骨折してから気持ちが晴れない、動くのがこわい、家族に申し訳ない。どれも骨折へのごく自然な反応です。一人で抱えないでください。
骨折の治療では、つい体のことばかりに目が向きます。でも外来で患者さんと話していると、つらいのは体だけではないと気づかされます。
「先生、なんだか、気持ちが沈んでしまって……。こんなこと、整形外科で言ってもいいのかしら」
もちろん、いいんです。「また折れたらどうしよう」という不安、「前のように動けない」という落ち込み、「家族に迷惑をかけている」という申し訳なさは、骨折を経験した多くの方が抱える、正常な心の反応です。あなただけではありません。
心が沈むのは、弱さではありません。
「動くのがこわい」も、自然なこと
骨折のあと、「動いたら、また折れるのでは」とこわくなる方はとても多くいます。痛みの記憶が、体を動かすことをためらわせます。
でも、こわくて動かないでいると筋力が落ち、かえって次の骨折に近づいてしまうことがあります。いきなり元に戻ろうとしなくていいので、「今日は玄関まで」「明日はポストまで」と少しずつ広げてください。続けるうちに、こわさは少しずつほどけていきます。心のケアの具体的な方法は、こちらの記事にまとめています。
「ごめんね」より、「ありがとう」を
「家族に迷惑をかけている」という気持ちを強く感じる方は多いです。トイレや着替えに手助けがいると、情けなくて、申し訳なくて。
でも、助けを求めるのは弱さではありません。風邪のときに薬を飲むのと同じ、当たり前のことです。ご家族の多くは迷惑だなんて思っておらず、むしろ何を手伝えばいいか分からずにいます。「靴下を取って」と具体的にお願いするほうが、お互い楽になります。「ごめんね」より「ありがとう」を、少し多めに言ってみてください。
がんばりが足りないのではありません。気分の晴れない日が2週間以上続いたら、主治医に話してください。
今日できること
今日は、ふたつ。
- 今の気持ちを、誰かひとりに話してみる
- 今日できたことを、ひとつだけ見つける(お茶を入れた、それで十分です)
次回は「折れても」の章の最後です。治療を続けるうえで現実的な、お金の不安についてお話しします。
この連載は一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療については、必ず主治医にご相談ください。
監修:加藤裕幸(整形外科専門医・日本脊椎脊髄病学会指導医)