毎日きちんと牛乳を飲んできた。それなのに「骨が弱っています」と言われた——その戸惑いと、少しの落胆。あなたの努力は、決して無駄ではありません。
外来で骨密度の結果をお伝えすると、こうおっしゃる方がいます。
「私、牛乳だけは毎日欠かさず飲んできたんです。なのに、どうして……」
その声には、戸惑いと、少しの落胆がにじんでいます。健康のためにと、まじめに続けてきた。それなのに報われなかったように感じる——とても自然なお気持ちだと思います。
でも、はっきりお伝えします。あなたのその習慣は、間違っていません。
カルシウムは大切な「材料」。でも、ひとりでは骨を作れません。
カルシウムは「材料」、でも工事には仲間が要る
カルシウムは、骨をつくる大切な材料です。これは間違いありません。ただ、材料があるだけでは、家は建ちません。材料を運び、組み立て、しっかり固定してくれる“仲間”が必要なのです。
骨の場合、その仲間とは——
- カルシウムの吸収を助ける ビタミンD
- 骨にカルシウムを定着させる ビタミンK
- 骨の土台になる タンパク質
- 骨に「強くなれ」と刺激を送る 運動
牛乳は、このチームの大事な一員。でも、ひとりだけではどうしても力を出しきれないのです。
さらに、閉経のあとの骨の変化は、ホルモンの影響が大きく、食事の工夫だけでは追いつかないこともあります(前回の「閉経してから、何かが変わった」でお話ししました)。だから、牛乳を飲んでいても骨が弱ることは、十分にありえます。あなたのせいではありません。
「知っているつもり」を、責めないで
骨粗鬆症には、こうした「よかれと思っていたのに、少し違った」という思い込みが、ほかにもいくつかあります。「痛くないから大丈夫」「年だから仕方ない」「サプリだけで十分」——どれも、ごく自然に信じてしまうものばかりです。
その一つひとつを、記事のほうで「なぜそう思われがちなのか」も含めて、やさしく整理しています。
📖 骨粗鬆症のよくある誤解 — 知っているつもりが実は違う?
思い込みに気づくことは、恥ずかしいことではありません。新しく知れた、というだけのことです。
あなたの努力に、仲間を足すだけ
ですから、これまでの習慣をやめる必要はありません。牛乳は、これからも続けてください。そこに、ビタミンDのための日なたの散歩を少し、骨を刺激する軽い運動を少し——仲間を足していくだけでいいのです。
今日できることは、ひとつ。
これまでの自分を責めず、「仲間を足そう」と思うこと。
がんばってきたあなたなら、きっと続けられます。次回からは、いよいよ「私は大丈夫?」——自分の骨の状態を知るための、検査やチェックのお話に入っていきます。
この連載は一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療については、必ず主治医にご相談ください。
監修:加藤裕幸(整形外科専門医/東海大学医学部 医学教育学 教授)