「先生に"血液検査で骨の様子を見ましょう"と言われたけれど、何を調べているの?」——骨粗鬆症の治療では、骨密度検査(DEXA検査)に加えて、血液検査や尿検査で「骨代謝マーカー」という値を測ることがあります。骨の中で今何が起きているかを、数値で教えてくれる検査です。この記事では、骨代謝マーカーの意味と見方を、できるだけわかりやすくお伝えします。
骨形成マーカー(P1NP、BAP)と骨吸収マーカー(TRACP-5b、NTX)の意味を「解体チーム・建設チーム」のたとえでやさしく解説します。
「先生に"血液検査で骨の様子を見ましょう"と言われたけれど、何を調べているの?」——骨粗鬆症の治療では、骨密度検査(DEXA検査)に加えて、血液検査や尿検査で「骨代謝マーカー」という値を測ることがあります。骨の中で今何が起きているかを、数値で教えてくれる検査です。この記事では、骨代謝マーカーの意味と見方を、できるだけわかりやすくお伝えします。
骨の検査というと、骨密度検査(DEXA検査)を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。骨密度検査(DEXA検査)はとても大切な検査ですが、骨代謝マーカーとは見ているものが少し違います。
わかりやすく言えば、こういう違いです。
骨密度検査(DEXA検査)が「骨の量がどのくらいか」を教えてくれるのに対して、骨代謝マーカーは「骨が今どのくらいのペースで壊されて、どのくらいのペースで作られているか」を教えてくれます。
たとえるなら、骨密度検査(DEXA検査)は「今の貯金残高」、骨代謝マーカーは「今月の入金と出金の動き」を見ているようなものです。
どちらか一方だけでは全体像がつかめません。両方を合わせて見ることで、主治医はより的確な判断ができるようになります。
骨は生きているの記事で、骨には「解体チーム(破骨細胞)」と「建設チーム(骨芽細胞)」がいることをお伝えしました。骨代謝マーカーも、この2つのチームに対応して大きく2つに分かれます。
建設チーム(骨芽細胞)が新しい骨をどのくらい作っているかを反映するマーカーです。建設チームが活発に働いているほど、数値が高くなります。
| マーカー名 | 読み方 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| P1NP(ピーワンエヌピー) | I型プロコラーゲン-N-プロペプチド | 骨のコラーゲンを作るときに出る「建設の副産物」 |
| BAP(ビーエーピー) | 骨型アルカリホスファターゼ | 建設チームが出す「仕事中の目印」のような酵素 |
基準値の目安:
※ 基準値は測定方法や検査機関によって異なります。検査結果に記載されている基準範囲と照らし合わせてご確認ください。

建設チームががんばって骨を作っているときほど、P1NPやBAPの値が上がります。骨を「つくるお薬」を使っているとき、この値が上がっていれば、お薬が働いているサインです。
解体チーム(破骨細胞)が骨をどのくらい壊しているかを反映するマーカーです。解体チームが活発に働いているほど、数値が高くなります。
| マーカー名 | 読み方 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| TRACP-5b(トラップ・ファイブビー) | 酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ-5b | 解体チームが出す「解体作業中の目印」のような酵素 |
| NTX(エヌティーエックス) | I型コラーゲン架橋N-テロペプチド | 骨が壊されたときに出る「がれき」のかけら |
| CTX(シーティーエックス) | I型コラーゲン架橋C-テロペプチド | NTXと同じく、骨の「がれき」の別のかけら |
基準値の目安:
※ 基準値は測定方法や検査機関によって異なります。閉経後女性では骨代謝が活発になるため、閉経前よりも基準範囲が広くなる傾向があります。

骨を「まもるお薬」は、解体チームの働きをおだやかにするお薬です。お薬を始めた後にTRACP-5bやNTXの値が下がっていれば、解体のスピードがゆっくりになっている=お薬が効いているサインです。
骨代謝マーカーの全体像を、建物のたとえでまとめてみましょう。
【骨の中で起きていること】
建設チーム(骨芽細胞)が新しい骨を作る
└→ 建設の副産物として P1NP や BAP が出る
└→ 血液検査で測れる = 骨形成マーカー
解体チーム(破骨細胞)が古い骨を壊す
└→ 解体のがれきとして NTX や CTX が出る
└→ 解体チーム自身から TRACP-5b が出る
└→ 血液検査・尿検査で測れる = 骨吸収マーカー
骨代謝マーカーは、建設現場の「工事日報」のようなもの。建設チームと解体チーム、それぞれがどのくらい働いたかを数値で報告してくれています。
骨粗鬆症の血液検査では、骨代謝マーカーと一緒に、体の全体的な状態を確認するための項目も調べることが一般的です。検査結果の用紙を見ると、マーカー以外にもいくつかの数値が並んでいることがあります。それぞれの意味を簡単にご紹介します。
| 検査項目 | 何を見ているか | なぜ骨粗鬆症で調べるのか |
|---|---|---|
| カルシウム(Ca) | 血液中のカルシウム濃度 | お薬(とくにデノスマブやテリパラチド)の影響で低下することがあるため、定期的に確認します |
| リン(P) | 血液中のリン濃度 | カルシウムとのバランスが骨の健康に関わります。腎臓の働きとも関連します |
| 25(OH)ビタミンD | 体内のビタミンDの蓄え | ビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収が悪くなり、骨が弱くなりやすくなります。日本人の多くはビタミンDが不足気味とされています |
| クレアチニン(Cr)/ eGFR | 腎臓の働き具合 | 腎臓の働きによって使えるお薬が変わることがあります。また、腎機能が低下するとカルシウムやリンのバランスにも影響します |
| ALP(アルカリホスファターゼ) | 肝臓や骨などの酵素活性 | 骨由来のALPは骨形成の目安になります。BAPはALPの中の「骨」由来の部分だけを測ったものです |
| intact PTH | 副甲状腺ホルモンの量 | 骨のカルシウムを調節するホルモンです。この値が高いと、骨からカルシウムが溶け出しやすい状態を示すことがあります |

これらの検査項目は、主治医がお薬を選ぶときや、治療の安全性を確認するときに使います。たとえば、腎臓の働き具合(eGFR)によっては一部のお薬が使えない場合がありますし、ビタミンDが不足していればお薬の効果が十分に発揮されにくいことがあります。
「数値がたくさんあって難しそう」と感じるかもしれませんが、全部を覚える必要はありません。大切なのは、主治医が何をもとに判断しているかをなんとなく知っておくこと。それだけで、先生の説明がぐっと聞き取りやすくなります。
カルシウムやビタミンDの食事面での工夫については、カルシウムとビタミンDの記事でくわしくご紹介しています。
骨代謝マーカーが特に役立つのは、お薬が効いているかどうかを早めに確認できるという点です。
骨密度検査(DEXA検査)で骨密度の変化がはっきりわかるまでには、通常1年以上かかります。でも、骨代謝マーカーなら治療開始から3〜6か月で変化が見えることがあります。
治療の全体像でお伝えしたように、骨粗鬆症のお薬には「つくるタイプ」と「まもるタイプ」があります。それぞれで注目するマーカーと、期待される動きが異なります。
| お薬のタイプ | 注目するマーカー | 期待される動き | 確認の目安 |
|---|---|---|---|
| つくるお薬(テリパラチドなど) | P1NP | 上がる ↑ | 数週間〜数か月 |
| まもるお薬(ビスフォスフォネートなど) | TRACP-5b / NTX | 下がる ↓ | 3〜6か月 |
| ロモソズマブ | P1NP + TRACP-5b | P1NP↑ TRACP-5b↓ | 治療中〜切替後 |
お薬の種類によって注目するマーカーが異なります。「私の検査では何を測っているの?」と気になったら、主治医に聞いてみてください。
骨代謝マーカーの検査は、一般的な血液検査で行われます。特別な準備は必要ありませんが、いくつか注意点があります。
採血は普段の血液検査と同じです。骨密度検査のように特別な装置は必要ありません。
骨代謝マーカーの保険適用は、以下のタイミングに限られています。
このため、年に何回も測るものではありません。主治医が適切なタイミングで検査を行い、お薬の効果を確認してくれます。
骨代謝マーカーの結果を見るとき、いちばん大切なのは数値そのものよりも「前回からの変化」です。
数値の絶対値(高い・低い)よりも、「前回と比べてどう変わったか」が重要です。骨密度検査(DEXA検査)と同じ考え方ですね。
マーカーに十分な変化が見られない場合、主治医はいくつかの可能性を考えます。
マーカーの変化が小さいからといって、すぐに「お薬が効いていない」とは限りません。主治医が総合的に判断しますので、検査結果について気になることがあれば遠慮なくご相談ください。
Q. 骨代謝マーカーの検査は必ず受けるものですか?
すべての方が受けるわけではありません。主治医が治療方針の判断に必要と考えた場合に行われます。とくに骨形成促進薬(骨をつくるお薬)を使っている方や、治療効果を早めに確認したい場合に活用されることが多いです。
Q. 検査結果の数値は自分で判断できますか?
上の表にある基準値を参考に、ご自身の数値がおおまかにどの位置にあるかは確認できます。ただし、基準値は測定方法や検査機関によって多少異なりますし、お薬の種類や治療の段階によって「高いほうがよい」場合も「低いほうがよい」場合もあります。数値の意味を正確に判断するには、主治医に確認していただくのが確実です。
Q. 骨密度検査(DEXA検査)があれば、骨代謝マーカーは不要ですか?
どちらも大切な検査です。骨密度検査(DEXA検査)は「今の骨の量」を見る検査ですが、変化が見えるまでに時間がかかります。骨代謝マーカーは「骨の中の動き」を早い段階で確認できるため、お薬の効果をいち早く知る手がかりになります。たとえるなら、骨密度検査(DEXA検査)は年に1回の貯金残高の確認、骨代謝マーカーは途中の入出金明細の確認、のようなものです。
Q. 検査費用はどのくらいですか?
保険適用の場合、骨代謝マーカー1項目あたりの自己負担(3割)はおおむね数百円〜1,000円程度です。ただし、検査できる回数には保険上の制限がありますので、詳しくは主治医や医療機関の窓口にご確認ください。
Q. 骨代謝マーカーは保険で何回まで受けられますか?
骨粗鬆症の治療において、骨代謝マーカーの保険適用は治療開始前に1回、開始後6か月以内に1回が基本です。お薬を変更した場合は、変更後6か月以内にもう1回測ることができます。年に何度も受ける検査ではなく、主治医が適切なタイミングで検査を行います。
Q. マーカーの値が高いと骨粗鬆症がひどいということですか?
必ずしもそうではありません。骨代謝マーカーは「今の骨の動き」を見るものであり、「骨粗鬆症の重さ」を直接示すものではありません。たとえば、骨をつくるお薬を使っている方は、骨形成マーカーが高くなることが期待されます。数値の意味はお薬の種類や治療の段階によって変わりますので、主治医に確認していただくのが確実です。
次の診察で、こんな質問をしてみてはいかがでしょうか。
「検査の意味がわからなくて不安」という気持ちはとても自然なことです。この記事を読んでいただいた今なら、先生の説明がきっと聞き取りやすくなるはずです。
検査結果を見て不安に思っても、ご自身の判断でお薬を変えたりやめたりしないでください。必ず主治医にご相談ください。
この記事で骨代謝マーカーの意味がわかったら、次のステップはご自身の数値を記録して、変化を追いかけることです。
1回の検査結果を見て「基準範囲内だから大丈夫」と確認する——それはこの記事で学んだ知識で十分できます。でも、3か月前と比べてP1NPがどう変わったか、半年間でTRACP-5bがどのくらい下がったかを見るには、数値を記録して並べる必要があります。
no-porosisのメンバーシップでは、検査のたびに数値を入力するだけで:
1回の数値は「点」。つなげると「線」になります。お薬が効いているかどうかは、この「線」が教えてくれます。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。
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医療監修
加藤裕幸(整形外科医・医籍登録 409723号)
東海大学医学部付属病院/湘陽かしわ台病院
最終更新:2026年3月18日
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