ロモソズマブ(イベニティ)— 骨をつくりながら守る「二刀流」|骨活ガイド
⚔️treatment

ロモソズマブ(イベニティ)— 骨をつくりながら守る「二刀流」

骨をつくる力を高めながら、壊れるのも抑える「二刀流」のお薬。12ヶ月限定の集中治療と、心臓への注意点を解説します。

「骨をつくる力を高めながら、壊されるのも防ぐお薬がある」——ロモソズマブ(商品名:イベニティ)は、骨粗鬆症治療薬の中でもユニークな存在です。「つくる」と「まもる」の二つの力を同時に持っているため、短い期間で骨密度を大きく改善することが期待されています。この記事では、ロモソズマブがどんなお薬か、どのように使い、どんなことに気をつければよいか、わかりやすくお伝えします。

1

このページでわかること

  • ロモソズマブが「二刀流」と呼ばれる仕組みがわかります
  • 注射の受け方や治療期間(12か月)がイメージできます
  • 治療中に気をつけたいポイント(とくに心血管系の注意)がわかります
  • 12か月の治療が終わった後の「次のステップ」がわかります
  • 他の骨形成促進薬(テリパラチド)との違いがわかります
2

ロモソズマブってどんなお薬?

私たちの骨の中には、骨をつくったり壊したりするスピードを調整する「スクレロスチン」という物質があります。スクレロスチンが多いと、骨をつくる力にブレーキがかかり、新しい骨がつくられにくくなります。

ロモソズマブがスクレロスチンのブレーキを解除

ロモソズマブは、このスクレロスチンをブロックする抗体医薬です。ブレーキを外すことで、骨をつくる力が高まります。同時に、骨が壊されるスピードもゆるやかになる効果があるとされています。

つまり、ロモソズマブは「骨を積極的につくりながら、壊されるのも防ぐ」という二つの作用を併せ持つお薬です。

家にたとえるなら、増築・耐震補強工事をしながら、同時に防水工事も進めるようなものです。限られた工期(12か月)で、家をできるだけ強くするイメージです。

3

注射の受け方

ロモソズマブは、月に1回、医療機関で受ける皮下注射です。

  • 注射部位はお腹、太もも、上腕(二の腕)のいずれかです
  • 1回の投与で2本の注射を打ちます(1本ずつ異なる部位に注射します)
  • 自己注射ではなく、医師や看護師が行いますので、ご自分で打つ必要はありません

治療期間

ロモソズマブの治療期間は最長12か月(1年間)と決まっています。12か月を超えて使用することは、現在のところ推奨されていません。

12か月の月1回注射スケジュール

12か月間、月に1回の通院で注射を受けます。自己注射ではないので、「注射が怖い」という方も安心です。

4

ロモソズマブの良いところ

ロモソズマブには、他のお薬にはない特徴があります。

  • 骨密度の改善が大きい: 12か月間の治療で、腰椎(腰の骨)の骨密度が大きく改善したという臨床試験の報告があります
  • 二つの作用: 骨をつくる力を高めると同時に、骨が壊されるのも防ぎます。「つくるだけ」「まもるだけ」のお薬とは異なるアプローチです
  • 自己注射不要: 医療機関で月1回の注射を受けるため、ご自分で注射する負担がありません
  • 短い治療期間: 12か月という明確なゴールがあるため、治療の見通しが立てやすいです

2025年ガイドラインでは、ロモソズマブはエビデンスAの高い評価を受けており、骨折リスクの高い方に対する治療選択肢のひとつとして位置づけられています。

お薬の選択は、骨の状態や他の病気、生活スタイルなどを考慮して、主治医が総合的に判断します。

5

知っておきたい注意点

どんなお薬にも、良い面と気をつけたい面があります。ロモソズマブを安心して使うために、以下のポイントを知っておきましょう。

心血管系の注意(いちばん大切なポイントです)

ロモソズマブの使用にあたって、心臓や血管の病気との関連に注意が必要です。

臨床試験で、ロモソズマブを使用した方の中で心血管系の有害事象(心筋梗塞や脳卒中など)がやや多く報告されました。そのため、以下の方には使用が慎重になる、あるいは使用できない場合があります。

  • 過去1年以内に心筋梗塞や脳卒中を起こした方
  • 心血管系のリスクが高い方(高血圧、糖尿病、脂質異常症などが重なる方)

主治医はお薬を選ぶ際に、骨の状態だけでなく心臓や血管の健康状態も考慮します。

心血管系のリスクは、ロモソズマブを選ぶかどうかの判断で重要なポイントです。既往歴がある方は、必ず主治医にお伝えください。

顎骨壊死(がっこつえし)について

ビスフォスフォネートやデノスマブと同様に、非常にまれですがあごの骨に問題が生じる可能性があります。

予防のために大切なこと:

  • 治療を始める前に歯科検診を受けましょう
  • 治療中も定期的に歯科を受診しましょう
  • 歯科を受診するときは、「ロモソズマブ(イベニティ)を使用中です」と伝えてください

低カルシウム血症

ロモソズマブの使用中に、血液中のカルシウムが低下することがあります。多くの場合、カルシウムとビタミンDの補充が処方されます。処方されたサプリメントはきちんと続けましょう。

注射部位の反応

注射した部位が赤くなったり、痛みや腫れが出ることがあります。通常は数日以内に落ち着きます。気になるときは主治医にご相談ください。

6

12か月の治療が終わったら — 次のステップ

ロモソズマブの治療は12か月で終了しますが、骨粗鬆症の治療はそこで終わりではありません

ロモソズマブで「建てた」骨を守るために、12か月の治療後は骨吸収抑制薬(「まもる」お薬)に切り替えるのが一般的です。

切り替え先としてよく使われるお薬:

  • デノスマブ: 6か月に1回の注射で骨密度を維持します → 詳しくはこちら
  • ビスフォスフォネート: 飲み薬や年1回の点滴で骨密度を維持します → 詳しくはこちら

治療の全体像でお伝えした「まずつくる → 次にまもる」の流れの中で、ロモソズマブは「つくる」フェーズを担当し、切り替え後のお薬が「まもる」フェーズを引き継ぎます。

ロモソズマブの12か月は、長い治療の「第1章」です。第2章(まもるフェーズ)に引き継ぐことで、建てた骨をしっかり守ります。

7

テリパラチドとの違い

骨をつくるお薬(骨形成促進薬)には、ロモソズマブのほかにテリパラチドがあります。どちらも骨をつくる力を高めますが、いくつかの違いがあります。

ロモソズマブ テリパラチド
仕組み スクレロスチンをブロック(つくる+まもる) 副甲状腺ホルモンを利用(つくる)
投与方法 医療機関で月1回注射 自己注射(毎日)or 通院注射(週1回)
治療期間 最長12か月 最長24か月
自己注射 不要 毎日タイプは自己注射あり
心血管への注意 注意が必要(心筋梗塞・脳卒中の既往歴がある方は慎重) 特に制限なし

どちらのお薬が適しているかは、骨密度の状態、骨折の有無、心臓や血管の健康状態、注射への負担感など、さまざまな要素を考慮して主治医が判断します。

8

主治医への質問リスト

次の診察で、こんな質問をしてみてはいかがでしょうか。メモに書いて持っていくと安心です。

  • 「私にはロモソズマブとテリパラチド、どちらが向いていますか?」
  • 「心臓や血管の面で、ロモソズマブを使っても問題ないですか?」
  • 「12か月の治療が終わった後は、どんなお薬に替わりますか?」
  • 「治療中にカルシウムやビタミンDのサプリメントは必要ですか?」
  • 「治療の効果はいつごろ検査でわかりますか?」

「こんなこと聞いていいのかな」と思わなくて大丈夫です。ご自身の治療について知りたいと思う気持ちは、とても大切なことです。

9

まとめ

  • ロモソズマブは、骨をつくりながら守る「二刀流」のお薬です。スクレロスチンをブロックすることで、骨形成を促進し、骨吸収を抑制します
  • 月1回の医療機関での注射で、12か月間の治療です。自己注射は不要です
  • 心臓や血管の病気がある方は注意が必要です。特に過去1年以内に心筋梗塞や脳卒中を起こした方は、主治医と慎重に相談してください
  • 12か月の治療後は「まもる」お薬に切り替えて、建てた骨をしっかり守ることが大切です
10

今日からできること

[!warning] お願い 現在処方されているお薬を、自己判断で変えたりやめたりしないでください。気になることがあれば、必ず主治医にご相談ください。

  • お薬手帳を活用しましょう。 ロモソズマブの注射日を記録し、12か月間の治療スケジュールを把握しておきましょう
  • 心臓や血管の持病がある方は、主治医に必ず伝えましょう。 お薬手帳に他科で処方されているお薬も記載してあると安心です
  • 歯科検診の予約を入れましょう。 まだ受けていない方は、治療開始前の歯科検診をお勧めします
  • カルシウムとビタミンDを意識した食事を心がけましょう。 骨を強くする食事もあわせてご覧ください
11

よくある質問

Q. 注射は痛いですか?

皮下注射ですので、一般的にはそれほど強い痛みではありません。1回の投与で2本打ちますが、それぞれ短時間で終わります。注射部位の赤みや軽い痛みが出ることがありますが、通常は数日で収まります。

Q. テリパラチドを使った後にロモソズマブを使えますか?

一般的に、テリパラチドとロモソズマブはどちらも「骨をつくるお薬」に分類されます。片方を使った後にもう片方を使う治療については、研究データがまだ限られています。通常は、骨形成促進薬の後は「まもるお薬」(デノスマブやビスフォスフォネート)に切り替えるのが一般的です。具体的な治療計画は主治医にご相談ください。

Q. 12か月より短い期間で終了することはありますか?

副作用が出た場合や、他の理由で治療の継続が難しい場合は、12か月より前に終了することがあります。その場合も、主治医が次のお薬を計画してくれます。

Q. 骨密度はどのくらい改善しますか?

臨床試験では、12か月間の治療で腰椎(腰の骨)の骨密度に大きな改善が報告されています。ただし、改善の程度には個人差があります。治療中は定期的な骨密度検査(DEXA検査)で効果を確認します。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

ロモソズマブは保険適用のお薬です。3割負担の方で月あたり数万円程度の自己負担になることがあります。高額療養費制度を利用できる場合もありますので、詳しくは主治医や薬局にご相談ください。

12

次に読む

13

参考文献

  • 日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版
  • Cosman F, et al. "Romosozumab treatment in postmenopausal women with osteoporosis." N Engl J Med. 2016;375(16):1532-1543.
  • Saag KG, et al. "Romosozumab or alendronate for fracture prevention in women with osteoporosis." N Engl J Med. 2017;377(15):1417-1427.
  • Langdahl BL, et al. "Romosozumab (sclerostin monoclonal antibody) versus teriparatide in postmenopausal women with osteoporosis transitioning from oral bisphosphonate therapy." J Bone Miner Res. 2017.
  • イベニティ皮下注105mgシリンジ 添付文書(アステラス・アムジェン)
  • 骨粗鬆症財団「骨粗鬆症の治療について」https://www.jpof.or.jp

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。

14

利益相反の開示

本サイトの運営にあたり、○○○○より創設スポンサーとしてのご支援をいただいています。記事の内容は編集部が独立して作成しており、スポンサーによる内容への関与はありません。なお、本記事で紹介しているロモソズマブ(イベニティ)はアステラス・アムジェンの製品であり、○○○○の製品ではありません。詳しくは利益相反ポリシーをご覧ください。

関連する記事

医療監修

加藤裕幸整形外科医・医籍登録 409723号

東海大学医学部付属病院/湘陽かしわ台病院

最終更新:2026年3月18日

利益相反の開示

本サイトは○○○○の協賛を受けています。記事の内容は監修医の医学的判断に基づいており、協賛企業が編集内容に関与することはありません。