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転倒予防 — バランスと筋力トレーニング

骨⁠折の最大の原因は転倒です。バランス感覚と筋力を維持する方⁠法を年齢別にご紹介します。

骨粗鬆症でいちばん避けたいのは骨⁠折で、骨⁠折の多くは転倒がきっかけで起こります。骨を強くするのと同じくらい、転ばないことが骨⁠折予防になります。なぜ転倒が危険なのか、転倒を防ぐために今⁠日からできることは何かを、順にまとめました。

この動画はAI音声・映像技術を使用して制作しています。内容は整形外科専門医が監修しています。

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このページでわかること

  • なぜ高齢者の転倒が危険なのかがわかります
  • 転倒しやすくなる原因がわかります
  • バランス力を高める簡単なトレーニング法がわかります
  • 家の中の転倒リスクを減らすポイントが見つかります
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転倒が骨⁠折につながる理由

骨粗鬆症があるだけでは、骨は折れません。骨⁠折が起きるのは、弱くなった骨に力が加わったときで、多くの場合それは転倒です。

高齢者の大腿骨近位部(太ももの付け根)の骨⁠折は、90%以上が転倒によって起きています。骨粗鬆症のある方は、健康な方より小さな衝撃でも骨⁠折しやすいため、転ばないことが骨⁠折予防の有効な手段のひとつになります。

転倒予防で骨折を防ぐ

骨を強くする治療と、転ばない体づくり。骨⁠折予防には、この2つを両方そろえる必要があります。

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骨⁠折しやすい3つの場所

転倒で骨⁠折が起きやすい部⁠位は、主に3か所です。

大腿骨近位部(だいたいこつきんいぶ):太ももの付け根

もっとも深刻な骨⁠折です。横向きに転んだときに起きやすく、多くの場合手術が必要になります。入院が長引き、その後の生活に大きく響くことがあります。

脊椎(せきつい):背骨

圧迫骨⁠折と呼ばれ、背中が丸くなったり、身長が低くなったりする原因になります。転倒だけでなく、重いものを持ち上げる、くしゃみをするといった日常の動作でも起きることがあります。

橈骨遠位端(とうこつえんいたん):手首

転んで手をついたときに起きやすい骨⁠折です。比較的治りやすいものの、治るまでは日常生活に不便が出ます。

転倒で骨折しやすい3部位

転倒による大腿骨骨⁠折は、寝たきりの原因として最も多いもののひとつです。転ばない対策は、将来も自分で暮らせる生活を守ることになります。

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なぜ転びやすくなるの?

年齢とともに転びやすくなるのには、いくつかの理由があります。

筋力の低下

下肢(かし=脚)の筋力が弱くなると、つまずいたときに体を支えきれなくなります。歩くときや姿勢を保つときに特に働くのが、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)とふくらはぎの筋肉です。

バランス感覚の変化

体のバランスは、内耳の平衡器官、目からの情報、足の裏の感覚など、いくつもの仕組みが連携して保っています。年齢とともにこれらの働きがゆるやかに変わり、バランスを崩しやすくなります。

視力の変化

白内障や老眼などで、段差や障害物が見えにくくなることがあります。夜間のトイレ移動で転倒する方が多いのは、暗さと視力の問題が重なるためです。

薬の影響

一部のお薬(睡眠薬、抗不安薬、血圧を下げる薬など)は、ふらつきや眠気の原因になることがあります。複数の薬を飲んでいる方は、転倒リスクが高まる可能性があります。

足の問題

外反母趾(がいはんぼし)、巻き爪、足の変形など、足のトラブルがあると歩き方が不安定になり、転びやすくなることがあります。

転倒は、ひとつの原因より、いくつかの要因が重なって起きることが多いものです。自分に当てはまるものがないか、振り返ってみましょう。

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バランス力を高めるトレーニング

バランス力は、何歳からでもトレーニングで改善できます。以下の運動は、「骨を強くする運動」の記事で紹介した体操と合わせて行うと効果的です。

⚠️ 安全のために: バランス運動は必ず、テーブルや椅子の背など、つかまれるものの近くで行ってください。ふらついたときにすぐ支えられる環境で行うことが大切です。

トレーニング1:片足立ち

いちばんシンプルなバランス運動です。

やり方:

  1. テーブルや椅子の背に軽く手を添えて立ちます
  2. 片足をゆっくり床から5〜10cm上げます
  3. そのまま静かにバランスを保ちます
  4. 反対の足も同様に行います

目安:左右各30秒〜1分、1日3回

最初は手をしっかりつかんでかまいません。慣れてきたら、指先だけ触れる、手を離す、と段階的に進めてみましょう。目は開けたまま行ってください。

トレーニング2:タンデム歩行(つぎ足歩行)

やり方:

  1. 壁に沿って、手を壁に添えながら立ちます
  2. 片足のかかとを、もう片足のつま先につけるようにして一歩進みます
  3. これを繰り返して、まっすぐ歩きます

目安:10歩を1セット、1日2〜3セット

綱渡りをするようなイメージです。最初はふらつくのが普通なので、必ず壁に手を添えて行ってください。

トレーニング3:椅子からの立⁠ち⁠上がり(筋力+バランス)

「骨を強くする運動」の記事でも紹介した「椅子スクワット」は、下肢の筋力とバランスを一度に鍛えられます。

やり方:

  1. 椅子に座った状態から
  2. 手を使わずに(または最小限の力で)立⁠ち⁠上がります
  3. ゆっくり座ります

目安:5〜10回を1セット、1日2セット

手を使わずに立てるようになるのが目標です。最初はテーブルに手をついてもかまいません。

トレーニング4:横歩き

やり方:

  1. テーブルや壁に手を添えて立ちます
  2. 横方⁠向にゆっくり一歩踏み出します
  3. もう片方の足を引きつけます
  4. 5〜10歩進んだら、反⁠対⁠方⁠向に戻ります

目安:左右各5〜10歩を1セット、1日2セット

横方⁠向の動きに使う筋肉(中殿筋)を鍛えます。歩くときの安定性が増し、つまずいたときに体を立て直す力がつきます。

4つのバランストレーニング

バランス運動を続けると、転倒が減ることが、多くの研究をまとめた分析で確かめられています。一度にたくさんやるより、毎⁠日⁠少しずつ続けてください。

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家の中の転倒リスクを減らす

運動でバランス力を高めるのと並行して、転びにくい環境も整えましょう。高齢者の転倒の約6割は、家の中で起きています。

場所別に見ると、意外な結果が出ています。

場所 割合
居室(ふだん過ごす部⁠屋) 45.0%
階段 18.7%
台所・食堂 17.0%
玄関 5.2%
浴室・洗面所 5.4%

いちばん多いのは、階段でも浴室でもなく、毎日いちばん長く過ごしている部⁠屋です。危ないと思っている場所より、慣れた場所で転んでいます。

リビング・廊下

  • 電気コードやカーペットの端を整理する(つまずきの原因になります)
  • 小さな敷物(ラグ)は滑⁠り⁠止めをつけるか、片付ける(滑って転ぶ事故の多い原因です)
  • 通り道に物を置かない(夜間にトイレへ行くルートは特に注意)

浴室・トイレ

  • 浴室に手すりをつける(立⁠ち⁠上がりや移動のときの支えに)
  • 浴室の床に滑⁠り⁠止めマットを敷く(濡れた床はとても滑りやすいです)
  • トイレの近くにも手すりがあると、座る・立つ動作が楽になります

玄関・階段

  • 玄関の段差に手すりをつける(靴の着脱時にふらつきやすいため)
  • 階段には滑⁠り⁠止めテープを貼る(とくに降りるときの転落に注意)
  • 照明を十分に明るくする(暗い場所の段差は見えにくい)

夜間対策

  • フットライト(足元灯)を、廊下・寝室・トイレまでの動線に置く
  • 寝室のベッド周りに物を置かない(夜中に起きたときにつまずかないように)
  • トイレまでの経路を確認しておく(暗い中でも迷わず歩けるように)

転倒予防のための住環境の工夫

ご家族と一緒に、「うちの家は大丈夫かな?」と一⁠度⁠見て回ってみてください。

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足元にも注意を

靴選び

  • かかとが低く、底が滑りにくい靴を選びましょう
  • 足に合ったサイズを選びます(大きすぎる靴は脱げやすい)
  • スリッパより、かかとのある室内履きのほうが安全です

足のケア

  • 爪は伸びすぎると歩き方に影響します。定期的に整えましょう
  • 外反母趾や巻き爪が気になる方は、整形外科や皮膚科に相談してください
  • 足の感覚が鈍い方(糖尿病のある方など)は、足元を目で確かめる習慣をつけましょう
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お薬の見直し

複数のお薬を飲んでいる方は、転倒との関係について主治医に相談してみてください。

とくに次のようなお薬は、ふらつきの原因になることがあります。

  • 睡眠薬・抗不安薬
  • 血圧を下げる薬(起立性低血圧を起こすことがある)
  • 抗ヒスタミン薬(一部のアレルギー薬)
  • 一部の鎮痛薬

お薬を自己判断で中止しないでください。「転びやすい」と感じたら、主治医や薬剤師にそのことを伝え、お薬の調整が可能か相談してみましょう。

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今⁠日からできること

  • 片足立ちを30秒間やってみましょう。テーブルに手を添えてかまいません。今の自分のバランス力がわかります。
  • 家の中を「転ぶとしたらどこか」という目で見渡してみてください。コード、敷物、暗い場所など、思わぬところに転倒リスクが隠れているかもしれません。
  • スリッパを、かかとのある室内履きに変えてみましょう。脱げにくく、足が安定します。
  • トイレまでの夜間の経路に、フットライトを置いてみてください。100円ショップのセンサーライトでも十分です。
  • 次の受診時に、転びやすくなっていないかを主治医に相談してみましょう。お薬の影響や視力の変化など、確かめられることがあります。
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よくある質問

Q. 一度転んだことがあると、また転びやすいですか?

一度転んだ方は、怖さから体を動かさなくなり、筋力やバランス力がさらに落ちて、また転びやすくなる、という悪循環が知られています。怖いと感じるのは自然なことです。安全な環境でバランストレーニングを続けることが、この悪循環を断ち切る方⁠法のひとつです。

Q. 杖を使ったほうがよいですか?

杖は転倒予防の有効な手段です。「杖を使うのは恥ずかしい」と感じる方もいらっしゃいますが、杖があると行動範囲が広がり、活動量を保ちやすくなります。必要かどうかは主治医やリハビリの専門家に相談してみてください。

Q. 転んだときの受け身のようなものはありますか?

完⁠全な受け身は難しいですが、「手をつく」「お尻から落ちる」ことで、大腿骨の骨⁠折リスクを減らせる可能性はあります。ただ、いちばん確実なのは転ばないことです。バランストレーニングと環境の工夫で、転倒そのものを防ぎましょう。

Q. ヒッププロテクターは効果がありますか?

ヒッププロテクター(大腿骨を保護するパッド入り下着)は、施設に入所している高齢者では、転倒時の大腿骨骨⁠折リスクを減らす可能性があるとされています。ただし家庭では、着ける手間や不快感から続けにくいという報告もあります。関心のある方は主治医にご相談ください。

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参考文献

  • 日⁠本整形外科学会「転倒予防」https://www.joa.or.jp
  • 日⁠本骨粗鬆症学会 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版
  • 厚生労働省「介護予防マニュアル」
  • 日⁠本転倒予防学会「転倒予防のための運動指導」
  • 日⁠本老年医学会「高齢者の転倒予防ガイドライン」
  • 国民生活センター「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故 — 高齢者編 —」平成25年3月(内閣府『平成2⁠9⁠年⁠版⁠ ⁠高⁠齢⁠社⁠会⁠白⁠書』所収)
  • American Geriatrics Society / British Geriatrics Society "Prevention of Falls in Older Persons" Clinical Practice Guideline
  • Parkkari J, et al. Majority of hip fractures occur as a result of a fall and impact on the greater trochanter of the femur. Calcif Tissue Int. 1999;65(3):183-7(PMID: 10441647)
  • Sherrington C, et al. Exercise for preventing falls in older people living in the community. Cochrane Database Syst Rev. 2019;1:CD012424(PMID: 30703272)

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。

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