骨粗鬆症でいちばん避けたいのは骨折で、骨折の多くは転倒がきっかけで起こります。骨を強くするのと同じくらい、転ばないことが骨折予防になります。なぜ転倒が危険なのか、転倒を防ぐために今日からできることは何かを、順にまとめました。
骨折の最大の原因は転倒です。バランス感覚と筋力を維持する方法を年齢別にご紹介します。
骨粗鬆症でいちばん避けたいのは骨折で、骨折の多くは転倒がきっかけで起こります。骨を強くするのと同じくらい、転ばないことが骨折予防になります。なぜ転倒が危険なのか、転倒を防ぐために今日からできることは何かを、順にまとめました。
骨粗鬆症があるだけでは、骨は折れません。骨折が起きるのは、弱くなった骨に力が加わったときで、多くの場合それは転倒です。
高齢者の大腿骨近位部(太ももの付け根)の骨折は、90%以上が転倒によって起きています。骨粗鬆症のある方は、健康な方より小さな衝撃でも骨折しやすいため、転ばないことが骨折予防の有効な手段のひとつになります。

骨を強くする治療と、転ばない体づくり。骨折予防には、この2つを両方そろえる必要があります。
転倒で骨折が起きやすい部位は、主に3か所です。
もっとも深刻な骨折です。横向きに転んだときに起きやすく、多くの場合手術が必要になります。入院が長引き、その後の生活に大きく響くことがあります。
圧迫骨折と呼ばれ、背中が丸くなったり、身長が低くなったりする原因になります。転倒だけでなく、重いものを持ち上げる、くしゃみをするといった日常の動作でも起きることがあります。
転んで手をついたときに起きやすい骨折です。比較的治りやすいものの、治るまでは日常生活に不便が出ます。

転倒による大腿骨骨折は、寝たきりの原因として最も多いもののひとつです。転ばない対策は、将来も自分で暮らせる生活を守ることになります。
年齢とともに転びやすくなるのには、いくつかの理由があります。
下肢(かし=脚)の筋力が弱くなると、つまずいたときに体を支えきれなくなります。歩くときや姿勢を保つときに特に働くのが、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)とふくらはぎの筋肉です。
体のバランスは、内耳の平衡器官、目からの情報、足の裏の感覚など、いくつもの仕組みが連携して保っています。年齢とともにこれらの働きがゆるやかに変わり、バランスを崩しやすくなります。
白内障や老眼などで、段差や障害物が見えにくくなることがあります。夜間のトイレ移動で転倒する方が多いのは、暗さと視力の問題が重なるためです。
一部のお薬(睡眠薬、抗不安薬、血圧を下げる薬など)は、ふらつきや眠気の原因になることがあります。複数の薬を飲んでいる方は、転倒リスクが高まる可能性があります。
外反母趾(がいはんぼし)、巻き爪、足の変形など、足のトラブルがあると歩き方が不安定になり、転びやすくなることがあります。
転倒は、ひとつの原因より、いくつかの要因が重なって起きることが多いものです。自分に当てはまるものがないか、振り返ってみましょう。
バランス力は、何歳からでもトレーニングで改善できます。以下の運動は、「骨を強くする運動」の記事で紹介した体操と合わせて行うと効果的です。
⚠️ 安全のために: バランス運動は必ず、テーブルや椅子の背など、つかまれるものの近くで行ってください。ふらついたときにすぐ支えられる環境で行うことが大切です。
いちばんシンプルなバランス運動です。
やり方:
目安:左右各30秒〜1分、1日3回
最初は手をしっかりつかんでかまいません。慣れてきたら、指先だけ触れる、手を離す、と段階的に進めてみましょう。目は開けたまま行ってください。
やり方:
目安:10歩を1セット、1日2〜3セット
綱渡りをするようなイメージです。最初はふらつくのが普通なので、必ず壁に手を添えて行ってください。
「骨を強くする運動」の記事でも紹介した「椅子スクワット」は、下肢の筋力とバランスを一度に鍛えられます。
やり方:
目安:5〜10回を1セット、1日2セット
手を使わずに立てるようになるのが目標です。最初はテーブルに手をついてもかまいません。
やり方:
目安:左右各5〜10歩を1セット、1日2セット
横方向の動きに使う筋肉(中殿筋)を鍛えます。歩くときの安定性が増し、つまずいたときに体を立て直す力がつきます。

バランス運動を続けると、転倒が減ることが、多くの研究をまとめた分析で確かめられています。一度にたくさんやるより、毎日少しずつ続けてください。
運動でバランス力を高めるのと並行して、転びにくい環境も整えましょう。高齢者の転倒の約6割は、家の中で起きています。
場所別に見ると、意外な結果が出ています。
| 場所 | 割合 |
|---|---|
| 居室(ふだん過ごす部屋) | 45.0% |
| 階段 | 18.7% |
| 台所・食堂 | 17.0% |
| 玄関 | 5.2% |
| 浴室・洗面所 | 5.4% |
いちばん多いのは、階段でも浴室でもなく、毎日いちばん長く過ごしている部屋です。危ないと思っている場所より、慣れた場所で転んでいます。

ご家族と一緒に、「うちの家は大丈夫かな?」と一度見て回ってみてください。
複数のお薬を飲んでいる方は、転倒との関係について主治医に相談してみてください。
とくに次のようなお薬は、ふらつきの原因になることがあります。
お薬を自己判断で中止しないでください。「転びやすい」と感じたら、主治医や薬剤師にそのことを伝え、お薬の調整が可能か相談してみましょう。
Q. 一度転んだことがあると、また転びやすいですか?
一度転んだ方は、怖さから体を動かさなくなり、筋力やバランス力がさらに落ちて、また転びやすくなる、という悪循環が知られています。怖いと感じるのは自然なことです。安全な環境でバランストレーニングを続けることが、この悪循環を断ち切る方法のひとつです。
Q. 杖を使ったほうがよいですか?
杖は転倒予防の有効な手段です。「杖を使うのは恥ずかしい」と感じる方もいらっしゃいますが、杖があると行動範囲が広がり、活動量を保ちやすくなります。必要かどうかは主治医やリハビリの専門家に相談してみてください。
Q. 転んだときの受け身のようなものはありますか?
完全な受け身は難しいですが、「手をつく」「お尻から落ちる」ことで、大腿骨の骨折リスクを減らせる可能性はあります。ただ、いちばん確実なのは転ばないことです。バランストレーニングと環境の工夫で、転倒そのものを防ぎましょう。
Q. ヒッププロテクターは効果がありますか?
ヒッププロテクター(大腿骨を保護するパッド入り下着)は、施設に入所している高齢者では、転倒時の大腿骨骨折リスクを減らす可能性があるとされています。ただし家庭では、着ける手間や不快感から続けにくいという報告もあります。関心のある方は主治医にご相談ください。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。
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医療監修
加藤裕幸(整形外科医・日本整形外科学会専門医)
最終更新:2026年8月4日