骨吸収抑制薬のまれな副作用 — 顎骨壊死と非定型大腿骨骨折|骨活ガイド
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骨吸収抑制薬のまれな副作用 — 顎骨壊死と非定型大腿骨骨折

骨を守るお薬(ビスフォスフォネート・デノスマブ)のまれな副作用である顎骨壊死と非定型大腿骨骨折について。リスク、予防法、警告サインを正しく理解して安心して治療を続けましょう。

「骨粗鬆症のお薬で、あごの骨が壊れることがあるって本当?」「太ももの骨が折れることがあるの?」——インターネットでこうした情報を目にして、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

顎骨壊死(がっこつえし)と非定型大腿骨骨折(ひていけいだいたいこつこっせつ)は、骨吸収抑制薬(ビスフォスフォネートやデノスマブなど、骨が壊されるのを防ぐお薬)のまれな副作用として報告されています。この記事では、それぞれがどんなものか、どのくらいの頻度で起きるのか、そして予防のためにできることを正しくお伝えします。

大切なことを最初にお伝えします——これらの副作用はたしかに存在しますが、発生頻度はとてもまれです。そして、骨粗鬆症を治療しないことによる骨折のリスクのほうが、これらのまれな副作用のリスクよりもはるかに大きいと考えられています。お薬を怖がって自己判断でやめてしまうことは、かえって危険です。

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このページでわかること

  • 顎骨壊死がどんなものか、なぜ起きるのか、やさしい言葉でわかります
  • どんなときにリスクが高まるのか(とくに抜歯との関係)がわかります
  • 日頃の口腔ケアでリスクを減らせることがわかります
  • 非定型大腿骨骨折とはどんな骨折か、どんな方に起きやすいかがわかります
  • 太ももの痛みという大切な警告サインがわかります
  • 主治医に相談すべきタイミングがわかります

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顎骨壊死(がっこつえし)について

顎骨壊死とは

顎骨壊死(MRONJ=薬剤関連顎骨壊死)とは、あごの骨の一部が露出したり、治りにくくなったりする状態です。骨吸収抑制薬を使用している方で、ごくまれに報告されています。

どのくらいまれなのか

骨粗鬆症の治療で使う量(通常量)での発生頻度は、およそ10万人に数人〜十数人程度と報告されています。特に経口ビスフォスフォネート(飲み薬タイプ)での発生はきわめてまれです。

一方、がんの治療で使われる高用量の骨吸収抑制薬では発生頻度がもう少し高くなりますが、骨粗鬆症の治療とは用量も使い方もまったく異なります。インターネットで見かける情報がどちらについてのものか、区別することが大切です。

骨粗鬆症の治療量での顎骨壊死はとてもまれです。インターネットの情報は、がん治療(高用量)についてのものが混ざっていることがあります。

どんなときにリスクが高まるのか

顎骨壊死がもっとも起きやすいのは、抜歯(歯を抜くこと)をしたときです。歯を抜いた後の傷が治る過程で、骨吸収抑制薬の影響であごの骨の修復がうまくいかなくなることがあると考えられています。

そのほかに、以下のような場合にもリスクが高まる可能性があるとされています。

  • 歯周病が進行している場合
  • 口腔内の衛生状態がよくない場合
  • 入れ歯が合わず、歯ぐきに傷ができている場合
  • インプラント手術を受ける場合
  • 糖尿病やステロイド薬の使用など、他の要因がある場合

予防のためにできること — お口のケアが最大の防御

顎骨壊死の予防で最も大切なのは、日頃のお口のケア(口腔衛生)です。お口を清潔に保つことで、リスクを大幅に下げることができます。

骨吸収抑制薬を始める前に:

  • 歯科検診を受けましょう。 治療が必要な虫歯や歯周病があれば、お薬を始める前に治療しておくのが理想的です。
  • 「骨粗鬆症のお薬を始める予定です」と歯科医にお伝えください。

治療中は:

  • 定期的に歯科検診を受けましょう(年1〜2回が目安)。
  • 毎日のブラッシングとお口のケアを丁寧に続けましょう。 これが最大の予防策です。
  • 歯科を受診するときは、「骨吸収抑制薬(お薬の名前)を使っています」と必ず伝えてください。
  • 歯科医から指示や注意点があれば、歯科医の指示に従ってください。

抜歯が必要になったら:

  • まず歯科医と主治医に相談しましょう。
  • 2023年の顎骨壊死検討委員会ポジションペーパーでは、通常量のビスフォスフォネートでは、抜歯の際にお薬を休む必要は原則としてないとの見解が示されています。
  • ただし、最終的な判断は歯科医と主治医が相談して決めます。歯科医の指示に従ってください。

歯科医に骨のお薬を伝える場面

お口のケアを続けて、歯科検診を定期的に受ける。それだけで、顎骨壊死のリスクは大きく減ります。

こんな症状があれば歯科医に相談してください

  • あごの痛みやしびれが続く
  • 歯ぐきから骨が見えている
  • 歯を抜いた後の傷がなかなか治らない
  • 歯ぐきの腫れや膿(うみ)が続く

これらの症状があるからといって、必ずしも顎骨壊死とは限りません。しかし、早めに歯科医に相談することで、適切な対応を受けることができます。


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非定型大腿骨骨折について

非定型大腿骨骨折とは

非定型大腿骨骨折とは、太ももの骨(大腿骨)の付け根よりも少し下の部分に起きる、通常の骨粗鬆症性骨折とは異なるタイプの骨折です。転んだり、ぶつけたりといった大きなきっかけがなくても起きることがあるのが特徴です。

誰に起きやすいのか

非定型大腿骨骨折は、骨吸収抑制薬を長期間(一般的に5年以上)使用している方で報告されています。

骨吸収抑制薬は骨が壊されるのを抑えるお薬ですが、長期間使い続けると、骨の新陳代謝(古い骨を壊して新しい骨に置き換えるサイクル)が過度に抑えられ、骨がもろくなる可能性があると考えられています。ただし、このメカニズムはまだ完全に解明されたわけではありません。

発生頻度はとてもまれですが、長期間使用するほどリスクが高くなるとされており、お薬を使い続ける期間については主治医が定期的に見直しを行います。

非定型大腿骨骨折は、骨吸収抑制薬の長期使用(とくに5年以上)で起きることがあるまれな副作用です。

太ももの痛み — 大切な警告サイン

非定型大腿骨骨折には、骨折が起きる前に警告サインが出ることがあるという重要な特徴があります。

以下のような症状に注意してください:

  • 太もも(大腿部)の痛みが続く
  • 足のつけ根(鼠蹊部)の鈍い痛みが続く
  • 歩くときや体重をかけたときに痛みが強くなる
  • 特にぶつけたり転んだりした覚えがないのに痛みがある

これらの痛みは、骨にひび(ストレス骨折)が入り始めているサインである可能性があります。

太ももや足のつけ根に原因のわからない痛みが続く場合は、できるだけ早く主治医にお伝えください。 早い段階で見つかれば、お薬の変更や検査などの対応が可能です。

太ももの痛みは見逃さないでください。 「歳のせいかな」と思わず、骨吸収抑制薬を使っている方は主治医に相談しましょう。

長期使用と「休薬」の考え方

ビスフォスフォネートでは、非定型大腿骨骨折のリスクを減らすために、一定期間使用した後に「休薬(お薬のお休み)」が検討されることがあります。

  • 休薬のタイミングや期間は、骨密度や骨折リスクなどを総合的に判断して、主治医が決定します
  • すべての方に休薬が適しているわけではありません(骨折リスクが高い方は継続が推奨されることもあります)
  • デノスマブの場合は、自己判断での中断は骨密度の急激な低下を招くため、休薬の考え方が異なります。 必ず主治医の指示に従ってください

休薬について気になる方は、次の受診のときに主治医にご相談ください。

「休薬」は主治医が判断するものです。自己判断でお薬をやめることは避けてください。


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バランスのとれた視点を持つために

ここまで、骨吸収抑制薬のまれな副作用についてお伝えしてきました。心配になった方もいらっしゃるかもしれませんが、最後にもう一度、大切なことを確認させてください。

リスクのバランス

骨粗鬆症を治療しない場合のリスク 骨吸収抑制薬のまれな副作用
頻度 骨折は決してまれではない とてもまれ
影響 脊椎骨折・大腿骨近位部骨折は寝たきりや生活の質の大幅な低下につながりうる 多くの場合、早期発見で対処可能
予防 治療が最大の予防 口腔ケア、定期検診、警告サインへの注意で対応可能

骨粗鬆症性骨折——とくに大腿骨近位部骨折(足の付け根の骨折)は、生活の質を大きく変えてしまう可能性がある深刻な骨折です。お薬を使うことによるメリットは、まれな副作用のリスクをはるかに上回ると、国内外のガイドラインで一貫して示されています。

お薬の副作用を知ることは大切です。でも、それ以上に大切なのは、知ったうえで正しく使い続けることです。


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主治医への質問リスト

次の診察で、こんな質問をしてみてはいかがでしょうか。

  • 「私が使っているお薬で、顎骨壊死のリスクはどのくらいですか?」
  • 「歯医者さんに行くとき、何か伝えることはありますか?」
  • 「お薬を使い始めてどのくらい経ちますか?休薬を考える時期ですか?」
  • 「太ももに痛みを感じたら、どうすればいいですか?」
  • 「骨密度の検査は次はいつですか?」

不安を抱えたままにしないでください。質問することで、安心して治療を続けられます。

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まとめ

  • 顎骨壊死は骨吸収抑制薬のまれな副作用で、特に抜歯のときにリスクが高まります。経口ビスフォスフォネートではきわめてまれです
  • 日頃のお口のケアと定期的な歯科検診が最大の予防策です。歯科を受診するときはお薬のことを必ず伝え、歯科医の指示に従ってください
  • 非定型大腿骨骨折は骨吸収抑制薬の長期使用(とくに5年以上)で起きることがある副作用です
  • 太ももや足のつけ根の痛みは重要な警告サインです。原因のわからない痛みが続いたら、すぐに主治医に相談してください
  • 休薬については主治医と相談してください。自己判断での中断は避けましょう
  • 骨粗鬆症を治療しないリスクのほうが、これらのまれな副作用のリスクよりもはるかに大きいことを忘れないでください
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今日からできること

[!warning] お願い この記事を読んで不安を感じても、お薬を自己判断でやめないでください。必ず主治医にご相談ください。

  • 歯科検診の予定を確認しましょう。 最後の歯科検診から半年以上経っていたら、予約を入れましょう。
  • お薬手帳に「骨吸収抑制薬を使用中」と書いてあるか確認しましょう。 歯科受診時にスムーズに伝えられます。
  • 毎日の歯みがきを丁寧にしましょう。 口腔ケアが顎骨壊死の最大の予防策です。
  • 太ももに原因のわからない痛みがあれば、次の受診を待たずに主治医に連絡しましょう。
  • 気になることがあれば、次の受診で質問リストを持参しましょう。 この記事をスマートフォンで見せながら相談するのもよい方法です。
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よくある質問

Q. 骨粗鬆症のお薬で顎骨壊死になる確率はどのくらいですか?

骨粗鬆症の治療量では、およそ10万人に数人〜十数人程度ととてもまれです。特に飲み薬タイプのビスフォスフォネートではさらに低いとされています。がん治療で使われる高用量とは大きく異なりますので、区別して考えることが大切です。

Q. 歯医者さんに行っても大丈夫ですか?

もちろん大丈夫です。むしろ、定期的に歯科を受診することが予防につながります。受診の際は「骨粗鬆症のお薬を使っています」と伝えてください。虫歯の治療やクリーニングなどの一般的な歯科処置は通常どおり受けられます。抜歯やインプラントなどの外科的処置が必要な場合は、歯科医と主治医が連携して対応します。

Q. 抜歯が必要な場合、お薬を休む必要がありますか?

2023年の学会ポジションペーパーでは、通常量のビスフォスフォネートでは抜歯の際にお薬を休む必要は原則としてないとの見解が示されています。ただし、最終的な判断はケースバイケースで歯科医と主治医が相談して決めますので、歯科医の指示に従ってください。

Q. お薬を何年も飲んでいますが、非定型大腿骨骨折が心配です。

長期間使用されている方が心配されるのは当然のことです。主治医は治療期間や骨密度の推移を定期的に確認しており、休薬の必要性も含めて判断しています。気になる場合は、次の受診のときに「休薬について相談したい」と伝えてみてください。

Q. 太ももの痛みがあります。非定型大腿骨骨折でしょうか?

太ももの痛みには筋肉の疲労や関節の問題など、さまざまな原因が考えられます。必ずしも非定型大腿骨骨折とは限りません。しかし、骨吸収抑制薬を使用中で原因のわからない太ももの痛みが続く場合は、念のため主治医にお伝えください。レントゲンやMRIなどの検査で確認することができます。

Q. この副作用が怖いので、お薬をやめたいのですが。

お気持ちはよくわかります。しかし、骨粗鬆症を放置した場合の骨折リスクは、これらのまれな副作用のリスクよりもはるかに大きいとされています。お薬に不安がある場合は、自己判断でやめるのではなく、主治医にご相談ください。お薬の種類を変えたり、治療計画を見直したりすることもできます。

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参考文献

  • 日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版
  • 顎骨壊死検討委員会「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」
  • Shane E, et al. Atypical subtrochanteric and diaphyseal femoral fractures: second report of a task force of the ASBMR. J Bone Miner Res. 2014;29(1):1-23.
  • Black DM, et al. Bisphosphonates and fractures of the subtrochanteric or diaphyseal femur. N Engl J Med. 2010;362(19):1761-1771.
  • Khan AA, et al. Diagnosis and management of osteonecrosis of the jaw: a systematic review and international consensus. J Bone Miner Res. 2015;30(1):3-23.
  • 骨粗鬆症財団「骨粗鬆症について」https://www.jpof.or.jp

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。

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医療監修

加藤裕幸整形外科医・医籍登録 409723号

東海大学医学部付属病院/湘陽かしわ台病院

最終更新:2026年3月18日

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