが続く骨⁠折にも広がりました。

自分で「もう手遅れだ」と決めてしまわずに、まず画像で確かめてもらってください。

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どんな骨⁠折が対象になるのか

すべての圧迫骨⁠折にセメント手術が必要なわけではありません。圧迫骨⁠折の多くは、コルセットと安静を中心とした保存療法で治ります。手術が検討されるのは、およそ次のような場合です。

  • 保存療法を続けても、痛みが強いまま引かない
  • レントゲンで、つぶれが進んでいる
  • 骨がうまく固まらず、痛みが長引いている(偽関節)

一方で、骨⁠折の「形」によっては、セメント手術だけでは足りないことがあります。椎体の後ろ側の壁が大きく壊れている場合や、つぶれ方が非常に強い場合、骨のぐらつきが大きい場合には、セメントによる補強だけでは支えきれず、ネジとロッドで背骨を固定する手術を組み合わせる、あるいは最初から固定の手術を選ぶことがあります。

どの方⁠法が合うかは、レントゲン・MRI・CTなどの画像で骨⁠折の形と状態を確かめたうえで決まります。同じ「圧迫骨⁠折」という名前でも、中身はひとつひとつ違います。まず画像を見た主治医と相談してください。

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入院から退院までの流れ

施設によって違いはありますが、おおまかな流れをつかんでおくと、主治医の説明が聞きやすくなります。

手術の前

骨⁠折の状態を画像で確かめるほか、心臓や肺のはたらき、飲んでいるお薬(特に血をサラサラにするお薬)を確認します。麻酔は全身麻酔で行うことが多いですが、状態によって方⁠法が検討されます。

手術

うつぶせの姿勢で、背中に針あとほどの小さな入り口を作り、レントゲンで確かめながら細い管を椎体まで進めます。バルーンで持ち上げ(VBSではさらにステントを留置し)、骨セメントを注入します。セメントは体の中で短時間で固まり、椎体を支える柱になります。手術そのものの時間は30分前後が目安です。

手術のあと

多くの方が、翌日には起⁠き⁠上がって歩く練習を始めます。入院期間は数日から1週間程度が目安ですが、骨⁠折の状態や全身の状態によって変わります。しばらくコルセットを使うことがあります。

退院してから

セメント手術は、折れた1本を支える手術であって、骨粗鬆症そのものを治す手術ではありません。次の骨⁠折を防ぐために、骨粗鬆症の治療を続けてください。

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リスクと、この手術にできないこと

体への負担が少ない手術ですが、手術である以上、リスクはゼロではありません。主治医から説明される内容を、先に整理しておきます。

  • セメントの漏れ:注入した骨セメントが椎体の外へ漏れることがあります。多くは症状のないまま経過しますが、まれに神経の症状などにつながることがあります。そのため、骨⁠折の形をよく調べて漏れにくい方⁠法を選ぶところから手術計画が始まります。VBSは、ステントの枠の中にセメントを注入するしくみによって、漏れをコントロールしやすくした方⁠法です。
  • 別の場所の骨⁠折:手術のあとに、となりの椎体など別の場所が新しく骨⁠折することがあります。手術のせいというより、背骨ぜんたいが骨⁠折しやすい状態にあることの表れという面が大きく、骨粗鬆症の治療を続ける理由のひとつです。
  • 形がすべて戻るわけではありません:持ち上げられる高さには限界があり、骨⁠折前とまったく同じ形に戻すことを約束できる手術ではありません。
  • 痛みの原因が骨⁠折以外にある場合:腰や背中の痛みには複数の原因が重なっていることがあり、骨⁠折を支えても痛みの一部が残ることがあります。
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タイミングを逃した場合に残る道

つぶれたまま固まってしまった場合、セメント手術で形を戻すことはできなくなります。それでも道が閉ざされるわけではありません。

痛みや姿勢の崩れが強く、立て直す必要がある場合には、固まった椎体をいちど取り除き、チタン製の筒(ケージ)という支柱に置き換えて、ネジとロッドで背骨を組み直す手術があります。この方⁠法なら、固まったあとでも姿勢を立て直すことができます。ただし、体への負担も、入院の長さも、セメント手術とは大きく違う「大きな手術」になります。

また、手術をしない場合でも、痛みの治療、コルセット、リハビリテーション、そして次の骨⁠折を防ぐ骨粗鬆症治療と、できることは残っています。固まってしまっても、何もできなくなるわけではありません。選べる治療の中身が変わります。

小さな手術で済むうちに調べるか、大きな手術しか残らなくなってから気づくか。その分かれ目が、骨が固まる前の時期です。

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痛みが残ってしまったら:「残存腰痛」という問題

骨⁠折が治っても(保存療法で癒合しても、手術で支えても)、腰痛が残ってしまう方が一定数います。つぶれによって変わった姿勢に体が慣れるまでの負担や、痛みが長引くうちに神経が痛みを覚えこんでしまう慢性化のしくみが背景にあると考えられています。

3ヶ月を超えて続く慢性腰痛には、「痛みそのもの」を治療の対象にする選択肢があります。そのひとつがSCS(脊髄刺激療法〈せきずいしげきりょうほう〉)です。背骨の近くに細いリードを入れ、ごく弱い電気刺激で痛みの信号をやわらげる、体への負担が少ない外科的治療で、次のような特徴があります。

  • 刺激は止めることができ、装置はあとから取り外すこともできる、後⁠戻りのできる治療です
  • 希望があれば、植え込む前に数日間の試験刺激を行うこともできます(最近はリードと本体を一度に植え込むことが多くなっています)
  • 日⁠本では保険のきく治療です

くわしくは、同じ監修医による姉妹サイト「腰痛・狭⁠窄⁠症⁠ ⁠相⁠談⁠室」で解説しています。

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費用と使える制度

BKP・VBSは、いずれも保険のきく手術です。実際の自己負担額は、年齢・所得・入院日数などで変わります。

医療費が高額になった月には、自己負担に上限を設ける高額療養費制度が使えます。事前に「限度額適用認定証」を用意しておくと、窓口での支払いそのものを上限までに抑えられます。くわしくは骨粗鬆症とお金の話にまとめてありますので、費用が心配で受診をためらっている方は、先にそちらをご覧ください。

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受診の目安:選べるうちに、選択肢を知る

  • 突然の強い腰や背中の痛みは、「年のせい」と決めつけずに、整形外科でレントゲンなどの検査を受けてください。圧迫骨⁠折は、ぎっくり腰と自分では見分けられません。
  • すでに様子を見ている方は、安静にしていても痛みが強いまま、2〜3週間たっても引いてこないときは、もう一⁠度⁠受診して、骨の状態を確かめてもらってください。
  • 骨がうまく固まっていないなら、まだ選択肢が残っているということでもあります。

早く調べる目的は、手術を受けることではありません。手術になるかどうかにかかわらず、選べるうちに自分の選択肢を知っておくためです。

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よくある質問

Q. 骨⁠折からもう2ヶ月たっています。手遅れですか?

日数だけでは決まりません。骨がうまく固まらないまま痛みが続いている場合には、時間がたっていても手術で助けられることがあります。判断できるのは画像だけですので、「もう遅いだろう」と自分で決めずに、整形外科でご相談ください。

Q. 85歳の親でも受けられますか?

年齢そのものより、心臓や肺など全身の状態、骨⁠折前にどのくらい動けていたか、そしてご本人の気持ちが判断の中心になります。体への負担が少ない手術であり、高齢の方にも広く行われています。主治医に「手術をした場合と、しなかった場合で、この先の生活はどう違いそうですか」と聞いてみると、話が具体的になります。

Q. 骨セメントは、体に悪くないのですか? 一生もちますか?

骨セメントは長年整形外科の手術で使われてきた医療用の材料で、体の中で短時間で固まり、そのまま椎体を支える柱として働き続けます。体の中で溶けて流れ出したり、すり減ってなくなったりするものではありません。リスクは主に注入時の漏れであり、上でお話ししたとおりです。

Q. 手術のあと、MRI検査は受けられますか?

骨セメントやチタン製の器具は、一般にMRI検査の妨げにならないことがほとんどです。ただし、検査の可否は器具の種類や検査条件によって判断されますので、手術を受けたことを検査前に必ず申告し、主治医と検査を行う施設に確認してください。

Q. 手術をすれば、骨粗鬆症の治療はやめられますか?

やめられません。セメント手術が支えるのは折れた椎体であって、骨粗鬆症そのものは続いています。手術になってもならなくても、次の骨⁠折を防ぐために骨粗鬆症の治療は続けてください。

Q. コルセットはもう要らなくなりますか?

手術のあとも、しばらくコルセットを併用することがあります。期間や必要性は骨⁠折の状態によって変わりますので、主治医の指示に従ってください。コルセットとの付き合い方はこちらの記事にまとめてあります。

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次に読む

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参考文献

VBS(椎体ステント留置術)の日⁠本⁠人⁠患⁠者さんでの成績について。88名を対象とした国内の多施設前向き研究で、術後早期からの痛みの改善と、持ち上げた椎体の高さが1年後まで保たれたことが報告されています。

  • Takemasa R, et al. Effectiveness and Safety of Vertebral Body Stenting for Acute Spinal Compression Fractures due to Primary Osteoporosis: A Multicenter Prospective Clinical Study. Spine Surg Relat Res. 2024;8(4):415-426. PMID: 39131414

BKP(バルーン椎体形成術)とVBSの比較について。痛みの改善は同等で、椎体の高さの維持とセメントの漏れの少なさでVBSが有利だったとする系統的レビューです。

  • Zhang T, Peng Y, Li J. Comparison of clinical and radiological outcomes of vertebral body stenting versus percutaneous kyphoplasty for the treatment of osteoporotic vertebral compression fracture: a systematic review and meta-analysis. Jt Dis Relat Surg. 2024;35(1):218-230. PMID: 38108184

「形を立て直せるのは骨が固まっていないあいだだけ」という本文の記載について。英国の医療技術評価は、これらの手術の対象を「最近の、癒合していない椎体骨⁠折」としています。

  • National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Percutaneous vertebroplasty and percutaneous balloon kyphoplasty for treating osteoporotic vertebral compression fractures. Technology appraisal guidance TA279. 2013.

その他の参考資料:

  • 日⁠本整形外科学会 編「骨⁠粗⁠鬆⁠症⁠性⁠椎⁠体⁠骨折診療マニュアル」日整会誌. 2020;94:882-906
  • 日⁠本骨粗鬆症学会・日⁠本骨代謝学会・骨粗鬆症財団 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。手術の適応は骨⁠折の形・時期・全身の状態によってひとりひとり異なります。ご自身の治療については、必ず主治医にご相談ください。

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