圧迫骨折のあと、夜に背中が痛んで眠れない方へ。寝る姿勢とすき間の支え方、寝具とベッドの選び方、夜中のトイレの道づくり、受診の目安を解説します。
目次: 夜の支度 | すき間を支える | 寝具とベッド | 夜のトイレ | 昼の過ごし方 | 受診の目安 | 家族にできること | まとめ | よくある質問
圧迫骨折で背骨がくさびの形につぶれると、上半身が少し前に傾き、背中の筋肉が一日じゅう支え続けることになります。骨折が治ったあとも痛みが残る方がいるのは、痛みの出どころが骨から筋肉へ移っているためで、この仕組みは背骨の圧迫骨折 — つぶれが姿勢を変え、次の骨折を呼ぶでくわしくお話ししています。慢性期(3か月以上)の痛みは、背中の筋肉のこわばりが中心になることがあり、長い時間同じ姿勢でいると出やすくなります。
ですから、夜にすることは筋肉を休ませる形を作ることです。
夜中に起きたとき、暗い中で探しものをしたり物をよけたりしないで済むよう、寝る前に整えておきます。印刷して寝室に貼れるよう、短くまとめました。
| 順番 | すること | ひとこと |
|---|---|---|
| 1 | 寝室からトイレまでの足元灯が点くか確かめる | センサー式ならスイッチを探さずに済みます |
| 2 | 通り道とベッドの周りの物をどける | スリッパ・雑誌・コード・カバン |
| 3 | かかとのある室内履きを、ベッドから足を下ろす位置に置く | スリッパは脱げやすいので使いません |
| 4 | クッションとたたんだバスタオルを枕元に置く | 横向き用・仰向け用(次の節) |
| 5 | 電動ベッドなら平らに戻す | 折れたままだと背骨に不自然な力がかかります |
| 6 | 眼鏡・電話・水を手の届くところに置く | 起き上がる回数を減らします |
| 7 | 寝室をできるだけ暗くし、スマートフォンは持ち込まない | 夜の明るい光は寝つきを妨げます |
| 8 | 入浴できる方は、寝る1〜2時間前に済ませる | 体が温まってから寝床に入ると寝つきやすくなります |
全部を一度にやる必要はありません。1と4だけなら今夜からできます。4番のクッションは、まず今あるもの(座布団・枕・バスタオル)で十分です。
背中が丸くなっている方が平らな布団に仰向けになると、布団につくのは腰のあたりだけになり、首から背中にかけてと、脚の付け根(太もも)側が浮くことがあります。浮いているところを筋肉が支え続けるので、夜も休めません。支えるのは、浮いている側です。
| 姿勢 | 支える場所 | 使うもの | 入れない場所 |
|---|---|---|---|
| 横向き | 両膝の間 | 枕・クッション1つ | — |
| 仰向け | 頭から首〜背中の下 | たたんだバスタオル(1〜2枚から。厚さは楽なところで止める) | 腰の下(腰は布団についています) |
| 仰向け | 膝の下 | クッション・座布団を丸めたもの | — |
| どちらも寝つけない夜 | 上半身全体 | リクライニングチェアで楽な角度を探す | — |
バスタオルの厚さに正解はありません。痛みが少ないほうを選んでください。横向きと仰向けのどちらが楽かも人によって違い、同じ人でも日によって変わります。枕元に両方の用意があれば、夜中に向きを変えたくなっても起き上がらずに済みます。
うつ伏せと丸まった姿勢は避けてください。理由は日常生活ガイドの「避けたほうがよい姿勢」にあります。まだコルセットを着けている方は、寝るときに着けるか外すかを主治医に確認してください。
買い替えを考える方のために、確かめ方を添えました。今あるもので工夫するのが先で、買い替えは主治医やリハビリスタッフに相談してからで十分です。
| 項目 | 目安 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| マットレス・敷布団の硬さ | 硬すぎず、柔らかすぎず | 仰向けに寝て寝返りが打てるか。体が沈んで寝返りに力が要るなら柔らかすぎ |
| 床の布団かベッドか | できればベッド | 床からの起き上がりは背骨にも脚にも負担が大きい |
| ベッドの高さ | 座ったとき、膝と同じくらい | ベッドの端に腰かけて、足の裏が床につき、膝が直角になる高さ。低すぎると立つときに大きな力が要ります |
| 電動ベッド | 寝るときは平らに。起こすときの折れ目は股関節に | 背を起こしたとき、折れ目が腰ではなく股関節に来るか |
| サイドレール(手すり) | あると起き上がりの支えになる | ベッドの脇に手をかけて体を起こせるか |
硬い寝具が背中や腰によい、と昔から言われてきました。けれども、慢性の腰痛(骨折ではない腰痛)のある313人を、硬いマットレスと中くらいの硬さのマットレスに分けて90日間くらべた臨床試験では、中くらいの硬さのほうが、寝ているときの痛み、起き上がるときの痛み、日常の不自由のいずれも少ないという結果でした。圧迫骨折の方を対象にした研究ではないので、そのまま当てはめることはできません。ただ、「硬ければ硬いほどよい」と思って体が浮くほど硬い寝具を選ぶ必要はない、とは言えます。
介護保険の認定を受けている方は、電動ベッドのレンタルや、サイドレールなどの福祉用具の補助を受けられる場合があります。ケアマネージャーや地域包括支援センターにご相談ください。
夜中のトイレ移動で転ぶ方が多いのは、暗さと視力の変化が重なるためです。準備は昼間のうちに、寝室からトイレまでを一本の道として整えます。
| 場所 | 整えること |
|---|---|
| 寝室 | ベッドの周りに物を置かない。室内履きを足を下ろす位置に。ベッド脇にサイドレール |
| 寝室→廊下→トイレ | 足元灯を動線に沿って(センサー式が便利)。コード・小さな敷物をどける。壁に手を添えて歩ける側を空けておく |
| トイレ | 手すり(工事なしで付くものもあります)。便座が低ければ補高便座 |
| 歩き方 | 起きたらベッドの端に腰かけてひと呼吸。急がない |
足元灯には、もうひとつ役目があります。夜中に天井の明かりをつけると目に強い光が入り、そのあと寝つきにくくなります。足元だけを照らすのは、転倒を防ぐうえでも、眠りに戻るうえでも理にかなっています。
夜中にトイレに起きる回数が多い方は、転ぶ機会がそれだけ増えます。高齢の方を追跡した9つの研究をまとめた報告では、夜間にトイレに起きる習慣のある方は、転倒が約1.2倍起きやすく、骨折も約1.3倍起きやすい可能性があるとされています。回数が多い、または増えてきたと感じたら、そのこと自体を主治医やかかりつけ医に伝えてください。原因は人によって違い、調べられることがあります。
眠れない夜の原因は、夜だけにあるとは限りません。骨折後の心のケアでお話しした「昼夜のリズム」に、厚生労働省の睡眠ガイドが高齢の方にすすめている点を重ねると、こうなります。
| 時間帯 | すること | なぜ |
|---|---|---|
| 朝 | 起きたらカーテンを開けて光を入れる | 体内時計が整い、夜に寝つきやすくなります |
| 日中 | 明るい場所で過ごす。散歩は痛みの許す範囲で | 歩くことは筋力を保ち、骨にも適度な刺激になります。動かないと筋力が落ち、骨はさらに弱くなります |
| 昼 | 長い昼寝を避ける | 長い昼寝は夜の眠りを妨げます |
| 寝床にいる時間 | 眠っている時間+30分程度を目安に。8時間以上にならないように | 寝床に長くいるほど眠りが浅くなり、健康にもよくないことがわかってきています |
| 寝る前 | ゆっくりした深呼吸、温かいお茶 | 体の緊張をほぐします |
| 寝る前 | 背中のこわばりは、温めるのも心地よいことがあります | 低温やけどを防ぐため、肌との間にタオルを1枚。眠っている間は気づきにくいので、寝る前に温めて、外してから寝るのが安全です |
痛いからと横になっている方ほど、寝床にいる時間が長くなりがちです。痛みのことは、主治医と相談してください。 そのうえで、昼間に寝床から離れて過ごす時間を少しずつ増やしていくことが、夜の眠りを助けます。
「何時に寝床に入り、何時に起きたか」「夜中に何回起きたか」「痛みで目が覚めたか」を1週間だけ書き留めてみてください。主治医に「夜、背中が痛くて眠れない」と伝えるとき、この記録が何より役に立ちます。回復の見通しの記事でおすすめした「痛みの記録」と、同じ紙で構いません。
夜を安心して過ごすには、「いつもの痛み」と「違う痛み」を分けておきます。骨折のあと、とくに最初の2年間は次の骨折が起きやすい時期です。
| サイン | 考えられること | どうするか |
|---|---|---|
| 急に強い痛みが出た。良くなっていた痛みがまた強くなった | 新しい骨折の可能性 | 次の予約を待たず受診 |
| 痛む場所が、いつもと変わった | 新しい骨折の可能性 | 次の予約を待たず受診 |
| 足がしびれる、力が入らない、歩けない | 神経が圧迫されている可能性 | すぐに主治医または救急外来へ |
| 尿が出にくい、または漏れてしまう | 神経が圧迫されている可能性 | すぐに主治医または救急外来へ |
| 熱を伴う痛み | 骨折以外の原因の可能性 | 次の予約を待たず受診 |
| 眠れない日が2週間以上続く。気分が晴れない日が続く | 痛みだけでなく心の状態も関わっている可能性 | 主治医またはかかりつけ医に伝える |
圧迫骨折は、最初のレントゲンに写らないことがあります。「前に撮ってもらったから大丈夫」とは言えません。痛みの場所や強さが変わったら、そのまま伝えてください。
夜の痛みは、昼間にご家族が見ている姿からは分かりません。ご本人も「心配をかけたくない」と言わないことがあります。
ご家族向けの全体像はご家族にできることにまとめています。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 夜の痛みは筋肉のこわばりが中心 | 曲がった背中を支え続ける筋肉を休ませる形を作る。腰ではなく、浮いている首〜背中と膝の下を支える |
| 支度は寝る前に | 足元灯・通り道・室内履き・クッション。暗い中で探しものをしない |
| 寝具は「寝返りが打てるか」 | 硬いほどよい根拠はない。ベッドの高さは腰かけて膝が直角 |
| トイレまでを一本の道に | 足元灯は転倒を防ぎ、眠りにも戻りやすい。起きる回数が多ければそのことを伝える |
| 昼が夜をつくる | 朝の光・日中の活動・長い昼寝をしない・寝床に8時間以上いない |
| 「違う痛み」は待たない | 急な痛み・場所の変化・しびれ・尿の異常・熱は、次の予約を待たず受診 |
Q. 腰の下にタオルを入れると楽な気がします。入れてはいけませんか?
背中が丸くなっている方が仰向けになると、布団についているのは腰のあたりで、浮くのは首〜背中と脚の付け根側です。この記事でご紹介しているのは、その浮いている側を支える方法です。腰の下に何かを入れると楽に感じる方もいらっしゃいますが、背骨の形は人によって違いますので、続けてよいかは次の診察で主治医に確かめてください。
Q. リクライニングチェアで一晩寝ても大丈夫ですか?
痛みで寝つけない夜に、無理に横にならずリクライニングチェアで楽な姿勢を探すのは、ひとつの方法です。ただし、それが毎晩になるなら、痛みが続いているということです。我慢せず主治医に相談してください。
Q. 床に布団を敷いて寝ています。ベッドに変えたほうがいいですか?
可能であれば、ベッドへの変更をおすすめします。床からの起き上がりは背骨にも脚にも負担が大きいためです。介護保険の認定を受けている方は、電動ベッドのレンタルが可能な場合があります。くわしくは日常生活ガイドのよくある質問をご覧ください。
Q. 枕の高さはどのくらいがいいですか?
決まった高さはありません。横向きなら首がまっすぐになる高さ、仰向けなら「痛みが少ない」高さが基準です。首から背中の下にバスタオルを入れる場合は、枕と合わせた高さで楽かどうかを見てください。迷ったら、リハビリスタッフや主治医に見てもらうのが確実です。
Q. 寝る前に温めるのは、骨に悪くありませんか?
痛みが落ち着いた時期(慢性期)の筋肉のこわばりには、温めるのが心地よいことがあります。骨折直後の時期は主治医に確認してください。どの時期でも、肌との間にタオルを1枚挟み、眠る前に外してください。
Q. コルセットは、寝るときも着けたほうがいいですか?
骨折の状態によって指示が違います。基本は寝るときも着けますが、骨折が安定していれば就寝時は外してよいと指示されることもあります。自己判断で外さず、コルセットとの付き合い方を読んだうえで主治医に確認してください。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。寝具や姿勢の工夫は、ご自身の背骨の状態によって合う・合わないがあります。痛みのことは、主治医にご相談ください。
医療監修
加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)
最終更新:2026年10月6日