「検査では正常って言われたんです。それなのに、折れてしまって……」その戸惑いは、もっともです。実は、骨の強さは、骨密度の数字だけでは決まりません。
外来で、ときどき、とても困惑した表情の方に出会います。
「骨密度の検査では『正常範囲』と言われていたんです。安心していたのに、転んだだけで折れてしまって……どうして?」
裏切られたような、納得のいかない気持ち。当然だと思います。「正常」と言われれば、誰だって安心します。それなのに折れてしまった——その「なぜ?」には、ちゃんと理由があります。
骨の強さは、「量」だけでなく「質」でも決まります。数字が正常でも、油断はできません。
骨の強さは、「量」と「質」でできている
骨の強さは、ふたつの要素で決まります。ひとつは骨密度(量)——カルシウムがどれだけ詰まっているか。検査で測るのは、こちらです。
そしてもうひとつが、骨質(質)——骨の中の構造がしなやかで丈夫かどうか。こちらは、ふつうの検査の数字には表れません。
たとえるなら、コンクリートの量が「骨密度」、中の鉄筋の質が「骨質」。コンクリートがたっぷりでも、鉄筋がもろければ、建物は思わぬ力で崩れてしまう。骨密度が正常でも折れることがあるのは、この「質」が落ちていることがあるからです。
とくに気をつけたい方がいます
骨質は、目に見えないぶん見落とされがちですが、とくに低下しやすい方がいます。
糖尿病のある方は、骨密度がむしろ正常〜高めに出ることが多いのに、骨折のリスクは高いことがわかっています。また、ぜんそくやリウマチなどでステロイドのお薬を長く使っている方、そして見過ごされがちですが男性も、注意が必要です。
ご自身やご家族に当てはまる方は、それぞれ記事でくわしくお話ししています。
📖 骨粗鬆症と糖尿病 — 骨密度が正常でも骨折しやすい? 📖 ステロイドと骨粗鬆症 / 男性の骨粗鬆症
「正常」でも、油断はしない。でも、責めない
ここで大切なのは、ふたつのことです。ひとつは、「正常」と言われても、油断はしないこと。とくに上にあげた持病のある方は、数字だけで安心せず、骨折歴や生活の中の転びやすさも含めて、主治医と一緒に考えていくことが大切です。
そしてもうひとつ——もしすでに折れてしまった方がいたら、ご自身を責めないでください。骨質は、努力で見えるものではありませんでした。気づきにくい要素があった、ただそれだけのことです。
「正常なのに折れた」のは、あなたの不注意ではありません。数字だけでは見えない理由が、そこにあったのです。
今日できること
今日は、こう覚えておいてください。
「数字が正常でも、骨折のしやすさは人それぞれ。持病があれば、なおさら主治医と相談を」
もし糖尿病やステロイド治療など心当たりがあれば、次の受診で「骨は大丈夫でしょうか」と一言、聞いてみてください。
ここまでで、「知る」「調べる」のステップを歩いてきました。次回からはいよいよ「防ぐ」——今日からできる、食事のお話に入っていきます。
この連載は一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療については、必ず主治医にご相談ください。
監修:加藤裕幸(整形外科専門医/東海大学医学部 医学教育学 教授)