骨折のほとんどは「転倒」から起きます。骨を強くするのと同時に、転ばない体と転ばない家を整えましょう。
骨粗鬆症のお話をしていると、つい「骨をどう強くするか」に意識が向きます。でも、外来で私がもうひとつ、必ずお伝えしたいことがあります。
「骨を強くするのと、転ばないこと。実は、この2つはセットなんですよ」
骨粗鬆症があっても、骨はひとりでに折れたりはしません。折れるのは、弱った骨に力が加わったときで、その多くはちょっとした転倒です。転ばないことは、最も効果的な骨折予防のひとつです。
かかとのある室内履きと、手すり。どちらも転倒を防ぐ工夫です。
「転ぶのが怖い」その気持ちも、大切に
一度転んでしまうと、「また転ぶかもしれない」という怖さから、体を動かさなくなる方がいます。でも、動かないでいると筋力やバランスがさらに落ちて、かえって転びやすくなります。この悪循環は、よく知られています。
怖いと感じるのは自然なことです。安全な場所での簡単なバランス練習を重ねると、その怖さも少しずつ和らぎます。たとえば、テーブルに手を添えての片足立ちを30秒。これだけでも、転ばない力は育ちます。やり方は次の記事に載せています。
家の中こそ、見直しどき
高齢の方の転倒の多くは、家の中で起きています。慣れた場所なので、つい足元への注意が薄れます。
電気コードや小さな敷物の端、暗い廊下、滑りやすい浴室。こうした“いつもの風景”の中に、転倒のもとは隠れています。今日、家の中を「転ぶとしたら、どこだろう」という目で、ぐるりと見渡してみてください。ご家族と一緒に見れば、自分では気づかない場所も見つかります。
スリッパを、かかとのある室内履きに。夜のトイレまでの道に、足元灯をひとつ。そんな小さな工夫で十分です。
今日できること
今日は、ふたつ。
- テーブルに手を添えて、片足立ちを30秒
- 家の中を「転ぶとしたら、どこか」という目でぐるりと見渡す
ここまでで、「防ぐ」ステップを歩いてきました。食事、日光、運動、そして転ばない暮らし。次回からは、もし骨が折れてしまったら、その先をどう支えるかの話に入ります。最初は、気づかないうちに進む背骨の変化です。
この連載は一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療については、必ず主治医にご相談ください。
監修:加藤裕幸(整形外科専門医・日本脊椎脊髄病学会指導医)