骨折の痛みを和らげる — お薬と日常の工夫|骨活ガイド
💊treatment

骨折の痛みを和らげる — お薬と日常の工夫

圧迫骨折の痛みの特徴、痛み止めの種類と高齢者への注意点、お薬以外で痛みを和らげる方法を解説します。

「痛みはいつまで続くの?」「この痛み止めは安全なの?」「湿布は効くの?」——圧迫骨折の痛みは、日常生活を大きく変えてしまうことがあります。

痛みの管理は、骨折治療のいちばん大切な柱のひとつです。なぜなら、痛みを我慢しすぎると動けなくなり、筋力が落ち、骨がさらに弱くなるという負のスパイラルに入ってしまうからです。

この記事では、圧迫骨折の痛みの性質と、痛みを和らげるためのお薬と日常の工夫をお伝えします。

1

このページでわかること

2

圧迫骨折の痛みの特徴

圧迫骨折の痛みにはいくつかの特徴があります。

急性期の痛み(骨折直後〜数週間)

  • 背中や腰の強い痛みが突然始まります
  • 動くと痛みが強くなり、寝返りや起き上がりがとくに痛い
  • じっとしていれば比較的楽なことが多い
  • 痛みの場所は骨折した背骨の付近です

回復期の痛み(数週間〜数か月)

  • 急性期ほどの強い痛みは徐々に和らいでいきます
  • 「良い日」と「悪い日」が交互に来ることがあります
  • 長時間同じ姿勢でいると痛みが出やすい
  • 天候や気温の変化で痛みが変わると感じる方もいます

慢性期の痛み(3か月以上)

  • 鈍い痛みや違和感が残ることがあります
  • 疲れたときや動きすぎたときに痛みが出やすい
  • 背中の筋肉のこわばりや痛みが中心になることも

痛みの感じ方には個人差が大きいことを知っておいてください。「あの人は1か月で痛みが取れたのに、私はまだ痛い」と比べる必要はありません。

3

大切な前提 — 痛み止めと骨折治療は別のもの

最初に大切なことをお伝えします。

痛み止めは、痛みを和らげるお薬です。骨折そのものを治すお薬ではありません。

痛み止めを飲んで楽になっても、それは骨がくっついたわけではありません。痛みが取れたからとコルセットを外したり、激しく動いたりすると、骨折が悪化する危険があります。

同時に、痛みの管理は回復にとってとても重要です。痛みが強すぎると:

  • 動けなくなり、筋力が落ちる
  • 食欲がなくなり、栄養が不足する
  • 眠れなくなり、心身が疲弊する
  • 気持ちが落ち込み、回復への意欲が下がる

「痛みを我慢する」ことが美徳ではありません。 適切に痛みをコントロールしながら、安全に体を動かしていくことが、回復への近道です。

4

お薬の種類と特徴

圧迫骨折の痛みに使われるお薬をご紹介します。どのお薬が適しているかは、痛みの程度や持病によって主治医が判断します。

アセトアミノフェン(カロナールなど)

  • もっとも基本的な痛み止めです
  • 胃への負担が少なく、高齢の方にも比較的安全に使えます
  • 効き目はおだやかで、強い痛みには不十分なことも
  • 肝臓への影響があるため、用量を守ることが大切です
  • お酒との併用は避けてください

NSAIDs(エヌセイズ)— 消炎鎮痛薬

ロキソプロフェン(ロキソニン)、ジクロフェナク(ボルタレン)、セレコキシブ(セレコックス)などがこのグループです。

  • 炎症を抑える効果があり、急性期の痛みに効果的です
  • アセトアミノフェンより強い鎮痛効果が期待できます
  • 注意点が多いお薬です:
    • 胃腸への負担(胃潰瘍のリスク)→ 胃薬と一緒に処方されることが多い
    • 腎臓への影響 → 腎機能が低下している方は要注意
    • 心血管系への影響 → 心臓の持病がある方は主治医に確認
  • できるだけ短い期間で使うことが推奨されています

神経の痛みに使うお薬

骨折により神経が圧迫されて、足のしびれや痛みがある場合に使われることがあります。

  • プレガバリン(リリカ)、ミロガバリン(タリージェ) — 神経の過敏な反応を抑えます
  • めまいや眠気が出やすいため、少ない量から始めて徐々に増やします
  • 転倒のリスクに注意してください

その他のお薬

  • 筋弛緩薬 — 背中の筋肉のこわばりを和らげます。眠気に注意
  • カルシトニン製剤 — 骨粗鬆症による骨折の痛みを和らげる効果が報告されています。注射で使います
  • トラマドール(トラマール) — より強い痛みに使われることがありますが、吐き気や眠気などの副作用に注意が必要です

[!warning] お薬の使い方で大切なこと

  • 処方されたお薬は、指示どおりの量とタイミングで飲んでください
  • 「痛くないから飲まない」ではなく、定期的に飲むことで痛みを安定させるのが効果的です
  • 市販の痛み止めを自己判断で追加しないでください。同じ種類の薬が重複する危険があります
  • 副作用が気になる場合は、自分でやめずに主治医に相談してください
5

お薬以外で痛みを和らげる方法

お薬と組み合わせることで、痛みをさらに和らげることができます。

温める

  • ホットパック、温かいタオル、貼るカイロなどが有効です
  • 慢性期の筋肉のこわばりや鈍痛に効果的
  • 骨折直後(急性期)は温めると炎症が悪化することがあるため、主治医に確認してください
  • 低温やけどに注意。直接肌に当てず、タオルを1枚挟みましょう

冷やす

  • 急性期(骨折直後〜数日)は、冷やすことで炎症と痛みを和らげられることがあります
  • 氷嚢や保冷剤をタオルに包んで、15〜20分程度当てます
  • 直接肌に当てないでください

姿勢の工夫

呼吸法

  • 痛みが強いとき、ゆっくりとした深呼吸は体の緊張をほぐしてくれます
  • 4秒かけて鼻から吸い、6秒かけて口から吐く——これを3〜5回繰り返します
  • 背中が丸くなっている方は、深呼吸で肺を広げる練習にもなります

リハビリテーション

  • 理学療法士の指導のもと、痛みを悪化させない範囲で体を動かすことが、長期的な痛みの改善に効果的です
  • 運動は痛みを和らげるホルモン(エンドルフィン)の分泌を促します
  • 回復期の運動の目安を参考にしてください
6

湿布・貼り薬について

日本では湿布(貼り薬)がとてもよく使われます。圧迫骨折の痛みにも処方されることがあります。

温湿布と冷湿布

  • 冷湿布(冷感タイプ):メントールなどの成分で冷たく感じます。急性期に使われることが多い
  • 温湿布(温感タイプ):カプサイシンなどの成分で温かく感じます。慢性期に使われることが多い
  • どちらを使うかは症状によります。主治医に確認してください

NSAIDs入りの湿布

  • ロキソプロフェン、ジクロフェナクなどの消炎鎮痛成分が入った湿布もあります
  • 飲み薬と同じ成分を含む場合があるため、飲み薬との併用について主治医に確認してください
  • 貼りすぎに注意(全身への吸収量が増えるため)

湿布を使うときの注意

  • 長時間貼りっぱなしにしない(肌トラブルの原因)
  • 同じ場所に続けて貼ると肌がかぶれやすくなります
  • コルセットの下に貼る場合は、コルセットのずれで位置がずれることがあります
7

痛みが長引く場合

多くの圧迫骨折は4〜6週間で痛みが大きく改善しますが、3か月以上痛みが続く場合は、以下の可能性があります。

骨がくっつかない(偽関節)

骨折した部分がうまくくっつかず、不安定なまま残っている状態です。動くたびに痛みが出ます。レントゲンやMRIで確認でき、手術が検討されることもあります。

新しい骨折が起きている

骨折後の最初の2年間はとくにリスクが高い時期です。痛みの場所が変わった場合は、新たな骨折の可能性があります。

筋肉の問題

骨折による長期の安静で筋肉が弱くなり、筋肉由来の慢性的な痛みが出ることがあります。この場合、リハビリテーションが効果的です。

神経の圧迫

背骨の変形が進むと、神経を圧迫することがあります。足のしびれや力が入りにくい場合は、早めに主治医に相談してください。

[!warning] すぐに受診してほしい痛み

  • 痛みが急に強くなった(改善していたのに悪化した)
  • 痛みの場所が変わった(新しい場所が痛い)
  • 足のしびれや脱力を伴う痛み
  • 痛み止めがまったく効かない
  • 発熱を伴う痛み

これらの場合は、次の予約を待たず、早めに受診してください。

8

主治医への質問リスト

  • 「今飲んでいる痛み止めは、このまま飲み続けて大丈夫ですか?」
  • 「痛み止めと骨粗鬆症のお薬は、一緒に飲んでも問題ありませんか?」
  • 「市販の湿布を使ってもいいですか?」
  • 「痛みが3か月以上続いています。追加の検査は必要ですか?」
  • 「痛み止めの量を減らしていくタイミングはいつですか?」
  • 「温めるのと冷やすの、どちらがいいですか?」
9

まとめ

ポイント 内容
痛みの管理は回復の柱 我慢は美徳ではない。適切に痛みを抑えることが回復を助けます
痛み止めと骨折治療は別物 痛みが取れても骨がくっついたわけではない。コルセットや安静は継続
高齢者にはアセトアミノフェンが基本 胃への負担が少なく比較的安全。NSAIDsは短期間が原則
お薬以外の工夫も大切 温める・冷やす・姿勢の工夫・深呼吸・リハビリテーション
3か月以上の痛みは要相談 偽関節、新たな骨折、神経圧迫の可能性。主治医に報告を
10

今日からできること

[!warning] お願い 現在処方されているお薬を、自己判断で変えたりやめたりしないでください。市販の痛み止めを追加する前に、必ず主治医にご相談ください。

  • 痛みの記録をつけてみましょう。 「朝は強い」「午後は楽」「動くと痛い」「じっとしていると楽」など、パターンを知ることで主治医への報告がしやすくなります。
  • 「我慢しないで」を合言葉にしましょう。 痛みを我慢して動けなくなるよりも、適切に痛みを抑えて少しでも体を動かすほうが回復につながります。
  • お薬の飲み合わせを確認しましょう。 お薬手帳を見直して、痛み止めと他のお薬の組み合わせに問題がないか、薬剤師や主治医に確認してみてください。
11

よくある質問

Q. 痛み止めは飲み続けると体に悪いですか?

お薬の種類によります。アセトアミノフェンは比較的安全ですが、NSAIDs(ロキソニンなど)は長期使用で胃腸や腎臓への影響が懸念されます。痛みが落ち着いてきたら、主治医と相談して減量や中止のタイミングを決めましょう。

Q. 市販の痛み止めを飲んでもいいですか?

処方薬を飲んでいる場合は、自己判断で市販薬を追加しないでください。同じ成分が重複する危険があります。市販薬を使いたい場合は、お薬手帳を持って薬局で相談するか、主治医に確認してください。

Q. お酒を飲んでもいいですか?

アセトアミノフェンを服用中のアルコールは肝臓への負担が大きく、避けてください。NSAIDsも胃への影響が強まるため、飲酒は控えめにしましょう。服用中の飲酒については主治医に確認してください。

Q. 温めるのと冷やすの、どちらがいいですか?

一般的には、骨折直後(急性期)は冷やす、痛みが落ち着いた時期(慢性期)は温めるのが基本です。ただし、個人差があるため、「自分が楽に感じるほう」を選ぶのもひとつの方法です。迷ったら主治医に相談してください。

Q. 痛みで眠れません。どうしたらいいですか?

痛みで眠れないことは回復の妨げになるため、我慢せず主治医に伝えてください。就寝前に痛み止めを飲むタイミングを調整したり、寝る姿勢の工夫で痛みを軽減できることもあります。必要に応じて、睡眠を助けるお薬が処方されることもあります。

12

次に読む

13

参考文献

  • 日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団 編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版』ライフサイエンス出版
  • Mattia C, et al. Pharmacological options for pain control in patients with vertebral fragility fractures. Front Pharmacol. 2022;13:1004097.
  • Knopp-Sihota JA, et al. Calcitonin for treating acute and chronic pain of recent and remote osteoporotic vertebral compression fractures. Cochrane Database Syst Rev. 2020;9.
  • Shen X, et al. Conservative treatments in the management of acute painful vertebral compression fractures: a systematic review and network meta-analysis. JAMA Netw Open. 2024;7(10).
  • 日本整形外科学会「骨粗鬆症」https://www.joa.or.jp
  • 骨粗鬆症財団「骨粗鬆症と骨折について」https://www.jpof.or.jp

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。痛みの管理については、主治医にご相談ください。

14

利益相反の開示

本サイトの運営にあたり、○○○○より創設スポンサーとしてのご支援をいただいています。記事の内容は編集部が独立して作成しており、スポンサーによる内容への関与はありません。詳しくは利益相反ポリシーをご覧ください。

医療監修

加藤裕幸整形外科医・医籍登録 409723号

東海大学医学部付属病院/湘陽かしわ台病院

最終更新:2026年3月21日

利益相反の開示

本サイトは○○○○の協賛を受けています。記事の内容は監修医の医学的判断に基づいており、協賛企業が編集内容に関与することはありません。